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医療法により病院のベッド数が一定で医師数が増えていけば臨床医の価値は下がる、と予測して衛生行政の道を選んだ


県立看護大学での保健師の修士課程の保健医療福祉行政論の講義の資料を作成しました。

県立看護大学での講義は、4月から始まって毎月1回計5回、土曜日の午前中を使った2コマ(90分×2)を担当してきました。

ようやくおつとめが終わったので、ほっとしているところです。

昨年、大学からお話をいただいたときは、34年間厚労省で衛生行政を担当してきたので、なんとかなるだろうと思っておりました。

ところがどっこい。

甘い甘い考えでした。

参考にした出版社の違う3冊のテキストを読み込み、自分の経験などを踏まえて、限られた講義時間でプレゼンする資料を作成することは困難を極めました。

全てを入れると何が大事か判らなくなり、大事だと思うところに絞るとスカスカになります。

最終的には「顧客ベース」で考えることにしました。

顧客とは、つまり大学院生です。

保健師の国家試験を受けて、地域保健や産業保健、医療機関等で働きたいと考えている「ひな鳥」たちに役に立つ講義にしようと考えました。

公衆衛生は範囲が広く、また更に広い福祉や医療・介護も含めた広範な行政施策をいかにして教えるか。

それは新規性と共感しかないと思ったのです。

自分が「面白い!」と思ったことを伝えることにしました。

最後の講義は、行政での計画です。

地方自治体の計画といえば、総合計画、基本構想があります。

テキストを見たら、昭和44年に地方自治法に規定されたものだとありました。

「市町村は、その事務を処理するに当たっては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想を定め、これに即して行うようにしなければならない。」

基本構想は、自治体におけるおむね10年間の地域づくりの基本的な理念や目標、方針などを定めるもので、市町村の最上位の計画として位置づけられたものでした。

市町村は、基本構想に基づいて、おおむね5年間の具体的な施策を示す「基本計画」、さらに、基本計画に基づいて、おおむね3年間の具体的な事務事業を示す「実施計画」を策定することとされました。

これらの3つ(基本構想、基本計画、実施計画)を合わせた総合計画は、その自治体における行政運営の基本として位置付けられました。

基本構想については、国と地方との役割分担を明確化し、地方に対する規制を緩和する地方分権改革の流れの中で、2011(平成23)年に施行された地方自治法の一部改正により、構想の策定に関する条文は削除されたそうです。

しかし、多くの都道府県を含む自治体では、現在も独自の工夫をくわえつつ、条例などを根拠として基本構想を策定しています。

さて、医療で計画をつくるようになったのは、医療法に基づく地域医療計画です。

1985年に、都道府県に地域医療計画の策定が義務付けられました。

計画といっても当初は、二次医療圏の設定と必要病床数の策定くらいしかありませんでした。

二次医療圏において既存病床数が必要病床数を上回る場合は、新たに病院をつくることができなくなりました。

国は病院の病床規制にハンドルを切ったのです。

当時、私は医学生でしたが、病院のベッド数が一定で、医師の数が増えていけば臨床医の価値は下がる、と予測して衛生行政の道を選びました。

今にして思えば、マーケティングのセンスがあったのかもしれません。

その後、医療法の医療計画において、二次医療圏ごとの保健医療計画を策定するように国は言ってきたのです。

その役割を保健所が担えとも。

徳島市で開催された日本公衆衛生学会の自由集会では、「誰がつくるの? 保健医療計画」というタイトルで議論が行われました。

私は、労働省に出向していたのですが、上司がいい方で学会に出張して参加させていただきました。

集会では、保健所が保健医療計画をつくることには反対の意見が多かったです。

自由な公衆衛生活動を、厚生省が企画統制することには絶対反対という意見が大半でした。

その中で、ある大型の男性が手を挙げて発言しました。

「あなた方は、計画もなく無計画で地域の公衆衛生行政を進めるのか。それでいいと思っているのですか?」

たちまち炎上して、「何を言うか」「厚生省の犬め」とか袋叩きにあいました。

この人は後に健康局長となった方で、宮崎にやってきて、木城町の石井十次記念館や、宮崎市のホームホスピス「かあさんの家」を視察しました。

医療法の医療計画を皮切りに、高齢者保健福祉計画、介護事業計画、健康増進計画、障害者福祉計画、子ども子育て支援計画、などそれこそ山のように計画が策定されるようになりました。

徳島での夜の自習集会のことは、誰も言いません。

反対した人は黒歴史となっているでしょう。

行政で仕事をする人にとって、計画作成は必須スキルの一つです。

計画をつくって終わりではなく、実行して、評価までいくことが大事です。

検討会を組織し、住民のニーズを組み込んで、施策を展開して、評価をして、議会に報告することが求められます。

こうした歴史なども紹介しつつ、行政における計画づくりや評価について、具体的な例を交えて、スライドを作成しました。

今後のハベレオ通信のマガジン「公衆衛生講義録」で、公表していきます。

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