極上のポップスに潜む「モノクローム」の真実〜「君は天然色」〜
休みの朝は、コーヒーを淹れて、録画しておいた番組をゆっくり見る
今朝のお楽しみは
NHKの新番組「名曲考察教室 大瀧詠一の『君は天然色』を徹底考察!」だ
たしか、去年のクリスマスに
『ラブ・ストーリーは突然に』の考察教室を見たんだよね
あれがパイロット版で、評判が良くてレギュラー化、かな
それにしても、選曲がモロ私世代を狙い撃ちなんですけど?
『君は天然色』のリリースは1981年、私は18歳だ
免許取りたてのドライブで、
友達がこのカセットを持ってきてくれたんだよね
地元の暗い海沿いの道でも、賑やかな車内は西海岸!
一方の『ラブ・ストーリーは突然に』は、1991年のリリースだから28歳
子どもを寝かしつけてからトレンディドラマを見てたなぁ
街中のどこからでも、この曲が聞こえてきたっけ
さて、お笑いコンビのマユリカから考察開始だね
え?
♪思い出はモノクローム→彼女を亡くして色褪せた現実世界。遺影
♪今夢まくらに君と会う→亡くなった彼女に会いたい
え?
そこ、使ってくるんか
この曲の制作期間中に、
作詞家・松本隆が妹さんを亡くしたことを知っていた私は、震えた
Wikipediaにも書いてあるから、マユリカ、
というより製作スタッフは当然知っている訳で
重すぎない?でも、この方向で考察を進めるんだね
「松本隆の心情」を考察し始めた私は、テレビを消してしまった
たしか、
この曲の製作期間中に仲の良かった妹を失い、
書けないから他の作詞家を探してくれと頼む松本隆に
君の詞じゃないとだめだからいつまでも待つ、と答えた大滝詠一
実際、曲の完成は半年ほど遅れたらしい
世界から色が失われたと感じるほどの喪失感をモノクロームと表し、
色を点けてくれと続ける
これ以上ないほどの絶望を祈りへと昇華させて、歌詞は出来上がった
けれど、
かけがえのない身内を亡くし、それをも歌詞とすることで乗り越えていく
この松本隆の作詞家としての性(さが)に、凡人の私は身震いする
同じような感覚を持ったのが、『よこはま・たそがれ』だ
作詞家山口洋子の代表作であるが、
盗作騒動として週刊誌を賑わせた事実がある
一説には、
とっくの昔に亡くなっている『詩人本人から了解をもらった』と
豪語していたという強烈な逸話もある
でも、これにもまた
私は作詞家の性を感じ取ってしまうのだ
松本隆の「身を切るような哀しみの昇華」と、
山口洋子の「他者の言葉すら飲み込んでしまう大胆な拝借」
一見すると全く真逆のアプローチだけれど
どちらも「どうしてもこの世界を言葉で表現せずにはいられない」という
常人には到底理解しがたい、
ある種の恐ろしさすら伴う
「天才=芸術家の業(ごう)」を見せつけられたのだ
冷めきったコーヒーの残るマグカップを持って、私は流しへと立ち上がった
