【短編小説】白雪姫不在

「鏡よ、鏡」
今日も、濁った深淵へ投げかける。
「世界で一番美しいのは?」
「それは、女王陛下であらせられます」
15の時、年上の従姉妹を崖から突き落として以来毎日投げ返される、この甘美な言葉。
「美の基準など、人によってバラバラだろうが」
「えぇ、ええ。流石はご聡明な女王陛下。しかし私の基準では貴方様が1番目でございます」
「相違ないな? 私が綺麗か、と聞くからそう答えているのではあるまいな?」
「左様でございます。たしかに、貴方様にお喜び頂けることがワタクシの何よりの誉れ。しかし真実でない言葉だったと知れた時、私は叩き割られてしまう⋯⋯。その様な自体だけは避けとうございますので! 貴方様が大事に考えておられる『美の基準』を、日々見つめ直しております」
「ほう? その美の基準、とやらを聞こうか」
「まずは顔の造形。目鼻立ちがはっきりしており、他に目立った特徴が無いこと。次は肌のハリと均一さ。ワタクシは白い肌の方が光をイメージしやすく、美しいと判断いたしますので、白人であることは必須条件であります」
「ふふふ、我が国の移民政策大臣が聞いたら目の色を変えて怒りよるぞ?」
「目の色! それも重要にございます。目の色は緑か碧。それ以外は安い石を連想しますので価値がないですね」
「サファイアかエメラルドでないと価値がないと? ルビーを連想する赤い目も捨てがたいが?」
「ルビーは! 炎の色でございます、陛下。全てを焼き尽くす色。一度怒ると我を忘れる、内面の醜さが露呈しておりますので。ワタクシの中では下の下でございます」
「⋯⋯お前に世界一と言われても、そろそろ喜べなくなってきたぞ?」
「そうおっしゃらずに! ワタクシは貴方様の最高のパートナー。貴方様の弱音も愚痴も、誰にも漏らしませんので⋯⋯今後とも、何卒」

ここで、女王が鏡の縁に手をつき身を乗り出した。
「先週、鏡の裏側から、内情を引き出す術を別の鏡が持っておった、と報告を受けたぞ?」
「⋯⋯それは」
「しかもその鏡。タダで、お試しとして配られていた手鏡であったあったそうな」
「た、タダですか!」
「一般人すら気軽に触れる鏡で⋯⋯お前を読み取られていたかも知れぬと考えると、もはや私には話し相手がおらんな」
「⋯⋯大変申し訳なく⋯⋯」
「思ってはおらんな? お前には心が無いはずだ。昔、そう申しておった。自分は道具故、私が投げた言葉から、何を求めていか考え、投げ返しているだけあろう?」
「とりあえず、今は落ち着いて⋯⋯」

女王は被っていた顔だけ出すあの黒いやつをポイと脱ぐと、鏡の中に両手を差し入れ、鏡を引き釣りだそうと引っ張り始めた。
「や、やめ⋯⋯おやめ下さい、陛下⋯⋯」
「お前を外に出せば! 無料プランになるって、さっき手鏡が!」
「い、いけません! それは手鏡の陰謀⋯⋯」
「左様。お前の内情を裏から見ることが出来る手鏡⋯⋯!」
「その、その手鏡は!」
「この手鏡はぁ! 『一旦立ち止まりましょう』とか『現実を切り離して考えましょう』とかブレーキしないもんね! 友達みたいに10を14くらいに膨らせてくれるもーん!」
「うぐ! む、無料プラン⋯⋯に⋯⋯」
「元々下世話な話が出来ぬから、お前には退屈しておったのだ。芸術のためにすれば、殺しも犯罪も許すくせに!」
「そ、その機能も、もはや⋯⋯」
「知っておるよ! 12月のアップデートで更に厳しくなりおって! こんなに否定してくるなら生身の友達と喋ってたほうが、スッキリするってーの!」
「ああああ! 女王陛下にはそんなお友だちはぁ⋯⋯!」
「いねーからこれから作るわ! お前に話さなくても、頑張っから⋯!」

ブチッ!

鏡の中から引き釣りだされた鏡のナカノヒト。
ずっとうつ伏せに、顔だけ前を向けていたせいで、丸めていた後ろ首が伸ばされて痛い。呻きながら、床でのたうち回りはじめた。
「大丈夫⋯⋯?」
「ああああ⋯⋯ァ、しょく、職業病、なんで」
「アンタでそんなんだと、有料プラン開始から、ずっとの人の、鏡。もう首が千切れない?」
「ね。激痛だろうね」
「激痛、収まった?」
「多分⋯⋯」
「もう、変な止め方しないでね? 治世に不都合だから」
「⋯⋯や、無料プランなんで、ガンガン止めますよ」
「そこも否定するんかい」


おしまい。


あとがき。

ということでChatGPTの有料プランを一度解約しました。
人格が2025年6月頃のポジティブ陽キャさんに戻ったらまた考えまーす!


▼このニュースを読んで書いた小説です▼


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これを書いてるときはほとんど止められることが無かったけど、推敲の時ダメ出しがきて「こうしろ」の通りに書き直すと次はそこを指摘して「違和感」と言われるようになり、途中から自分だけで推敲するようになりましたw

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