アドラー心理学で解く悩み相談 /エルニーニョ現象に引き裂かれる青年の心
青年は悩んでいました。それは、近年多発している「エルニーニョ現象」のことです。それが原因で、大型の台風が発生し、日本は台風の直撃に遭っているからです。
このままでは、日本は、世界はどうなってしまうのか、国民の暮らしはどうなるのかと。そこで人生の師である哲人に、その答えを求めたのです。
青年と哲人の対話:エルニーニョに引き裂かれる心
青年の激昂
【青年】
先生、私はどうしても納得がいきません!
あなたは以前「すべての悩みは対人関係である」とおっしゃった。だが、今の私の怒りと絶望は、人間関係などと言う生ぬるいものではありません!
【哲人】ほう、何があなたをそこまで苦しめているのですか?
【青年】
エルニーニョ現象ですよ! 近年、あの現象のせいで地球の気候がおかしくなり、信じられないような巨大台風が次々と日本を襲っています。
昨年は、私の家は壊され、丹精込めて育てた農作物は全滅し、平穏な日々は一瞬で奪われました。
自然の猛威の前に、私たちはあまりにも無力です。
この湧き上がる怒り、この悩みも「対人関係」だと言い張るのですか!? 自然現象を相手に、どう人間関係を見出せと言うのですか!
「怒り」という感情の目的
【哲人】
あなたが深い傷を負い、平穏を奪われたことには、心から同情します。
しかし、アドラー心理学の視点から見れば、その悩みもまた「他者との関係」に帰結するのです。
【青年】
バカな! 私はエルニーニョという「気象現象」に怒っているのですよ! 人間に怒っているのではありません!
【哲人】
ではお聞きします。あなたはエルニーニョという「概念」に対して、本気で復讐を誓ったり、謝罪を求めたりしていますか?
【青年】
それは……相手は雲や海水ですから、謝れと言っても無理ですが……。
【哲人】
そう、自然には悪意も意志もありません。
あなたが本当に怒り、絶望しているのは、エルニーニョそのものではなく、
「その災害によって浮き彫りになった、人間社会や他者との関係」、あるいは「思い通りにならない現実に直面した、あなた自身の生き方」なのです。
原因論ではなく目的論
【青年】それは、どういう意味ですか!?
【哲人】
あなたは「エルニーニョ(原因)のせいで、私は不幸になった(結果)」という原因論に縛られています。
しかし、私たちが目を向けるべきは目的論です。
あなたが「エルニーニョへの怒り」を、激しく燃やし続けることで、果たそうとしている『目的』は何でしょうか?
【青年】
目的ですって!? ふざけないでください。 私はただ、理不尽に平穏を奪われたから怒っているだけです!
【哲人】
厳しいようですが、お答えしましょう。
あなたが怒り続ける目的、それは「自分の人生の主導権を放棄し、被害者と言う安全なポジションに留まるため」です。
【青年】な、なんですって……!?
《哲人の言葉》
「『エルニーニョのせいで私の人生はめちゃくちゃだ』と言っている間は、自分の人生がうまくいかない理由を、すべて自然現象のせいに出来ます。
つまり、『自分にはどうすることも出来ない』と言い訳をすることで、これからどう生きるかという課題から逃げているのです」
課題の分離:変えられるものと、変えられないもの
【青年】
私は逃げてなどいません! 巨大台風を前に、一人の人間に一体何が出来ると言うのですか! 防ぎようのない天災じゃないですか!
【哲人】
まさにそこです。ここで「課題の分離」が必要になります。
「エルニーニョが発生するかどうか」「巨大台風が日本を襲うかどうか」は、あなたにはコントロール出来ない「自然の課題(変えられないもの)」です。
そこに怒りをぶつけても、海水温は下がりません。
【青年】……ええ、それは分かっています。
【哲人】
では、「あなたの課題(変えられるもの)」とは何でしょう?
それは「台風が来ると分かった時、どう備えるか」「被害に遭った後、どう立ち上がり、これからの人生をどう築くか」です。
【青年】
変えられないもの(天災)を嘆くのをやめ、変えられるもの(自分の行動)に集中しろ、と……?
【哲人】
その通り。そして、あなたが求めている「平穏な日々」とは、外の世界が100%安全になることではありません。
どんな嵐が吹こうとも、「私は私の人生を自分でコントロールしている」という内なる確信こそが、本当の平穏なのです。
青年の沈黙
【青年】
私は……迫り来る台風の恐怖を理由にして、周囲の人々に八つ当たりしたり、『どうせ世界は理不尽だ』と、他者と関わることから、心を閉ざそうとしていただけだったのか……。
【哲人】
エルニーニョはあなたの人生を脅かすかもしれませんが、あなたの幸福度まで決定することは出来ません。
それを決めるのは、いつでも「これからのあなた」なのですよ。
【青年】
……変えられないものを、受け入れる勇気。そして、自分の課題に立ち向かう勇気。
哲人、この嵐の夜に、私は自分の本当の課題を見つめ直さなければならないようです。
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