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宇野書店 知の空間へようこそ

 2025年8月4日午後12時過ぎ、私は東京都豊島区北大塚にある「宇野書店」を訪問した。書店店主は批評家の宇野常寛氏だ。この書店では「本との偶然な出会い」を通じて新しい公共空間としての場所をつくり、地域コミュニティの一環として定着し、推進していきたいという想いから創設された。

 店内の書籍は宇野氏自身が選書した約6000冊分の本を揃えている。ジャンルは幅広い。小説、短歌などの文学、社会学、サブカルチャー、昆虫や海洋生物などの生物学、美術、建築、都市計画など多種多様な分野を取り扱っている。

 宇野氏が書店を開こうと思った理由について、上記のnoteでこう答える。

< 僕が前から本屋をやりたいと思っていたことには、もちろん理由がある。『庭の話』で書いたように、これからは「庭」的な、個人がプロデュースし、管理する場所が「勝手に」公的に開かれている場所が、町の公共空間として重要な役割を果たしていくと僕は考えているからだ。
 そして同じく『庭の話』で書いたように、そこは共同体のための場所ではなく、もっと開かれた、バラバラの、「何者でもない」個人のための場でなくてはいけないと思ったのだ。だから他の人間ではなく、本という「物事」と出会える場所が良いと僕は考えたのだ。>

宇野常寛 note『宇野書店、はじめます。』2025年7月31日

 ここから分かるように、ただの書店ではなく、「何者でもない」個人個人が「庭」的な場所に入り、並べられている数多の本から「偶然の出会い」を楽しむための憩いの場にしたいという熱い想いが込められている。
 この話は宇野氏のエッセイ『庭の話』で展開されているようだ。

『庭の話』講談社 2024年刊

 「いつ来ても、知らなかった<面白そうな本>に出会える」書店でありたいという。この書店には宇野氏がこれまで読んできた本や書評、批評した本、自身の好みである趣味の本などを揃えている。宇野ファンの読者はもちろんのこと、そうでない読者でもきっと「素敵な出会いとなる本」に出くわすことができるだろう。本棚の品揃えは週ごと、あるいは月ごとに変わるかもしれない。一度訪れた後にまた行くと、先ほどの「いつ来ても、知らなかった<面白そうな本>」に出会える可能性がある。

 では、さっそくご案内しよう。


JR大塚駅 北口

 この日は快晴。35度を超える暑さが身に染みる。
 通常、平日は会社勤めのため朝から出勤するのだが、私は職業上日勤と夜勤の交代制勤務(シフト勤務)に従事する。今月は夜勤のため、月曜日(今日)午前中から夕方まで時間があるため、行くことができた。

 大塚駅北口から徒歩5分で歩くと、「宇野書店」の看板が見えてくる。最初はどこにあるかわからず、南口方面へ行ってしまった。スマホの地図を確認したら、路面電車が走る大塚駅の隣の通りのトンネルを抜ければ、北口に出ることができる。それで私は引き返した。

宇野書店。信号を渡った先にある。


看板。平日は10時~21時 土日・祝日 12時~20時
宇野書店のロゴマーク。丸の形はなんだろうか?
2025年8月1日にオープンしたばかり。入口先には著書が3冊並ぶ。


 中へ入ってみると、このような空間になっている。人工芝を敷いており、靴を脱いで入店することができる。抹茶色の座布団を複数分置いてある。ここで本を手に取りながらくつろぐことが可能だ。

 この書店は無人であるため、店主は不在。宇野氏は主に本業の批評活動と経営する会社『PLANETS』で編集長として出版の企画及びプロデュースを行っている。この日の来店客は私を含めて3人ほどだ。平日は勤務中のビジネスパーソンが多いから、がらんとしている。仕事終わりに集まることだろう。

 店内は「和」をイメージした感じだ。緑の空間に囲まれて、憩いのひと時を過ごせる。

レジ会計機。下は講談社現代新書。

 レジ会計はキャッシュレス。書籍を購入する際はPaypayや交通電子マネーなどの決済で可能になる。会計機の下には「講談社現代新書」の新書本が大半を占めて並べられている。

中公新書

 左側の棚は宇野氏が力を入れて揃えた「中公新書」たちだ。古典的名著から最新刊まで揃っている。大学生をはじめとする若者たちは授業の課題図書として大いに活用すべし。

岩波少年文庫の棚

 書店の中で「名物棚」として注目を集めているのがこの「岩波少年文庫」のコーナー。大抵の名作物語はある。

 こちらは宇野氏の著作と「PLANETS」から刊行された本。建築や都市空間などの本が多い。

 中央の机には宇野氏の著作がずらりと並んでいる。後ろの棚は国際政治や各国の地域のエリアスタディーズ本、講談社選書メチエなど豊富なラインナップだ。


 一番下は小説などの文学。真ん中は社会評論。一番上は歯ごたえのあるデジタルエコノミー関係の経営書やビジネス書。この棚はジャンルがバラバラだが、おそらく宇野氏が読んできた本の中で「体中に毒が巡ったもの」「衝撃を受けたもの」「批評してきたもの」を選び抜いた作品だと思われる。それだけに読後感は人生を大いに狂わす読書体験になる・・かも!


