ADHDダイエットで25kg痩せた僕には、「頑張った記憶」がほとんどない――最初に食事制限をしなかった理由
パンツのボタンが飛んだ。
無理やり腹を引っ込めて履こうとした瞬間、乾いた音がして、ボタンが床を転がっていった。部屋の隅で止まったそれを見ながら、僕はしばらく動けなかった。
笑えなかったんだと思う。
鏡に映っていたのは、少し前まで知っていた自分じゃなかった。
身長174cmで90kg。フルリモートになってからの数年で、体は静かに、でも確実に変わっていた。
冷蔵庫には使い切れなかった調味料。机の横にはコンビニの空き容器。
洗い物が面倒で、割り箸とプラスチックのフォークばかり増えていく。
運動は続かない。食事制限はすぐ嫌になる。ジムは入会した瞬間が一番やる気のピークだ。
さすがにまずい。そう思った。
でも同時に、もう何度も失敗してきたことも知っていた。
「痩せたほうがいい」は分かっている。
問題は、その先で毎回、気合いと根性の話にされることだった。
そんな僕が、最終的に25kg痩せた。
90kgから65kgまで落ちた。
でも正直に言うと、僕には「頑張り抜いた成功体験」という感じがあまりない。
むしろ逆で、頑張らなくても回る形に変えたら、結果があとからついてきたという感覚に近い。
この記事は、派手なダイエット法の話ではない。
意思が弱いと思い込んでいた僕が、どうやって「自分に通るやり方」を見つけたかの話だ。
先に結論を言うと、僕のADHDダイエットが続かなかったのは、食事や運動の知識が足りなかったからではない。
痩せた未来より、今すぐ食べられるもののほうが近かった
思い立った日に、食事も運動も生活時間も全部変えようとした
疲れた夜の自分に、難しい判断を任せていた
この3か所で、毎回止まっていた。
だから僕は、もっと強く我慢するのをやめた。食事を変えるより先に、どこで止まるのかを観測した。25kg減量の出発点は、立派な決意ではなく、体重計と雑な食事記録だった。
たぶんこれは、ダイエットだけの話じゃない。
「正しい方法がいつも続かない」「みんなが普通にできることが、自分だけなぜか重い」
そういう人の、地上戦の話だ。
ADHDダイエットが続かなかった僕は、体のことだけ「昭和の根性論」で考えていた
ADHDの診断を受けてから、だいぶ経つ。
仕事では、僕はわりと仕組みで考える。
面倒な作業があれば手順を減らすし、詰まる場所があれば道具を足す。
気合いで毎日乗り切るより、先に回る形を作るほうが得意だった。
なのに、ダイエットの話になると急に昭和に戻っていた。
毎日30分走る
間食をやめる
炭水化物を抜く
とにかく我慢する
こういう「正しいこと」を何度も試して、そのたびに止まった。
3日続けばいいほうだった。
止まるたびに、「またできなかった」と思った。
意思が弱い。根性がない。人としてだらしない。
ダイエットの失敗って、なぜか生活全体の不合格通知みたいに響く。
でもあるとき、友人にこう言われた。
「お前、仕事だと複雑なことを整理して回る仕組みに変えるじゃん。なんで体のことだけ気合いでやろうとしてるの?」
その一言で、少し見え方が変わった。
僕に足りなかったのは、やる気じゃなかったのかもしれない。
体を変える話なのに、運用設計を飛ばしていただけなのかもしれない。
ADHDダイエットで痩せなかった理由は、意思の弱さより「観測なし」だった
当時の僕は、「太る原因」をほとんど見ていなかった。
食べすぎている自覚は、なんとなくあった。
でもその「なんとなく」が曲者だった。
人は、自分の食事量をかなり雑に記憶する。
昨日どれだけ食べたか。
飲み会の次の日に何が起きるか。
休日と平日でどれくらい違うか。
ストレスが強い週に何を口に入れやすいか。
このへんを、僕は全然知らなかった。
知らないまま、「減らせばいい」「我慢すればいい」とやっていた。
地図なしで山に入って、迷うたびに自分の根性を疑っていた感じに近い。
ここでやっと分かった。
僕みたいなタイプに必要なのは、まず反省じゃなく観測だった。
しかも、丁寧すぎる観測じゃなくていい。
続く雑さで十分だった。
ダイエットが苦行じゃなくなったのは、「自分という生き物」を見るモードに入ってからだった
発想を変えた。
痩せるために自分をしつけるんじゃなく、
自分という生き物の癖を観察することにした。
ここがたぶん、一番大きかった。
「なんで僕だけこんなに太るんだろう」
この疑問を、責め言葉じゃなくて観察の入口に変えた瞬間、空気が変わった。
同じように在宅で働いている人でも、そこまで増えない人がいる。
僕はなぜ増えるのか。
何を食べると増えやすいのか。
どのタイミングで崩れるのか。
食欲そのものより、生活のどこで流されるのか。
そうやって見始めると、ダイエットは根性の勝負じゃなくなった。
少し理科の実験に近くなった。
