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音声入力は効率化だけじゃない~子どもの姿をより深く記録する新しい可能性~

東洋大学オンライン保育講座に登壇させて頂き、その後、オンライン懇親会で様々な議論が行われました。
この懇親会は非常に刺激的で、技術を使ったからこそ見えてきた、人と人との関係や記録の本質について、改めて考える機会になりました。
今回は、向山こども園で取り組んでいる音声入力による記録について書いてみたいと思います。


本日のまとめノート

音声入力を使った記録の取り組み

向山こども園では、Googleフォームを使って日々の記録を取り、その記録をAIと組み合わせながら様々な形で活用しています。

例えば、月ごとの育ちをまとめた「月末メッセージ」や、保護者向けに子どもの姿を伝えるフォトドキュメンテーションなどがあります。
これまで保育者が時間をかけて作成していたものも、AIを活用することで、日々の記録をベースに形にできるようになってきました。


実際に配布しているお便り
1枚の作成はなれれば5分ほどでできます


このGoogleフォームでのデータベースづくりを、現在は音声入力で行っています。そして、懇親会の中で、「音声入力で記録を残す意味」について考える機会がありました。

なぜ、音声入力で行おうと思ったのか?

私自身、音声入力を導入したきっかけは、とてもシンプルな理由でした。
それは、AIを活用する前提で考えると、テキスト量が多い方が、AIがより正確にまとめてくれることが分かったからです。

以前はタイピングで記録を入力していましたが、多くても3〜5行程度が限界でした。その状態でAIに解析してもらうと、どうしても情報が不足し、AIが予測で補う部分が増えるか、一般化してしまうということが起こります。その結果、その子らしさが十分に表現されないことがありました。

そこで、ある学年だけ試験的に1か月間、音声入力で記録を取ってもらいました。すると、子どもの姿が驚くほど具体的に残るようになりました。言葉数が増えただけでなく、「その子らしさ」が非常によく表現されるようになったのです。

喋り言葉だったり、まとめられていなかったりするのは、AIが上手に修正してくれます。
誤字脱字があったとしても、肝はテキストの多さだということが分かりました。情報量があることでAIがうまく整理してくれる。そうした経験から、向山こども園では音声入力へ移行していきました。

効率化だけではない、別の視点

そんな、「効率化のための音声入力」に対して、今回の発表後の懇親会で、とても印象的な意見をいただきました。

これまで保育記録は、手書きからタイピングへ変化してきましたが、「記録を書くことそのものに意味がある」という考え方がありました。確かに、書くプロセスの中で保育者自身が子どもを振り返ったり、考えを整理したりすることには大きな意味があります。しかし、今は状況が変わってきているのではないか、という話でした。

もちろん、これまで言われてきた「書くことの意味」を否定するわけではありません。ただ一方で、これまで「書く」という方法が重視されてきた背景には、長期的に記録を残す手段として、それ以外の方法が現実的ではなかったという側面もあるのではないか、という話でした。

つまり、「書く」という行為は、記録を残すための技術的な制約でもあったということです。これまでは「書く」ことでしか記録を残せませんでした。しかし現在は、「話して残す」という方法が生まれています。

そのときにいただいた言葉が、とても印象に残っています。

「話す方が、人は感情や体験をよりストレートに表現できるのではないか」

確かに、人はまず話し言葉を使ってコミュニケーションをしています。
「書く」という行為は、一度頭の中で整理し、言葉を選び、文章として整える作業です。その過程には良さもありますが、一方で、自分が感じたものが削ぎ落とされてしまう可能性もあります。

それに対して「話す」という行為は、その時感じたことや驚き、感動、迷いなども含めて、よりそのまま残せる可能性があります。
私はこれまで、AI活用や業務効率化の視点から音声入力を選択していました。しかし実は、保育記録そのものの質という視点から考えても、音声入力には大きな意味があるのではないかという話を聞き、「なるほど」と感じました。

記録が変わると、伝え方も変わる

音声入力を導入したことで、テキスト量が増えただけではありませんでした。

実際に現場では、情報共有のあり方も変わってきています。
以前は、カンファレンスで「何があったか」を共有する時間が必要でしたが、今は記録の段階で共有が進んでいます。そのため、カンファレンスでは「では次にどうするか」という、より深い話ができるようになっています。

さらに、保護者への発信にも変化が起きています。

AIを使ったドキュメンテーションでは、単に「今日こんなことをしました」ではなく、「この場面でこんな育ちが見えた」「こんなやり取りがあった」といった、一場面を丁寧に切り取る発信が増えてきました。

それによって、保護者との関係の質も変わってきているように感じています。
記録は、ただ残すためのものではなく、人と人をつなぐものなのだと改めて感じています。

技術の進化をどう受け止めるか

新しい技術が登場すると、「使うべきか」「使わないべきか」という議論は必ず起こります。
それは当然のことだと思いますし、とても大切なことだと思っています。

向山こども園が進んでいく方向については、園長である私自身が常に責任を持って考え続けなければならないとも感じています。
効率化を優先することで、保育の質を下げてしまうことも、保育者の安心感を失わせてしまうこともあるかもしれません。

だからこそ、「便利だから使う」のではなく、本当に子どもの姿が豊かに見えるのか、本当に保育者の支えになっているのかという視点を持ち続ける必要があると思っています。

今回、国際的な保育研究やラーニングストーリーの実践を学んでいる研究者の方々から、音声入力に対して肯定的な意見をいただけたことは、現場として大きな支えになりました。

もちろん、比較研究をしたわけではありませんし、今後さらに検証が必要な部分もあります。それでも、現場だけでは得られない視点から実践を見てもらい、フィードバックをいただけることは非常にありがたいことだと感じています。

今後も様々なことに挑戦しながら、研究者の方々からいただく声にも真摯に耳を傾け、子どもたちにとって、そして保育者にとって、より良い保育を目指していきたいと思っています。

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