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【#シロクマ文芸部 3月③】お題:花びらを(怪異LABO 初仕事-2)

シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今年で3年目の挑戦となります。

1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。

第1回目はこちら👇

第2回目はこちら👇

花びらをテーブルの上で見つけた私は、老女をチラリと見ました。お菓子に夢中な老女は花びらなんてお構いなし。ありったけのお菓子を口にねじ込んでいる最中です。相棒はその様子をニコニコと見ています。

がっついんなあ……

老女の様子に呆れながら、再びテーブル上の花びらに意識を戻しました。

桜咲いてた?

今朝、駅から怪異LABOまで歩いた桜並木はまだツボミでした。花びらを意識し始めてから私の違和感は広がるばかりです。

老女を意識しながら、怪異LABO内をそっと見回しました。この建物は中庭のあるゆったりとした間取りで、季節ごとの植物が中庭に植えられ四季の花々が楽しめます。

しかし、桜の木は……

古い切り株のみ。テーブルの花びらはどこからやってきたのでしょう?

また、咲き始めならば、小鳥が蜜を求めてついばみ枝から無理やり引き剥がされない限り落ちないはずです。散る前に無理にちぎられるのは桜にとってはいい迷惑だと思います。でも、クルクルと回転しながら落ちてくる桜の花を、手のひらでそっとキャッチするのは、私の毎年の楽しみでした。

あれ、楽しいんだよなあ。

そう思い浮かべながら、テーブルの上に視線を戻すと、花びらは一層奇異なものに映ります。

花びら一枚さえ綺麗と素直に思えないなんて。

全ての事象を怪異を通してしかとらえらない人間だとハッとし、私の心はチクリと痛みました。

「ねえ、桜咲いた?開花宣言のニュースまだ見てないんだよね」

何気なさを装いつつ老女の向かいに座っている相棒に声をかけ、お菓子に手を伸ばそうとしたときです。

ゆらゆらゆら。

老女の身体が急に変化し出しました。口が妙に歪み、小さかった体はミュウウンと縦に伸びます。私の頭上高くまで伸び切った姿は、先ほどとは全く違った様子です。

怪異がとうとうお出ましだ!

口が私に向けられているように感じ、慌てて手のひらをかざしました。しかし、時すでに遅し。私の攻撃より先に口からなにかが大量に飛び出してきました。

「オボボボォ!オエエエエエ~!!!」
「ぎゃあああああ!」

ええ!食べすぎぃ?
怪異でも人間でもそれを頭上から?
マジ勘弁!

酸っぱい臭いと金色のアレにまみれるのを覚悟し、思わず目をつぶったのですが。私を包み込んだものは想像とは全く異なる、優しく軽いサラサラしたものでした。

ん?桜もちの匂い?なんで?

目を開けるとそこは薄桃色の世界が広がっていました。私はこんもりと積もった桜の花びらの山の中にいたのです。

「え?なんで花びらが大量に?まだ開花宣言されてないのに」
「よかったねー。口から出たのが桜の花びらで」

相棒は花びらを上手く避けたようで、肩についたものを笑いながら払っています。

自分は避けてんのかよ……

恨めしげな視線を向けた後、私は改めてソレを見上げました。

ヒラヒラヒラ。

伸びきったソレの口から最後の花びらが一枚、私の鼻の上にふわんと乗りました。

「ぶぇっくじょいちきしょい!!」

軽い感触にムズムズし思わずくしゃみ。

「ちょっと、桜の精なら最初からそう言ってよ!」
「だって、話す前に行動するから〜」

確かに。功を逸ったかもしれません。相棒に借りがあるという気持ちがつい私の気持ちを逸らせたのです。

「では今度こそ、怪異を鎮めます!」

意気込んだ私は勢いよく桜の花びらの山を飛び出しました。パァァと花びらが宙を舞います。

くううう。私、めっちゃカッコ良くね?

少し自分に酔いながらポーズを取ったのですが、また相棒の間延びした声が聞こえてきました。

「だからぁ、話を聞けってばよ〜。仕事熱心はいいけど、さあ」
「ごめん……」

もう少し自分に酔いたい気持ちはありますが、今回は相棒が正しいので私は素直に謝りました。

「おっ、今日は素直じゃあん♪」
「私は常に正しい判断をしたまででっ」
「素直じゃないなあw」
「くっ!」

そんなやりとりをしているうちに老女は元の大きさに戻っていました。

さあこれから、桜の怪異とどう向き合うのかな?

興味深げに相棒を眺めていたのですが、こちらが動き出す前に、老女の口がまた歪に変化しだしました。

もぞり。

「えー。また花びら?」

綺麗だからいいけど掃除が大変なんだけどぉ〜

呑気に箒と塵取りを持ってこようと立ちあがったとき、先ほどとは異なる様子にゾワっとなりました。

バキッモコッ!メキメキメキ!

ものすごい音を立てて老女の身体が変化しはじめました。頬などはあちこちに膨らんではしぼみを繰り返し、グロテスクそのもの。

「ボオエエエエエエエ~!」

次に飛び出したのは花びらよりももっと大きな塊でした。

(つづく)

来週が3月の1カ月物語最終回です。

小牧幸助部長、今週もありがとうございました。