見出し画像

日本国政府の憲法違反ー第46条~60条


憲法は「誰」のためにあるのか?

——第46条〜第60条で見る、憲法違反が疑われる「国会運営」と「選挙制度」の現実

前回は、憲法第1条から第45条までの範囲で、現実の政治や行政の中に見られる「違憲状態」「違憲の疑い」「違憲と指摘されてきた事例」を見てきた。

今回は、憲法第46条から第60条までを調べてみます。

この範囲は、主に「国会」に関する規定である。
参議院議員の任期、選挙制度、議員の身分保障、国会の召集、衆議院解散、議事の定足数、会議録、法律案や予算の成立手続などが定められている。

つまり、ここで問われるのは、単に「政府が何をしたか」だけではない。
国会そのものが、国民の代表機関として本当に機能しているのか。
少数意見を封じていないか。
選挙制度は、国民一人ひとりの票を平等に扱っているか。
内閣は、国会を開く義務を誠実に果たしているか。

そうした、民主主義の土台そのものが問われる領域である。

はい。出典・証拠付きで使えるように整理し直します。
まず一点だけ訂正です。前回の文中に入っていた「2026年2月衆院選」という記述は、信頼できる公的資料で確認できなかったため、削除します。期間設定としては、第一次安倍内閣は官邸資料で平成18年9月26日から平成19年9月26日まで、高市内閣は官邸資料で令和7年10月21日に発足と確認できます。(首相官邸ホームページ)


憲法第46条〜第60条で見る、違憲状態・違憲の疑い・違憲と指摘されてきた事例

憲法第46条から第60条は、参議院議員の任期、選挙制度、国会の召集、衆議院解散、議事の定足数、会議録、議院自律権、法律案・予算の成立手続などを定めている。衆議院の公式掲載によれば、第46条は参議院議員の任期と半数改選、第47条は選挙区・投票方法などを法律で定めること、第53条は臨時国会召集、第54条は解散後の総選挙・特別会・参議院の緊急集会、第56条は定足数、第57条は会議公開と会議録、第58条は議院自律権、第59条は法律案の成立、第60条は予算の衆議院先議と衆議院優越を定めている。(衆議院)


1. 第46条・第47条

一票の格差——最高裁が繰り返し示してきた「違憲状態」

第46条・第47条に関して最も明確に憲法問題化してきたのは、選挙制度における一票の格差である。これは、憲法14条の法の下の平等、15条の選挙権、43条の全国民代表性、44条の選挙資格の平等とも密接に関わる。

第一次安倍政権以降の時期だけを見ても、最高裁は衆議院選挙について複数回「違憲状態」と判断してきた。2009年衆院選については、最大格差2.304倍をめぐり、最高裁が「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた」と判断したことを日弁連が整理している。(日本弁護士連合会)

2012年衆院選についても、最大格差2.43倍について、最高裁は「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」と判断した。(日本弁護士連合会)
さらに、2014年衆院選についても、最大格差2.129倍について、最高裁は「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」と判断した。(日本弁護士連合会)

参議院についても、2010年参院選では最大格差5.00倍について、最高裁が「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」と判断した。(日本弁護士連合会)
2013年参院選についても、最高裁は「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」とし、日弁連はこれを「いわゆる違憲状態判決」と整理している。(日本弁護士連合会)

一方で、近年の最高裁は合憲判断も示している。2021年衆院選の最大格差2.079倍については、最高裁は2023年に合憲と判断したが、日弁連はなお投票価値の平等の観点から問題が残るとして批判している。(日本弁護士連合会)
2022年参院選の最大格差3.03倍についても、最高裁は2023年に合憲と判断したが、下級審では「違憲」1件、「違憲状態」8件、「合憲」7件と判断が分かれていた。(日本弁護士連合会)

したがって、第46条・第47条に関する最大の憲法問題は、選挙制度が国民の投票価値を平等に扱っているかという問題である。
最高裁が選挙そのものを無効にすることは避けてきたとしても、「違憲状態」という判断は、国会に対する重大な警告である。


