誰でも小さな魔法を持っている
「赤リンゴを青リンゴに変える魔法」
「道端の石をピカピカにする魔法」
「卵を割った時に殻が入らなくなる魔法」
いかにも、しょうもない魔法……。
「葬送のフリーレン」では、魔法マニアのエルフ(フリーレン)が、こういう変な魔法を手に入れるために、よく割に合わないクエストに挑む。
われわれの住む現実世界も、似たようなところがあるかもしれない。
わたしが知らないうちに魔法を覚えていた話。
◆ ◆ ◆
「体幹がしっかりしてますね、何かスポーツをしてたんですか」先日、整体に行ったときにそんなことを聞かれた。
「そんなの、わかるものなんですか」
「ええ、身体の中心の筋肉がしっかりしてるんですよ」
「そうでしたか、小学生のころなんですけど、剣道をしていましてね……」
最近、体重が過去最低クラスにまで落ちてしまって、筋肉とは無縁だと思っていたのに、芯のほうに残っていたとは……。
どうやら若いころにスポーツをしていると、身体の内側に筋肉が残るものらしい。
そういえば、思い当たることがある。
このごろ通勤電車の込み具合がいっそうひどくなっていて、ある朝、ドアの真ん中付近で押し潰されていたわたしは、ドアが開くと同時に、全身に圧力を受け、外へと吹っ飛ばされた。
東京の電車はヤバいです。みんな屈強なプロレスラー
後ろ向きだった。きれいに180度後ろ向き。
周囲も「あっ……」という感じになった。最悪、後頭部を打ち付けるような状況。
わたし自身が意外だった。危険を知らせる信号が身体を走ったのち、そこからの動作は最小限。背後の状況を確認したうえで余裕をもって着地することができた。
過去、剣道で吹っ飛ばされまくっていたため、身体が覚えていたのだ。
いちおう、役に立った部分もあったのか……。
◆ ◆ ◆
剣道にはろくな思い出がない。今でもたまに夢に出てくる。よく見る悪夢の第4位だ。
悪夢のベスト3(他人様のナイスBAD DREAMも収録)
前門の虎、後門の狼とよく言うが、まさにそんな状態だった。
前門の虎は、剣道教室の先輩たち。わたしは転校生だったので同学年も含まれる。勝ってしまうとあとで大変なことになるため、うまく負けないといけない。
後門の狼はちょっと複雑。本気で向かってくる下級生には、相手が強かろうが弱かろうが勝たなければいけない。ここで負けても、あとで大変なことになる。
先輩方は、自分たちに勝つことは許さないけど、下に負けることも許さないという複雑な性格をしている。
後門の狼には、指導者の先生も含まれる。負ける演技が下手だと、怒鳴られ、面への強烈な一撃を食らう。ある程度、攻撃を繰り出しながら負けなければいけない。
ここで勘のいい読者は気づいたかもしれない。
そんなに器用に勝ったり負けたりできるなんて、実は強いんじゃないの?
イエスだと思う。対外試合では変な気を使わなくていいので、やたら勝率がよかった。

団体戦では、先生の「副将はダミー、捨て駒を使ったほうが全体として勝てる」の理論により、わたしが副将を務めることが多かったのだが、相手チームは普通にナンバー2の実力者が出てくる。
わたしが相手の副将を倒す件について先生はどう思っていたのだろう……。
大人の目は節穴だ。子供のコミュニティーがまったく見えていない。子供が子供らしく全力で頑張れない環境は最低だ。
本人の性格の問題もあるかもしれない。おそらくわたしは他人を負かすのが好きではない。相手が怒ったり、泣いたりするのに耐えられない。
そう考えていくと、もっと別の大きな問題が見えてくる。
逆の考え方ができるからだ。相手が怒ろうが、泣こうが、勝ちたい。そういうフィールドに立つべきだ。
わたしは剣道なんてやりたくなかった。子供を𠮟りつけ、頑なに辞めさせてくれなかった人間がいた。後門の狼のボスは、母だった。
わたしの母はスピリチュアルクレイジー……
わたしはこの件を永久に恨むことができる。
しかし、それはそれでしんどいので、クエストの代わりに小さな魔法を手に入れたということでゲームクリアにしたい。
わたしが手に入れた魔法は、
電車で後ろ向きにふっとばされても
大丈夫な魔法
きっと、小さな魔法は、過去の悪夢を清算するためにあるんだ。
先に進もう。小さな魔法を手に入れたってことで。

▼ロック氏はこんな人だよ▼
▼こんなところがロックスター▼
楽器が病的に弾けないので筆のミュージシャンに
引っ越しを14回してベストプレイス探し
8回転職したがすべて失敗 ⇒ FIREの精霊に進化!
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