ショートショート 逢いたい菜
「見てみろ。今年のはこんな立派だあ」
スマートフォンの画面の中でばあちゃんがトロフィーみたいに白菜を掲げた。
「えがったねえ」と撮影している兄の声が聞こえる。
「ばあちゃんの白菜、うめえからな」
私が言うとばあちゃんの顔に満面の笑みが浮かんだ。
「んめえなんてもんじゃねえぞ。漬物にしたって、鍋にしたって、甘くて、ほっぺが落ちんだから」
「『食いにこい』って」
兄がばあちゃんに聞こえないように囁いた。昭和生まれのばあちゃんは本音を言うのが苦手な人だ。寂しくなると、畑の野菜の自慢を始める。
「さしずめこれは『逢いたい菜』だな」
兄が後でメールを送ってきた。
「無事に帰ったか」
里帰りから戻るとまたばあちゃんからビデオ通話だ。いつもの畑には雪が降っている。「寒い寒い」と画面の外から兄の声が聞こえた。
「初雪だ。大根、植えてっから。うまくなるぞ」
ばあちゃんが嬉しそうに手を降っている。
「はーい」
と私も手を振った。今度はきっと「また来て根」だ。
ショートショート No.747
たらはかに(田原にか)さんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「逢いたい菜」です。
先週の裏お題は「もじもじ社」。ねこの人が怠けている間も小粋でポップなヒスイさんは書いています!
勢いで突っ切る方針です!
やあ。お久しぶりです。また来ましたよ。
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