アドラー心理学で解く悩み相談 / 結婚とマンション購入で目途が立たない男
「運命の1億円:愛と住まいの人生課題」
青年は悩んでいました。結婚と家を買うと言うキーワードで、青年にはロードマップがあったのです。
それは28歳で結婚をして、35歳で都心のマンションを買うと言う目標でした。
しかし、目標年齢を過ぎても結婚相手は見つからず、更に、都心の新築マンションの平均価格が1億円超になっていたのです。
序論:青年、理想と現実の狭間で憤る
【青年】
哲人! 私は今日は、完全に絶望してここに来ました。
アドラーは人生の課題を「仕事」「交友」「愛」の3つに分け、後ろにいくほど難易度が上がると言いましたね。
今の私は、まさにその「愛の課題」の底なし沼に足を取られています。
それだけではありません。私はかつて、人生のささやかなロードマップを描いていました。
28歳で結婚し、35歳で一国一城の主として家を買う。しかし、現実はどうですか?
28歳なんてとっくに過ぎたのに結婚相手の影すら見えない。
それどころか、いざ家を買おうと街を見渡せば、都心の新築マンションは1億円を超えている!
凡人の私に、一体どうしろと言うのですか?
この時代に生を受けたこと自体が、最大の不幸ではないですか!
本論:課題の分離と「愛」の正体
【哲人】
(静かに紅茶をすすりながら) なるほど。あなたが「時代の変化」と「人生の計画の遅れ」に、激しい憤りと焦りを感じていることはよく分かります。
しかし、落ち着いて考えてみましょう。
あなたは今、「1億円のマンションを買えないこと」と「結婚相手が見つからないこと」を、ひとつの巨大な不幸として混ぜ合わせて語っていませんか?
【青年】
混ぜ合わせるなと言う方が無理だ! 家が買えない男に、一体どこの誰がついてきてくれるというのです? 現代において、住まいと結婚は切り離せない直結した問題ですよ!
【哲人】いいえ、明確に切り離せます。アドラーの言う「課題の分離」を思い出してください。
まず、都心の新築マンションが、1億円を超えるというのは、あなたにはコントロールできない「社会の事実」です。
そして、パートナーが見つかるかどうかも、相手があることであり、あなたの意志だけで、100%コントロール出来るものではない。
あなたが本当に向き合うべきは、その事実を前にして「自分はどう行動するか」と言う、あなた自身の課題だけです。
【青年】 それは綺麗事だ!
では、その「愛の課題」に私はどう向き合えばいいのです?
1億円の経済力がない男は、愛のスタートラインにすら立てないのではないですか?
【哲人】 あなたは「愛」を、条件付きの取引か、あるいは所有物のように捉えている。
だから「1億円の家」という条件が揃わなければ、愛が得られないと怯えるのです。
アドラーの言う「愛の課題」が最も難しいとされる理由は、それが「主語を『わたし』から『わたしたち』に変えること」だからです。
利己的な幸福でもなく、相手に尽くす利他的な幸福でもない。
二人が幸福であるために、これまでの自分を捨てて、新しい関係を築く覚悟。それが愛の課題です。
あなたが恐れているのは、相手が見つからないことではなく、
「条件の揃わない不完全な自分」が相手に拒絶されること、つまり、愛の課題に踏み出して傷つくことではありませんか?
結論:ロードマップという名の執着を捨てる
【青年】(言葉に詰まり、拳を握りしめる) ……私が傷つくのを恐れている、と? 確かに、自分の年収や、将来性を否定されるのは怖い。
だから「35歳で家を買う」という完璧な鎧をまとってから、愛に挑もうとしていたのかもしれません。
しかし、哲人。計画通りにいかない人生を、私はどう受け入れればいいのですか?
28歳での結婚も、35歳でのマイホームも、もう崩壊しているのです。
【哲人】
青年よ、人生は一本の線(ロードマップ)ではありません。それは「今、ここ」という刹那の連続です。
28歳で結婚できなかったからといって、あなたの人生が失敗したわけではない。
35歳で1億円の家を買わなくても、大切な人と共に生きる空間を作る方法はいくらでもある。賃貸でも、郊外でも、中古のリノベーションでもいい。
哲人の言葉
「かつて思い描いた計画」という過去の幻影に縛られ、「1億円」という未来の数字に怯え、「今、ここにいる目の前の人間と関係を築く」と言う現在の課題から逃げてはなりません。
条件で相手を探すのをやめなさい。
そして、あなた自身も、条件で品定めされるのを恐れてはならない。
ただ、他者を信頼し、他者に貢献する。その勇気を持ったとき、1億円という数字の呪縛から、あなたは解き放たれるでしょう。
【青年】……今、ここを生きる。
条件ではなく、関係そのものに踏み出す勇気、ですか…。
相変わらずあなたの言葉は厳しいが、私の胸の焦りを少しだけ静めてくれたようだ。もう一度、自分の足元を見つめ直してみます。
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