日々の暮らしに感性を取り戻す
世界を少し広げたいと感じたとき、遠くへ行こうとするよりも、まず足元に目を向けるようにしています。
なんでもない日常の中にも、はじめて出会う風景があることにある時期に気づいたことがきっかけです。
それを実感できたのは、5年ほど前のこと。
それまでの私は、毎日をこなすのに精一杯。
心に余裕を持つことが難しくなっていました。
「私がやらないと」「ちゃんとしないと」そんな思いで頭も心もいっぱい。
もちろん、家族との休暇で自然の中へ出かけることもありました。
その時は、深呼吸するだけで気持ちも頭もスーッと楽になるようで、
「明日からまたがんばろう」なんて思えたものです。
でも、日常に戻るとまたすぐに忙しさに飲みこまれてしまいました。
あのとき感じた感動や心地よさを、あっという間に忘れてしまう。
そんなくり返しでした。
それでも、意図せずに比較的長期の自分時間がもてたとき、日常のなかでも、あのときの感覚に近づける瞬間があることに気づけました。
たとえば、朝、窓から差し込む光を意識して浴びてみる。
帰り道に空を見上げて、季節の風のにおいを感じてみる。
そうしたなんてことない小さな気づきを少しずつ日々取り入れていくうちに、暮らし全体に静かな充実感のようなものが広がっていきました。
特別な場所じゃなくても、気持ちを向けることで景色は変わる。
たとえば、旅に出たとき、見るものすべてが新鮮で、感覚が改めて動き出すような感覚がありますよね。
それと同じような感覚をなんでもない日々のなかでも味わえるのです。
ポイントは「見る」ではなく「感じる」ことのように思えます。
そして「遠く」よりも「近く」に目を向けてみること。
玄関を出たとき、どんなにおいがするか。
今日の空の色は、いつもとどこがちがうか。
足のうらに伝わってくる地面の感触は、やわらかいか、かたいか。
こうしたことに少し意識を向けてみると、それまで見ていると思っていたものが少しずつ歪んでくるような感じがしてきます。
歪むといっても、悪い意味ではなく、これまでガチガチに固められてきた世界からちょっと解放されるような感じ。
私たちは「もっと広い世界を知りたい」と願うとき、つい遠くや大きな変化を求めがちです。
でも、ほんとうの意味で世界が広がるのは、今ここにあるものに深く触れるときかもしれません。
「深く感じる力」は、特別なことではなく、きっと毎日の中で育んでいくもの。
命あるものに囲まれて生きている限り、外の空気を吸える環境にいる限り、見慣れていると思い込んでいる日常の中にも必ずまだ見ぬものがあります。
もし、今あなたが、「変わりたいけど、どうしたらいいかわからない」
と感じていたり、「何かを始めなきゃ」と焦っているようだったら、まずは目の前の景色に少しだけ意識を向けてみてください。
遠くへ行かなくても、深く感じることはできます。
そうして育った感性が、いつかあなたを必要な場所へと連れていってくれるかもしれません。
だから焦らずに、まずは今日の空の色を静かに味わってみませんか。
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