 この棚は宇野氏が散々悩んだ挙げ句に選び抜いたサブカル本だ。中には大手書店であれ小さな書店であれ、どこにも置いていない「紙の本」が含まれているそうだ。つまり、電子書籍でしか購入できない本がある。それでも、取り揃えた理由はサブカルファンに向けて「サブカルを愛するなら、紙で取っておくべきだ!」と激押しするからだと思う。ここでしか手に入らない本があることを知っておくべきであろう。特にサブカル本コレクターの読者は食らいついていいほど綿密にチェックする必要があるのではないか。販売する本には決して食らいつかないでいただきたい。


 上の2つの写真は宇野氏が旧来から最も愛しているという機動戦士ガンダムの小説と仮面ライダーの作品。私はガンダムや仮面ライダーのファンではないため購入しなかったが、これらはオタク心をくすぐられるファンたちが所有すべき本だと思う。特に富野由悠季氏のガンダムシリーズは紙で買ってちゃんと保管しておくべきだと宇野氏は熱を込めていう。(下記の動画でガンダム作品について熱く語っています。)


 サブカル本の後ろには文庫本コーナーがある。

 左側は岩波文庫専用の本が並ぶ。政治学や社会学などの古典は世界のあり方を読み解く上で重要だ。右側は光文社古典文庫やちくま文庫など読む価値がある作品がずらりと並ぶ。文庫本は持ち運びが便利なため、通学中の学生や通勤中のビジネスパーソンに打ってつけだ。生きるための教養を身につけることができる。


 宇野書店で購入した本はこの4冊。

 宇野常寛『チーム・オルタナティブの冒険』集英社
 稲田豊史『ドラがたり』PLANETS社
 佐藤健志『平和主義は貧困への道』KKベストセラーズ
 川上弘美『恋ははかない、あるいはプールの底のステーキ』講談社

 このうち、宇野氏の作品とPLANETSの刊行物はマストだと思った。表紙と内容をパラパラめくった後、「これは面白うそうだな!」と思い、選択した。

『チーム・オルタナティブの冒険』集英社 2023年刊

 『チーム・オルタナティブの冒険』は地方都市で起こった謎の事件をめぐって、現役の高校生たちが挑む真夏の冒険物語である。

稲田豊史『ドラがたり』PLANETS 2017年刊

『ドラがたり』は藤子・F・不二雄のライフワークを原体験にしたドラえもん論。戦後日本の未来へ向けて「ドラえもん」の作品からどう読み返し、寄り良く生きていくべきかを考えるためのヒント集。


佐藤健志『平和主義は貧困への道』KKベストセラーズ 2018年刊

 我々日本人が尊う「平和主義」は非現実的な観念論であり、かえって戦争へと導き、国民が貧困に落ちるという結末を迎える。果たして本当に起こりうるのか。それを紐解くための思考訓練となる本。

川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』講談社 2023年刊

 小説家の主人公がカリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちと東京で再会し、積み重なった時間、経験、恋の思い出などを語り合う。大人の愛とはどういうものかを考えるための小説。

 宇野氏は下の動画で本屋で一度目にした本をその場で買わないと一生後悔すると力説する。本は常に一期一会であり、気に入った本があればその日のうちに買わないといざ探したい時に苦労するからだ。遠出してまで入手しなければならないことになり、かえって面倒臭くなる。

 さらに、別の動画では「本屋」が生き残るためのアイデアとして、宇野氏が提唱するのは街の公共空間としての場所を確保し、その街の価値を上げることに貢献することがこれからの書店業界に求められているコンセプトだという。

 その期待を込めて、今後はトークイベントを開く機会を多く設け、コーヒーなどの飲み物を用意しながら語り合う場を作っていきたいと意気込む。宇野書店は大塚という街に深く根ざし、地域にとって不可欠な存在になれるよう、これからも奮闘努力していくようだ。

 南口を出た時、偶然にも提灯のレーンを目撃した。どうやら2025年8月23日(土)に第51回東京大塚阿波おどりが開催する予定らしい。

 阿波おどりで人が殺到する可能性があるだろう。遊びに来たついでに宇野書店を訪れて、静かな空間で本を手に取りながら至福の時を過ごしてみてはいかがだろうか。

 宇野書店にはマニアックな本がたくさん並んでいる。殊にガンダムファンなら「行かなきゃソンソン」だ。もしかしたら、あの方が来店しているかもしれない。

 そう。労働社会学者の常見陽平氏だ。

 『僕たちはガンダムのジムである。』(日経ビジネス人文庫)を書いた本人である。


常見陽平『僕たちはガンダムのジムである』日経ビジネス人文庫 2015年刊

 

 常見氏に会えたらラッキー!!・・・かもよ。


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