幻の酒「YANAGI」について⑤ ー本みりんを食後酒にするには?ー
こちらから読んでいただけると把握しやすいです。
https://note.com/herlix/n/n3c02f95d33d8
④からのつづき
本みりんを使って食後酒にする。
地域の特産品を使用する。
ことは決まりました。
しかし、どうしたら本みりんを食後酒にできるのでしょうか?
本みりんを食後酒にするには?
食後酒は、ガストロノミーから考えると、食前、食後よりもアルコール度数が強いものが該当します。
ワインや日本酒などの食中酒は、大体5~15%のアルコール度数であり、本みりんも13.5%のため、度数だけとれば食中酒となります。
ただ、本みりんは甘さもあるため、食中では適さない場面も多そうです。
食後酒は、大体15~40%以上のお酒と言われています。
本みりんを食後酒にするには、アルコール度数を高くする必要があります。ただ単に高くすればよいのか?
商品としてはそこに高くする必然性が欲しいところです。
そこで、日本の歴史に、度数の高い本みりんが登場していないか調査しました。
江戸時代のカクテル「柳蔭(やなぎかげ)」
本みりんの歴史を調べました。
始めは甘さが貴重な時代、貴族の女性の飲み物であったり、神事のお酒の位置づけでした。
江戸時代に入り、日本全国で本みりんを庶民が使えるようになりました。
そんな江戸時代の商人が、関東と関西の庶民文化についてまとめた本が発表されました。
『国貞漫稿』
この本の中に、銘酒『柳蔭』というものが登場します。
本みりんに焼酎を足したお酒で、井戸水で冷やして飲んでいたと伝わっています。
関東では、「本直し」関西では「柳蔭」として親しまれ、落語「青菜」にも登場するなどかなり浸透していたと思われます。
この柳蔭であれば、本みりんに焼酎を加え、度数を上げて食後酒にできるのではないか!
歴史的背景を得た商品が作れるかも!
と喜んだのを覚えています。

柳蔭を試作してみよう!
そんなに親しまれていたのであれば、今でも残っているはず。
みりんメーカーさんを調べたところ、数メーカーで販売を確認できました。取り寄せてみてびっくりしたのは、どのメーカーもそれぞれが思った柳蔭を作っており、無色透明でさらさらなものから、赤黒くて黒蜜のように粘度の高いものまで多種多様でした。
これはラッキーでした。
なぜならレシピが定まっていないということは、
自分なりの柳蔭を作れる余地があるからです。
守らなくてはいけないこととは、
『本みりんと焼酎を混ぜたもの』
まずは、愛知県の本みりんを集め、焼酎を加えて
さまざまな柳蔭をつくるところからはじめました。
美味しい柳蔭を作るために…
どんなに歴史があっても美味しくなかったら意味がありません。
取り組みが面白いと思っても、お酒は嗜好品。
美味しくなければ継続していきません。
そこで美味しさを追求するため、まずは愛知県や岐阜県にある本みりんを取り寄せました。
まずは本みりんそのものを飲んでみる。
「…あ、美味しい」
正直、みりんを飲むまでは調味料としての固定概念があり、飲むことに抵抗がありました。そして私は下戸なんです。
アルコールのとげとげしさや、特有の香りが苦手です。
でも、普通に飲めました。
甘いからですかね…
少し自信がついたので、次は焼酎で割って柳蔭にしてみました。
配合によって主に甘さとアルコールの刺激が変化します。
ここで下戸が役立ちます。
アルコールの刺激に敏感なので、自分が嫌だと感じない、美味しい比率を探し求めました。
でもいろいろ試している間に、ふと気づきました。
『あれ?誰に一番楽しんでほしいんだっけ?』
ターゲットは『デザート好きな女性』
柳蔭を食後酒として作り込んでいくにあたり、なにがメリットと感じるかを考えました。
色、甘さ、香り。
度数を高めようとすると、焼酎の量が増えるのでこれらが失われていきます。
良さを活かすためには、アルコール度数はできるだけ上げないほうがよい。
とすると、食後酒といっても度数レンジは低い方。
食後酒で度数が低めのものを求める場合は、どんなときか?
お酒単体で楽しむというより、デザートとペアリングしたいと考える。
デザートを好み、度数ができれば低い方をもとめるのは女性だろう。
ということでイメージするターゲットをデザート好きな女性にしました。
そう考えるといろんな味を決める目安になります。
見た目も大事、甘さも大事。そして香りも…。
色味、甘さは求めていたところが見つかりました。
しかし、香りは足りない気がしました。
麹の香りは良いのですが、どうしてもみりんを想起させ、そこから調味料を想像してしまう。
この香りを活かしつつ、さらに良い香りと思えるようにするにはどうしたらよいか?
何かを加えて、香りづけしよう!
こうして、ベースとなる柳蔭と方向性は決まりました。
次は香りと味を完成させるために加えるものを探します。
とりあえずどんなもの作ったのか、先に知りたいからはこちらをごらんください。
