水彩詩集 私の本棚は誰かの…❾アドラー心理学/私の株価が何故伸びない理由
私の本棚は、誰かの孤独と繋がっている。
その書物は、誰かに読まれることを待っているのか?
【※この詩と絵は『嫌われる勇気』に登場する、哲人と青年の対話からインスパイアして、その世界観を形にしたものです。】
〈会話問答の世界〉
かって、1000年の都と謳われた古都のはずれに、
世界はどこまでもシンプルであり、
人は今日からでも幸せになれると説く
哲学者が住んでいた。
看過しがたい理想論を唱える哲学者に、
納得のいかない青年は、哲学者の元を訪ね、
その真意を問いただそうとしていた。
劇詩:数字の檻、あるいは他者の影
【青年】 先生、聞いてくれ、この胸の轟きを、
市場(いちば)の数字は天を突き
日経平均は過去最高、黄金の嵐が吹き荒れる。
それなのに、私の庭の若木(かぶ)だけは
枯れ葉のように色褪せ、地を這うばかりだ。
これは私と、冷徹なる市場の、一対一の不条理。
ここに「他者」など、どこにいるというのか!
【哲人】 若き友よ、静かに嵐を眺めなさい。
もしもこの世界に、あなた一人しかいないなら、
その数字の停滞は、
あなたをこれほど酷く引き裂くだろうか。
あなたが震えているのは、
冷たい“株価チャート”のせいではない。
その数字の向こうで、美酒を掲げる、
見えざる「誰か」の幻影に、胸を焦がしているのだ。
【青年】 否! 私はただ、
客観的な事実を嘆いている!
私の選択が間違っていたと言う、
冷厳な事実を! 豊かさと言う自由を欲して、
何が悪いというのですか。
【哲人】 では、その豊かさで、
あなたは何を証明したいのか?
誰もいない荒野で、黄金の冠に意味はあるか?
あなたが欲しているのは、富そのものではなく
「私は他者より優れている」と言う、
切ない証明(しょうにん) 世界を敵と味方に分け、
自ら競争の檻に入り 「勝者」という幻に、
魂を縛り付けているのだ。
【青年】 ああ、なんという酷な言葉だ。
では、この含み損の痛みを、ただ呑み込めと!
【哲人】 課題を分かつ(わかつ)のだ、
若き友よ 市場の気まぐれも、
他者の凱歌(がいか)も、
それは、あなたの領分ではない。
変えられぬ過去の選択を呪うのも、
もうおやめなさい。
問われているのは「いま、ここ」の、
あなたの足取りで、 手放すか、育てるか、
あるいは新しく学ぶか 他者のものさしを捨て、
己の課題を生きる時 市場の狂騒は消え去り、
あなたは真に自由になる。
【青年】 (長い沈黙の後、うつむいて)
……私は市場と戦っていたのではなかったのか。
ただ、時代の波に乗る誰かの影に怯え、
己の小ささを、数字のせいにしていたのだ 。
この痛みの正体は、私自身の「劣等感」だったのか!
あぁ~あぁ!
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