【なつかし映画】 いまを生きる 【青春】
名優ロビン・ウィリアムズが世を去ってすでに10年以上の時が経った。

80年代から00年代の約30年に渡ってハリウッドの第一線で活躍したその業績は計り知れないが、今回は初期から全盛期にかけての脂が乗り始めた頃より一作、青春のど真ん中を描いた『いまを生きる』を振り返ってみようと思う。
公開:1989年
監督:ピーター・ウィアー
出演:ロビン・ウィリアムズ、イーサン・ホーク、ロバート・ショーン・レナードほか
ザ・青春映画
舞台はアメリカ。
寄宿制の名門男子高校は伝統と規律を重んじる厳格な校風だったが、新たに赴任してきた教師(ロビン・ウィリアムズ)の指導は型破りそのもの。
「机に乗れ」
「教科書を破れ」
「中庭に出ろ」(英語の授業で)
などなど、破天荒な授業内容に生徒も当初は困惑。
だがそこは多感なお年頃の男子たち。
徐々に傾倒してゆき、挙げ句の果てには教師がかつて在学中に立ち上げた「死せる詩人の会(Dead Poets Society)なる秘密クラブを復活させる始末。

かくしてささやかな火遊びは彼らの青春に新たな彩りを与えたのだった。
どちらも素晴らしい原題と邦題
本作の原題は"Dead Poets Society"。
上述のようにロビン・ウィリアムズ演じる教師が若かりし頃に設立したクラブの名で、非常に欧米文化圏の詩的センスを感じさせるものだ。
生徒たちにとっては堅苦しい学園生活の中に湧いた泉のような存在で、魂が解放される心の拠り所。
物語の核となる要素でもあり、タイトルに採用されたのも納得。

一方、日本での公開タイトルは『いまを生きる』。
これは教師が生徒たちに贈ったラテン語"Carpe Diem"からで、劇中何度も合言葉のように用いられている。
将来のために"いま"を我慢することを説くような校風に対し、夢を追い求めて自主性を尊重するよう勧める教師の指導理念が凝縮された言葉。
こちらもタイトルとして打って付けだったと言えよう。
話は逸れるが、本作のように原題と邦題が異なる作品は少なからずある。
大抵の場合は邦題がイマイチなのだが、中には両者ともに名題という作品もちらほら。例えば・・・
"The Thing"
『遊星からの物体X』
"An Officer and a Gentleman"
『愛と青春の旅立ち』
"Almost Famous"
『あの頃、ペニーレインと』
"Frozen"
『アナと雪の女王』
日本人ならどうしても邦題を先に目にすることになるが、それがキャッチーなタイトルで、しかも内容が面白く、その上原題まで秀逸となればもう傑作と言わざるを得ない・・・これも映画の愉しみ方のひとつではなかろうか。

必然の悲劇
教師の型破りな指導に感化された生徒は「死せる詩人の会」を再設立し、同時に各々が己のアイデンティティや夢に対する意識を芽吹かせる。
そのうちのひとりニール(ロバート・ショーン・レナード)は役者への憧れを募らせ、こっそりと演劇に参加。

それを知った堅物の父親に反対されるも、夢を追い求めて公演に強行出演。教師や同級生も観劇する中、渾身の演技で万雷の拍手を受ける。
これで父親も観念して認めるだろう・・・若者の希望的観測とは裏腹に、現実は彼を地獄の底に突き落とす。
「転校し、軍に入隊しろ。その後大学を経て医者になれ」
今の学校生活が息子にとって悪影響と考えた父親の独善的な命令は確かに酷だが・・・
「そんな・・・まるで終身刑だ!」
アメリカにおける軍隊経験がどれだけの苦労と時間を要するものなのか、日本人には馴染みのない話なのでニールの絶望は父親の直後の台詞「大袈裟な」に共感してしまう気すら抱いたが、結果的に彼は自ら命を絶った。

この作品にあえて難点を見出すとすれば、それはこの悲劇的すぎる結末になるだろう。
だが青春の讃歌は最後まで清々しく、解任されて学園を去ることになった教師に遺された仲間たちは感謝と、これからも教えを胸に刻んで生きてゆくことを伝えて物語は幕を閉じる。
ロビン・ウィリアムズの遺したもの
なんといってもコメディー作品での活躍が華々しかったロビン・ウィリアムズだが、他のジャンルにおいても確かな足跡を映画史に刻んだ。
ゆえに2014年、ああいった形で他界したことは寂しい限りだが、そのユーモアと抜群の演技力は本作でも十二分に発揮されていたように思う。
筆者としては特に初期作品への思い入れが強く、『フック』(1991年)や『ミセス・ダウト』(1993年)では情操を刺激され、『ガープの世界』(1982年)では新たな価値観を教わった次第。

上記の有名どころに知名度では劣るかもしれないが、『バードケージ』(1996年)も個人的なお気に入りで、フロリダの陽気な空気感とマイノリティな暮らしぶりが幼心に新鮮だった。
後期の作品では『ナイト ミュージアム』を筆頭に脇役での出演も増えたが、それでもしっかりと存在感を残すのは流石。
あの温かみのある演技をもう観ることができないのは残念無念だが、氏の輝く姿を収めた名作の数々はこれからも永久に我々の心を潤してくれることだろう。

