歌集『それぞれの青を連れて』(39) 空を曳く
漕ぎ出さぬ
舟は一日
空を曳く
湖が空を
忘れぬように


どこへも向かわず、何も運ばず、ただ湖の上に浮かんでいるボートが二つ。
レイク・コモの青を映しながら、ゆっくりと揺れています。
描いているうちに、そのボートは湖と空をつないでいるように思えてきました。空の青が水面に降りてきて、水の青がまた空へ返っていく。そのあいだで、ただ静かに揺れているのです。
私たちは、前へ進むことや何かを成し遂げることを大切にしがちです。でも、ときには立ち止まり、風に揺られながら空を見上げる時間も必要なのかもしれません。
漕ぎ出さない舟が湖に青を留めているように、私たちもまた、自分の青を忘れないために。
春衣

春衣、はじめての短歌集
『それぞれの青を連れて』
表紙には、水彩画《青》を用いました。
この作品は、私がシチリア島の古都タオルミーナで描いたものです。
地中海の光と風のなかで生まれた一枚であり、この歌集が見つめている「それぞれの青」というテーマとも、どこか深く響き合っているように感じています。
2025年の個展で新たな持ち主のもとへ旅立ったこの絵が、今度は一冊の歌集の表紙として、また新しい旅を始めます。
願わくば、この本もまた、誰かの青と出会えますように。
春衣
ぜひ、訪ねてみてください。よろしくお願いします。
