「もじもじ社・ねじれて世界へ~もじもじ社史より」ヒスイの毎週ショートショートnote・字余り
アキオは恥ずかしがり屋だ。大勢がいる部屋で注目されるともじもじする。声も出ない。顔が赤くなり、全身から何かが噴火しそうな気がする。
だからいま、満員の会議室で部長から呼ばれただけで、もう頭が真っ白になった。
「アキオ、新しいエネルギー源について専務にご説明しろ」
「えっ、今すぐですか? あの、何の準備もしておりませんが……」
「弊社はエネルギー供給のトップ企業だ。日ごろから勉強し、準備するのが当然だろう。何か言え」
「あの……あのあのあの……なにかと、いわれましても……」
アキオは両手をもみしぼった。10本の指がからみあい、ねじれにねじれて、らせん状の『もじもじの形』をつくった。
「さあ、あっと驚くような新規のエネルギー供給源をひねり出すんだ」
「いや、その、ですから、あの、むむむむ……無理……で……」
出席者全員から注目されている。
アキオの全身から血の気が引いていく。
足元に血流が集まり、頭はキーンと冷たいのに、足元だけが燃えるように熱かった。
「ぼぼぼぼ、僕では、むりむみむりむりり……」
舌がもつれて言葉が出ない。アキオの口中で、舌がねじれにねじれ、らせん状の『もじもじの形』になった。
「おい、アキオ!せめて日本語を話しなさい」
「ぐる……るるるり……むりるる……」
満座の注目を浴びて、アキオの両腕がねじれ始めた。ねじねじが『もじもじの形』に変化する。
「でででで……できませ……できま、まっまま」
真っ青なアキオはプレゼン室を出ようとする。
しかし、止まった。
両足がねじれにねじれ、『もじもじの形』を完成させて深紅の絨毯に突き刺さった。
部長がため息をつく。
「これだから、最近の若い者は。もじもじするばかりで、新エネルギーの開発ひとつ出来ん。地球上のエネルギーが枯渇しようとするときに。まったく……」
「すみませせせせえ……っ!?」
ついに、アキオの胴体ももじもじしはじめ、ねじれにねじれて『もじもじの形』に突き進んでゆく。
「アキオ。もう座っていいぞ」
部長が言っても、もうアキオは座れない。胴体と背中が究極の『もじもじ』を完成させ、全身すべてが『もじもじ』になった。
アキオがねじれかける咽喉から、かろうじて声を出す。
「部……ぶちょう」
「なんだ」
「あた……あたらしいエネルギー源が……見つかりました……」
「なに、ほんとうか!?」
部長が立ち上がった時、アキオはぶるぶるとふるえはじめた。
全身に力を籠め、ゆっくりと『もじもじの形』の足でしゃがんだかと思うと、すさまじい勢いで立ち上がった。
「……も、も、も、もじもじぃいいいい!!!」
ぴしゃああああ!
しゃきーーーん! ぴひゃひゃひゃ!!
アキオの全身から七色のプラズマが走った。会議室にオゾンの匂いが満ちる。
「うわっ、なんだこれ!?」
「すごいぞ、電圧計の針が吹っ飛んだ。すさまじいパワーだ」
「部長、どうも『もじもじの形』は元に戻る時……反動でエネルギーが出るようです」
「おい、コイツを電流に転化できるか?」
「できる、出来ると思います。すごいエネルギー源ですよ。しかも石油も原子力もいらない。究極のクリーンエネルギーだ!」
部長は、立ち尽くすアキオに近づいた。
「おい、アキオ! やったじゃないか、殊勲賞ものだぞ!」
「……はあ」
ぽん、とアキオの肩に手を置いた部長は飛び上がった。
「あちちち、まだ放電しているみたいだな……」
その後、社内には『もじもじ部』がつくられ、恥ずかしがり屋の社員が集められた。
社員はアキオの下で訓練を受け、『もじもじプラズマ』を出せるようになり、安定した電力供給が可能になった。
『もじもじプラズマ』方式は世界中に広がり、やがて化石燃料や原子力にかわって、主要なエネルギー供給源となった。
いまや『もじもじ社』の社長となったアキオはインタビューを受けるたび、こう答える。
「……恥ずかしがり屋さんが、世界を救う」
もじもじとして。
【了】
本日は、たらはかにさんの #毎週ショートショートnote に参加しております。(字余りです)
ヒスイのお借りしたのは、裏お題の『もじもじ社』
相方ヘイちゃんの日常はこんな感じです
おつかれさま。応援してます。
いいなと思ったら応援しよう!
ヒスイをサポートしよう、と思ってくださってありがとうございます。
サポートしていただいたご支援は、そのままnoteでの作品購入やサポートにまわします。
ヒスイに愛と支援をくださるなら。純粋に。うれしい💛