2. 第53条

臨時国会召集要求の放置——内閣は国会を開く義務を負う

憲法第53条は、いずれかの議院の総議員の4分の1以上から要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと定めている。(衆議院)

この条文をめぐる代表例が、2017年の臨時国会召集要求である。最高裁判決によれば、参議院議員72名は2017年6月22日、憲法53条後段に基づき、内閣に対して臨時会召集決定を要求した。ところが内閣は、同年9月22日にようやく9月28日の召集を決定し、同日に第194回国会が召集されたが、その冒頭で衆議院が解散され、参議院も同時に閉会となった。

2023年9月12日の最高裁判決は、国家賠償請求は認めなかった。しかし判決は、憲法53条後段について、4分の1以上の議員による召集要求があった場合、内閣は臨時会召集決定をする義務を負うと明示している。

つまり、内閣が「都合が悪いから国会を開かない」という運用をすれば、国会による行政監視は大きく損なわれる。
第53条の問題は、単なる国会日程の問題ではない。内閣が国会を開く義務を誠実に果たしているか、という立憲主義の問題である。


3. 第54条

冒頭解散——召集義務を形だけ満たし、実質的審議を奪う危険

憲法第54条は、衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に総選挙を行い、選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならないと定めている。また、衆議院解散中は参議院も同時に閉会となるが、緊急の場合には参議院の緊急集会を求めることができる。(衆議院)

2017年の事例では、臨時国会召集要求から約3か月後に国会が召集されたにもかかわらず、召集当日に衆議院が解散され、参議院も閉会となったことが最高裁判決上も確認できる。

形式的には国会を召集した。
しかし、実質的には、政府を追及する国会審議の機会は失われた。

また、いわゆる「7条解散」については、首相に自由な解散権があるとの解釈に対して、解散権の乱用や制限の必要性をめぐる議論がある。2017年の解散時にも、野党から「解散権の乱用」との批判が出され、憲法7条を根拠とする自由裁量には疑問があるとの議論が報じられている。(東京新聞)

この点は、裁判所が明確に違憲と判断したわけではない。
しかし、第53条の召集義務を、冒頭解散によって実質的に空洞化させるなら、第54条の解散手続も、国会の行政監視機能を弱める方向で使われてしまう。


4. 第56条・第57条

採決手続と会議録——「聴取不能」のまま可決された安保法制

憲法第56条は、両議院が総議員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決できないと定め、第57条は会議の公開、会議録の保存・公表、表決記録について定めている。(衆議院)

この点で象徴的なのが、2015年9月17日の参議院「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」である。国会会議録には、委員会冒頭から「発言する者多く、議場騒然、聴取不能」との記録が複数箇所に残されている。(国会会議録検索システム)

さらに、採決に関わる場面では、委員長復席後に「発言する者多く、議場騒然、聴取不能」と記録された後、議事経過として、安保法制関連の閣法2案について「質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した」と記録されている。(国会会議録検索システム)

これは、裁判所によって違憲と判断された事例ではない。
しかし、重要法案の採決過程が会議録上「聴取不能」となっていることは、国民が議事を検証するうえで大きな問題である。

第57条が会議録の保存・公表を求めているのは、国会の意思決定を国民が後から確認できるようにするためである。
その意味で、採決の透明性に重大な疑義を残した事例といえる。


5. 第58条

議院自律権と除名——ガーシー議員除名の事例

憲法第58条は、両議院が会議手続や内部規律を定め、院内秩序を乱した議員を懲罰できると定めている。ただし、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要である。(衆議院)

2023年、参議院はガーシー議員の懲罰事犯について「除名」と議決した。参議院の議案情報では、懲罰委員会が2023年3月14日に「除名」と議決し、参議院本会議が同年3月15日に「出席議員の3分の2以上の多数」により除名を議決したことが確認できる。(参議院)

参議院の投票結果では、投票総数236、賛成235、反対1であった。(参議院)

この事例は、手続上は憲法58条の要件に沿って行われた。
したがって、直ちに違憲と断定するのは難しい。

しかし、除名は有権者が選んだ議員の身分を失わせる最も重い懲罰である。
今後、議院自律権が秩序維持を超えて、少数派や異論の排除に使われるなら、第58条の制度趣旨は大きく歪む。


