グラス越しに眺めた街は。 【三題噺】
毎週末、金曜から日曜まで週3日だけ店開きする、知る人ぞ知る隠れた名店がある。オーナーシェフが丁寧に作るメニューと厳選されたアルコール類で有名なビストロだ。
古い民家を改造して店舗化したその店は、住宅街の片隅にある。交通量の多いメイン道路から離れた場所、民家に溶け込んだ風情、木製の立て看板も手書きの文字が綴られている。店は、正に風景に溶け込んでいて、一見には見つけ出すことが難しかった。
「悪いな、急なヘルプを頼んでしまって。助かったよ」
大きなクーラーボックスから食材を取り出しながら、オーナーが俺に礼を告げた。口と一緒に忙しく動く両手は今日のメニューに昇る食材たちを次々と調理台へと並べていく。最後にボックスから保冷剤が取り出された。
「ここはビルの谷間でもあるんだよな……だからこそ、俺は好きなんだ。この下町、その風情が」
俺を見つめながら、オーナーが呟いた。俺は水を飲もうとして持ち上げたグラスを覗き込み、それ越しにビル街を眺める。一番目立つのはタワーマンションだ。
「俺も好きだよ、オーナー。あんな高層マンション、“下界に降りる”のは、なんて輩に加わりそうで、住む気にはならない」
負け惜しみが一滴もないとは言わないが、それ以上のことがある。オーナーも俺も、この街の住人が好きで、その人たちに旨い飯と酒を提供したいのだ。
俺はとあるレストランと契約を結ぶ料理人だ。契約期間は夏で終わる。その後は、このビストロにもう一人シェフが増えるのだ。
「秋が今から待ち遠しいぜ。お前も体調には気を付けてくれよ」
待ってるからな、と最後に付け加え、オーナーは笑った。俺も秋が待ち遠しいよ、早くこの厨房に立ちたいからな。
(697字)
ヤスさんの三題噺よりお題をお借りしました。
《今週の三題噺》
1.タワーマンション
2.保冷剤
3.毎週金・土・日オープン
ヤス(ウエダヤスシ)様 記事より引用
#木曜日は3ースデイ
#三題噺
#放課後ライティング倶楽部
#AIとやってみた
#AIでヘッダー画像をつくってみた
#LeonardoAI
いいなと思ったら応援しよう!
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。