【映画】 バードケージ
90年代のアメリカ映画らしさ漂うハートウォーミングコメディ
公開:1996年
原作:ジャン・ポワレ『ラ・カージュ・オ・フォール』
監督;マイク・ニコルズ
出演:ロビン・ウィリアムズ、ネイサン・レイン、ジーン・ハックマン、他
日本では前年に阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件が発生。徐々に世紀末感が漂い始めていた。
バブル崩壊に端を発する経済の低迷が本格化する一方、文化面ではプレインターネット時代の爛熟期ともいえる活況ぶりが懐かしい。
音楽シーンではJ-POPを中心に様々な名曲が生まれ、特に小室ファミリーの快進撃はチャートを席巻するほどだった。
スポーツではやはり95年、野茂英雄がアメリカに渡り、伝家の宝刀フォークボールでメジャーリーグの強打者たちをバッタバッタと三振に切って取る。
アニメ界でも同年、いまだに「転換点」「革命」と呼ばれる『新世紀エヴァンゲリオン』が放送され、その後の潮流に多大な影響を与えた。
97年にはスタジオジブリの傑作『もののけ姫』が実写も含めた日本映画の興行収入記録(当時)を塗り替えたが、海外でも『タイタニック』が世界新記録を樹立。
映画界も記録ずくめだった時代、そういった激しい流れの中、「平熱」で楽しめた娯楽作品がこの『バードケージ』だった。

フロリダの温暖で陽気な世界観
主人公のロビン・ウィリアムズとネイサン・レインはゲイの壮年カップル。
フロリダのリゾートタウンでナイトクラブを経営しており、住居や衣服からもその豊さが見て取れる。
暮らしぶりは「堅さ」とは無縁の、自由で開放的なもの。
このあたりの描写は日本人にとって新鮮で、ストーリー以外でも楽しめる要因だ。
画面の彩りも明るく華やかで、アカデミー賞にノミネート(美術賞)されたのも納得できる。
映画の魅力は現地に足を運ばずとも知らない世界に没入できることだが、忙しない都会生活に疲れた者にとっては、のんびりとした本作の空気感はじんわりと身に沁みることだろう。

何も考えずに楽しめる、典型的な20世紀のアメリカンコメディ
ハラハラドキドキ・・・そんな展開も無論魅力的だが、たまには120分の間ずっと心穏やかに笑い、楽しみたい。
そんな者にとってこの作品が「お粥」のように優しく感じられる要因は以下。
単純明快なストーリー
家族愛
憎たらしい悪役も不在
ちょっとしたドタバタ
これらの点を何より際立たせているのは、他ならぬキャストの人情味あふれる温かな演技だろう。
稀代のコメディアンであるロビン・ウィリアムズはもちろん、パートナー役のネイサン・レインの「母親」ぶり、ジーン・ハックマンの堅物お義父さん、そしてハンク・アザリアのバイプレーヤーとしての仕事も作品を通じて終始観る者を笑顔にさせてくれる。
だから他のコメディ作品の例に漏れず、日本語吹き替え版で鑑賞するのもすこぶるオススメ。
声優陣の渾身の演技が笑い声を押し殺すことを許してくれないはずだ。
CGが昨今とは違い、ジム・キャリーの変顔くらいにしか使用されなかった時代。
人と人の心が通じ合った演技と、「こういうのでいいんだよ」と言いたくなる良質なストーリーが万国共通の笑いを提供してくれる本作、ぜひご一見あれ。
