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【#創作大賞感想】真直ぐに向き合った先にあるギフトをつかめ!

本日3本目は樹立夏さんの「ギフトー胚培養士はいのちをつなぐー」の感想を書かせていただきます。

子どもが欲しいから治療をする、少し前まで口にすることが憚れていましたが、最近では普通の出来事として受け入れられつつあるように感じます。出生率の低下か、女性が仕事と結婚のどちらをも自由に選べるようになったからか、真相はわかりません。ただ、どちらにしても隠さずに治療ができるのは素晴らしいことだと思います。

そうはいっても、まだ大声で言えるほど浸透しているわけではないです。簡単に生まれてしまう命が沢山あるからで、そういった方々は「不妊症?なにそれ?」と思ってもおかしくなでしょう。

まだ、真の自由を得られたといえないのが不妊治療だと思います。年齢に関係なく様々な理由で治療を行うため、どうしても遠慮や後ろ暗さを感じるためか、不安を訴える物語は多いです。命の大切さを知っている方々からの訴えであるからこそ、そういった作品は心に響きます。

樹さんの作品も不妊治療をテーマに描かれていますが、主人公は胚培養士です。「胚培養士は命をつなぐ」というサブタイトルにもあるように、命のギフトを贈る手助けをする方々の物語となります。医師でも看護師でもない胚培養士という点が新鮮でした。

胚培養士の「ち密さ」や「やりがい」について樹さんは語りつつ、主人公の悩みに寄り添いストーリーを進めます。昨年の「常庭」でも命の大切さを幻想的な筆致で描かれており、樹さんは真摯に命と向き合う方だと感じました。

昨年の思いを今年は「胚」へと注ぎ込んだものが、今作となります。どれだけ綿密に知識と経験の全てをかけて胚を培養しても、100%の誕生にはつながりません。専門家だからと一縷の望みををかけて訪れる女性達の願いを聞き遂げられないもどかしさに、培養士の方々はどれほど悔やみ、理不尽に泣かされるのでしょう。

子どもの誕生は、夫婦や家族がいればその数だけ悩みがあります。そういった悩みに寄り添い、もがき苦しむことで主人公の母袋海音もたいかいねは成長していきます。その結果、長年抱いていた苦しみもほどけるのですが、こちらは本作を読んでお確かめください。

患者・医師・看護師ではなく、胚培養士の視点で描かれた今作は新鮮です。新鮮なだけでなく、筆者の命と真摯に向き合う姿も伝わってきます。

後半で主人公が海近くで過去の全てを受け入れる姿は美しかったです。命と真摯に向き合った樹さんは、きっとその先の「物語をつむぐ」というギフトをしっかりつかんだのではないでしょうか。