この感覚は、たぶん合う人にはかなり効く。
「ちゃんとしなきゃ」で始めると重いけど、
「どういう条件でこうなるんだろう」で始めると、続くことがある。
最初にやったADHD向けダイエットは、食事制限ではなく「ただ見ること」だった
最初の1か月、僕はほとんど何も変えなかった。
やったのはこの2つだけだ。
毎朝、体重を測る
食べたものをアプリに入れる
それだけだった。
運動もしない。無理に減らさない。理想の食事にも寄せない。
ただ、今起きていることを雑でもいいから残した。
すると、思っていたよりはっきりしたものが見えてきた。
まず、僕は自分が思っているより食べていた。
「そんなに食べていないつもり」が、かなりあてにならなかった。
そして、記録しているだけで少し量が減る日が出てきた。
これは根性ではなく、たぶん見えているからだ。
見えていると、無意識のまま流れに乗る回数が少し減る。
もうひとつ大きかったのは、体重の揺れ方だった。
飲み会の翌日は増える。
でも数日で戻ることも多い。
休日は崩れやすい。
仕事で強く削られた週は、食べることで埋めようとする。
このへんが見えてきて、やっと責める材料ではなく、扱う材料が増えた。
ADHDダイエットを始めるなら、今夜はこの3つだけでいい
ここまで読んで、「自分も記録から始めてみよう」と思ったなら、最初から全部やらなくていい。
始めるのは、この3つだけで十分だ。
1. 1週間だけ、体重を測る
まずは、自分の体重がどう揺れるのかを見る。
毎日見るのがつらいなら、週に数回でもいい。ここでは減らすことより、数字がどう動くかを知ることを優先する。
2. 食べたものを写真かアプリで残す
完璧に入力しなくていい。写真だけでもいいし、間食だけ抜けてもいい。
正確な記録を三日でやめるより、雑な記録を一週間残すほうが、僕には役に立った。
3. まだ改善しない
記録を始めると、すぐ食事を減らしたくなる。でも最初は、ぐっとこらえて観察する。
何曜日に崩れるのか。疲れた日に何を食べるのか。外食の翌日に増えた体重は、何日で戻るのか。条件が見えてから、変える場所を一つだけ決める。
今夜やることは、次に食べるものを一枚撮る。それだけでいい。
無料部分のまとめ
ここまでで僕が言いたかったことは、かなり単純だ。
痩せられなかった理由を、すぐ人格の欠陥にしないほうがいい。
特に、続けることそのものに負荷がかかりやすい人はなおさらだ。
合わない方法を何度もやって止まっていると、
「自分には無理だ」という結論だけが強く残る。
でも実際には、方法が雑に自分と合っていなかっただけ、ということがある。
僕にとって最初の転換点は、努力量を増やしたことじゃなかった。
観測を始めたことだった。
もし今、「いや、でも自分はそこまでちゃんとできない」と思っているなら、その感覚もよく分かる。
記録アプリを開くことすら面倒な日があるし、食べたものを直視したくない日もある。
それでも大丈夫だ。
この先に書くのは、理想的な人の方法じゃない。
疲れた日でも崩れにくくするための、かなり地味な運用の話だ。
ここから先は有料にする。
理由はシンプルで、ここから先は「分かった」で終わらせたくないからだ。
無料部分で渡したのは、最初の一週間を始めるための入口だ。
有料部分では、僕が25kg落とすまでに実際に使った考え方と運用を、
疲れている日でも次の一手が見える形にまとめる。
何を見て、何を見なかったか
どこで無理を切ったか
どうやって「やる気のある日」ではなく「普通の日」に合わせたか
体重が増えたとき、どうやって自責に行かずに戻したか
「痩せる気合い」ではなく、
太りやすい自分をどう運転するかの取扱説明書がほしい人には、たぶん役に立つと思う。
ここから先は有料部分です
ここからは、僕が実際に回せたやり方を、できるだけ再現しやすい形で書いていく。
先に言っておくと、これは「これをやれば誰でも必ず痩せる」という魔法の手順ではない。
僕は医者でも栄養士でもないし、体調や持病や服薬状況によって、やっていいこと・悪いことは当然変わる。
ただ、少なくとも僕にとっては、これまで何度も止まっていたダイエットが、初めて生活の中に残ったやり方だった。
大事だったのは、強い意志を持つことではない。
むしろ逆だ。
意志が弱い日でも、完全には回線が切れない形にすること。
これが、いちばん効いた。
ダイエットを「自分を正しい人間に矯正する訓練」にすると、僕はすぐ止まる。
でも、「自分という少し扱いづらい生き物の運転席を作る作業」にすると、続く余地が生まれた。
ハンドルが重い車なら、腕力を鍛えるより、パワステをつけたほうがいい。
僕にとってのダイエットは、たぶんそういう話だった。
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