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第18節・カターレ富山戦|小さなサポーターが思い出を刻んだ日

​「今日はホテル泊まるの?」

​はるちゃんは、奈良クラブの試合があることは理解していても、まだホームかアウェイかの区別まではついていません。

​「ううん、今日は自転車で行くよ」

​家からスタジアムまでは、たったの15分。

​先週の7時間以上の長旅に比べると、散歩に出かけるくらいの感覚なので、5歳の娘は少し退屈そうな顔です。

​彼女にとって、先週の新潟遠征は特別な大冒険だったんでしょうね。

​それに比べると、ホームのロートフィールド奈良はあまりにも近所の、いつもの景色。

​今日の相手も、上のカテゴリー(J2)にいるカターレ富山。

アウェイでは2-5の大敗を喫し、すでにリーグ戦で首位を確定させているほどの強敵…などという、大人の考えは全く頭にありません。

​それでも、道中で富山の思い出話をしているうちに、少しずつ楽しかった記憶を思い出し、スタジアムに到着する頃には、いつもの何でも楽しもうとする、はるちゃんになっていました。

​「パパ、かったーさん、来てるかな?」

​​敵味方なんて関係ない、はるちゃんにとってのスター

​カターレ富山​には、絶賛売り出し中の亀田歩夢選手(この日もキレキレで凄かった…)や、元韓国代表のチョンウヨン選手(まさか奈良で見れるとは…)など、ワクワクする選手が揃っています。

​でも、はるちゃんにとって、カターレ富山のスターはピッチの選手ではありません。

カターレ富山サポーターのYouTuber・かったーさんです。

​「県総から出発します」というお馴染みの挨拶も完コピし、いつもお酒を飲んでいる?というディティールまで見ている影響です。

​運良くお見かけすることができ、お声がけさせていただくと、画面を通して見ている以上に本当に優しく対応してくれて、恥ずかしがる娘にも目線を合わせてファンサまで。
(かったーさん、ありがとうございました!)

​娘の「会いたい人リスト」は、これだけでは終わりません。

​先週ユニフォームを貸してくれた恩人の方にお礼をしたり、奈良の名物サポの遣唐使さんにも挨拶したり。

チアリーダーのお姉ちゃんや、奈良のご当地アイドルのCute Robinを憧れの目で見つめたり。

​「大好きな人に、会いに行く」という、真っ直ぐな人と人との繋がりを、スタジアムの中で当たり前のようにしているんですよね。

​家から15分。いつもの近所の公園に、大好きな人たちがたくさん集まっている。娘にとってのロートフィードは、まさにそんな優しくて特別な場所みたいです。

苦手なうんていは、まだまだ練習中

​負けられない一戦の裏で、最高のベッドになる芝生席

​試合が始まると、ピッチでは白熱の90分間。

田村翔太選手の圧巻のハットトリック。

奈良の川崎修平選手がガンバ大阪ジュニアユース時代の後輩である富山の深澤壯太選手とバチバチに火花を散らす姿。

ゴールを決めた生駒稀生選手が、魂を込めてエンブレムを誇示する姿。

​息をのむような試合の一方で…。

​我が家の小さなサポーターは完全に電池が切れていました。

​試合前から、スタグルのいちご飴を口いっぱいにほおばり、広場でボールを蹴っては、走って追いかける。

​「今、これをやりたい!」という目の前の自分の意志に100%で向かい続けた結果、キックオフの時点で、レジャーシートの上の芝生でスヤスヤと夢の中へ。

​娘にとって、大好きな人たちがたくさんいる奈良クラブのスタジアムは、何の警戒心もなく身体を委ねられる、最高に安全で心地いい場所みたいです。

​あ、でもゴールが決まる度に、パパが叩き起こして、ゴールの喜びを5回も共有させてしまったのは、ごめんね(笑)

その度に「ふえぇ…」と目をこすりながらも、なんだか嬉しそうに一緒に喜んでくれる。

​芝生席という、のどかなスタジアムだからこそできる、我が家だけのかけがえのない楽しみ方です。

芝生席は子どもにとって最高だね

​行きつけの美容室で髪を切る理由

​試合が終わると、僕たちはあらかじめ予約していた近所の美容室へ向かいます。

​忙しい平日とは違う、いつもの週末の、散歩の延長線上にある日常ですよね。

​元々は僕の散髪だけ予約していたのですが、急遽はるちゃんも髪を切ることに…。

行きつけの美容室だからこそ柔軟に対応してくださり、はるちゃんも大喜びです。

​ずっと大切に伸ばしていた髪。

けれど、椅子の上ではるちゃんは、はっきりと自分の意志を口にしました。

​「ここまで切る!」

​慌てる僕と店長さん。すぐにママに電話で確認してOKをもらい、ハサミが入ります。

バッサリと綺麗なボブになっていく様子を鏡で見ながら、嬉しそうに喜ぶ娘が、ポツリと一言。

​「これで忘れないねん。勝ったから」

​その一言を聞いた瞬間、先日のアウェイ富山の景色が鮮烈によみがえってきました。

涙目で恐怖をこらえて、生きたホタルイカに手を伸ばした、あの小さな後ろ姿。

​あの日、自分の意志でお姉ちゃんになった彼女は、今日もまた、自分の意志で思い出を刻んでいたんだなと。

もはやユニフォームで来ても驚かない店長さん

両チームが見せたリスペクトの意味

​この日の試合後、悔しい結果のはずなのに、奈良のゴール裏近くまで深く一礼しに来てくれたカターレ富山の選手たち。

それに応えて、首位の成績をリスペクトし、奈良クラブのゴール裏からは「カターレ富山」コール。

そして、カターレ富山のゴール裏では、選手たちの挨拶に労いの拍手で応えていたように見えました。

​何というか、子どもに説明しやすい、サッカーを愛する大人の姿でした。

​僕もそうなんですが、大人は勝手にサッカーの内容や順位表を気にしてピリピリしてしまうけど、娘はいつも、もっと真っ直ぐにスタジアムそのものが好きで、全力でその瞬間を楽しんでいます。

そんな娘の姿に、親である私の方が、いつも大切なことを教えられている気がします。

​すっかり短くなったボブの髪をなびかせて、はるちゃんの新しい日常が始まっています。

​「パパ、次はいつカターレ富山と試合するん?」

​次はいつになるか分からないけれど、その日までに髪をたくさん伸ばして、また絶対に会いに行こうね。

新しい髪型で、公文の宿題も真剣に


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