6. 第59条

法律成立手続と参議院の形骸化——共謀罪法の中間報告

憲法第59条は、法律案は原則として両議院で可決したときに法律となると定める。一方、参議院が衆議院と異なる議決をした場合でも、衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決すれば法律となる。(衆議院)

この条文自体は、衆議院の優越を認めている。
したがって、再可決制度そのものは違憲ではない。

しかし、問題は、参議院での熟議が形骸化していないかである。2017年のいわゆる共謀罪法、組織的犯罪処罰法改正案について、日弁連は、参議院本会議で参議院法務委員会の中間報告がなされ、同委員会の採決が省略されるという異例の手続により本会議採決が行われ、成立したと指摘している。(日本弁護士連合会)

参議院の請願要旨にも、共謀罪法について「法務委員会の採決を省略する極めて異例な中間報告」という手段が用いられたとの記述がある。(参議院)

これは、第59条の再可決とは別の問題である。
しかし、参議院の委員会審査を飛ばして本会議に持ち込むような運用は、二院制の熟議機能と強い緊張関係に立つ。

憲法59条は、参議院を無意味にしてよいという規定ではない。
参議院が「衆議院の追認機関」になれば、二院制の意味は失われる。


7. 第60条

予算の衆議院優越と、予備費による財政民主主義の空洞化

憲法第60条は、予算は先に衆議院に提出しなければならないとし、参議院が衆議院と異なる議決をした場合などには、最終的に衆議院の議決を国会の議決とすると定めている。(衆議院)

この制度自体は、憲法が予定する衆議院優越である。
しかし、予算審議が十分に行われず、巨額の予備費によって内閣の裁量が拡大すれば、国会による財政統制が弱まる。

この点について、衆議院の資料「コロナ禍を契機とした予備費拡大の背景」は、新型コロナ以降、毎年数兆円規模の予備費が計上され、使途もコロナ対応から原油価格・物価高騰対策などへ広がったと指摘している。同資料は、予備費の拡大は財政民主主義を空洞化させると述べている。(衆議院)

また、会計検査院の報告も、令和2年度・3年度予算で新型コロナウイルス感染症対策予備費が合計14兆6,500億円計上されたこと、国会開会中の予備費使用については緊急な経費等を除き行わないとの閣議決定があること、しかし実際には国会開会中に使用された予備費もあったことを示している。(会計検査院検査報告データベース)

第60条だけで違憲と断定できる事例は多くない。
しかし、予算の衆議院優越が「国会による財政統制」を弱める方向で運用され、予備費が常態化すれば、憲法83条・85条・87条が前提とする財政民主主義とも深刻な緊張関係を生む。


まとめ

第46条〜第60条で、出典上もっとも強く確認できる憲法問題

この範囲で、最も明確に「違憲状態」として司法判断が積み重なっているのは、一票の格差である。衆議院・参議院の双方で、最高裁は繰り返し「違憲状態」または「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」と判断してきた。(日本弁護士連合会)

次に重大なのは、憲法53条に基づく臨時国会召集要求の放置である。最高裁は国家賠償を認めなかったものの、憲法53条後段に基づく要求があった場合、内閣が臨時会召集決定をする義務を負うことを明示した。

また、2015年安保法制の採決過程では、国会会議録に「議場騒然、聴取不能」と残されたまま、議事経過として可決が記録されており、第56条・第57条が予定する議事の透明性との関係で重大な疑義を残した。(国会会議録検索システム)

さらに、ガーシー議員除名は、手続上は第58条に沿うものだったが、除名という制度の重さを改めて示した事例である。(参議院)

共謀罪法の中間報告、巨額予備費の拡大も、裁判所が違憲と判断した事例ではない。
しかし、国会の熟議、二院制、財政民主主義という観点からは、憲法が想定した制度趣旨を空洞化させかねない問題として位置づけられる。


いいなと思ったら応援しよう!

おれんじ よろしければ応援お願いします! いただいたチップは日本国憲法を守る活動などに使わせていただきます!