水彩詩集!「いい人と呼ばれたい」アドラー心理学で解く承認欲求の是非
アドラー心理学を継承した名著『嫌われる勇気』の中では、青年と哲人の対話形式の談話が出て来ます。
青年は「いい人と呼ばれたい」と思い悩んでいて、いつも自分の立ち位置を気にして行動をしてしまいます。
そんな承認欲求が強い青年に対して、哲人はどんな問答で答えを導くのでしょうか。
【対話篇】いい人と呼ばれたい
【青年】
哲人! 私はもう疲れてしまったのです!
職場でも、プライベートでも、常に「気が利くいい人」「気配りができる良い人」であろうと振る舞ってしまう。
他人の評価ばかりを気にして、自分が今、どこに立っているのか、周りからどう見られているのかばかりを計算して行動している……。
こんなものは、本当の人生と言えるでしょうか!
【哲人】
君は、他者から「良い人」だと思われたいのですね。そのために、常に自分に重い鎧を着せ、肩肘を張って生きている。
【青年】
そうです! 承認欲求を捨てることなど出来ません!
誰からも嫌われたくないし、立派で優しい人だと思われたい。
しかし、そうやって他人の顔色を窺ってばかりいると、自分の本当の足場が揺らいでいくような感覚に囚われるのです!
【哲人】
なるほど。では、先日の雨の日の出来事を覚えていますか? 君が職場のビルから出て来た時のことです。
【青年】
……雨の日? ああ、あの激しい夕立の日のことですか。それが何か?
【哲人】
君は傘を持たない同僚に自分の傘を譲り、自分は濡れながら駅まで走ったそうじゃないですか。後でそれを聞いた周囲の人々は、「君は本当に気が利く良い人だ」と噂していましたよ。
【青年】
ほら見なさい! それこそが私の不純な動機です!
私は「優しい人だと思われたい」と言う欲求から傘を渡したのです。決して純粋な善意からではない。自分の立ち位置を守るための、策動に過ぎないのです!
【哲人】
本当にそうなのですか? 私が聞いたのは、その後の話です。
君が濡れて駅に駆け込んだ時、駅の入口で、小さな子供が水たまりに転んで泣いていた。
君は自分が全身濡れていることも、周りに知り合いが誰もいないことも関係なく、迷わずかがみ込んで「大丈夫かい?」と声をかけ、手を差し伸べた。……違いますか?
【青年】
……っ! 何故それをご存じなのですか!
【哲人】
見ていた人がいたのです。その時、君に「良い人だと思われたい」と言う承認欲求はありましたか?
誰に見せるためでもない、何の見返りもない場面で、君は自然と手を伸ばしたのです。
【青年】
それは……ただ、目の前の子供が困っていたからで……。
【哲人】
そう、それこそが君の本質です。
君は「良い人と思われたい」と頭で考え、肩肘を張っていると思い込んでいるかもしれない。
しかし、誰も見ていない場所で、君の身体はすでに優しさをもって動いている。
君は評価を獲得するために、無理に努力する必要などない。君は、最初から十分すぎるほど「良い人」なのだよ。
【青年】
……私が、最初から……?
【哲人】
自分を装うための肩の力を抜きなさい。
他人の目と言う足場を気にするのを止めても、君の根底にある温かさは消えない。君はただ、そのままの自分として歩けばいいのだ。

【散文詩】いい人と呼ばれたい
他人の眼差しと言う鏡ばかりを覗き込み
自分がどんな姿に映っているかを気にしていた
誰かの期待に応えるたび
「いい人」と言う透明な重荷を肩に積み上げていた
けれど 立ち止まってごらん
見せかけるための優しさの裏側に
隠しきれずにこぼれ落ちる 本当のぬくもりがある
見返りも 拍手も 承認もない暗がりで
差し出されたあなたのその手が
すでに全てを物語っている
もう 肩の力を抜いていい
「いい人」になろうと戦わなくても
あなたと言う存在は 始めから
誰かを温めるのに十分な光を帯びているのだから
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