【#創作大賞2026】#3 更年期ファンタジー 聖ホルモーニア・クエスト ~お母さん、今日も転生したの?~
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こんにちは😀
異世界転生中のアザミです。
前回の投稿では、
なんだかわけのわからない世界に迷い込み、おたまを振り回すという、自分でも何を言っているのかわからない報告をしてしまいました。
自分でも何を書いているのか、よくわからなかったので、読者の方はもっとわからなかったと思います。ごめんなさい🙇♀️
前回の投稿を見た娘から、叱られちゃいました。
「読む人のことを考えて書きなさい!」
って。
だから、あのあと、娘から厳しい事情聴取を受けました。
「お母さんは、どんな世界に転生してたの?」
って。
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第1話の⑤:アザミ、はじめての異世界転生を振り返る
「で、お母さん。何があったのか、もっと詳しく教えてくれない?」
寝室の掃除を終えた娘が、掃除機のコードを収納しながら、聞いてきた。
「詳しくって……」
「異世界転生、しちゃったんでしょ?」
「イセカイテンセイ……? なにそれ?」
このときの私は、まだ「異世界転生」という言葉すら知らなかった。耳慣れない言葉に訝しむ私に、娘がなんとも言えない笑みを浮かべている。
「異・世・界・転・生。お母さん、スマホで検索してみなよ」
娘に『イセカイテンセイ』の漢字を教えてもらいながら、検索をしてみる。
異世界転生(いせかいてんせい)とは?
現実世界の主人公が、何らかの理由(事故や魔法など)で一度命を落としたり、あるいは生きたまま別の世界(ファンタジー、魔法の世界など)へ移動したりする現象、およびそれを題材とした創作ジャンルのこと。
「現実世界の主人公……別の世界に移動……アッ!! これだわ! お母さん、まさしくこれ!!」
検索結果には、まさに私が体験した『別の世界に移動』のことが書かれたいた。
「やだ、私、ホントにアンタの言う通り、異世界転生ってのをしてたってこと?」
「そうそう! お母さん選ばれちゃったんだね!」
娘はそう言うなり、持っていた掃除機のパイプを杖のように突き、畳に突っ伏して笑い始めた。肩を小刻みに震わせ、必死に笑いを堪えようとしているが、漏れ出る声は完全に「爆笑」のそれだ。
「……ちょっと、何がおかしいのよ。こっちは必死だったんだから」
私は不服いっぱいに唇を尖らせた。
検索結果によれば、異世界転生というのは「勇者」として世界を救う大役らしい。おたま一本で放り出された恐怖を思えば、娘のこの態度はあんまりだ。
「だって、だってお母さん……ぷぷっ、50歳にして勇者デビューとか、設定が渋すぎでしょ!」
娘は涙を拭いながら、ようやく顔を上げた。その目はまだ、面白くて仕方がないという光を宿している。
設定が渋いとは、どういう意味だろう? 今の若い子は、わたしにはわからない言葉を使うときがあって、戸惑う。
「で、その『勇者アザミ』さんは、あっちの世界で何を命じられたわけ? 魔王の名前は? 伝説の武器は?」
涙を浮かべた娘が、矢継ぎ早に聞いてくる。
「なんだったかしら……? なんかね、白髪のばあさんとデカいコウモリがいたわ。そのばあさん、私のことを『オミヤさん』って呼んでくるのよ」
『オミヤさん』『オミヤさん』と、あのばあさんは私を呼んだ。
「オミヤさん? 勇者オミヤ? なにそれ、お土産物(おみやげ)か何かのこと?」
娘が掃除機を放り出し、お腹を抱えて笑い出した。
私は至って真面目なのだが、この娘には何を言っても「面白いネタ」に変換されてしまうらしい。「設定が渋い」だの「勇者」だの、今の若い子の語彙力にはついていけない。
でも、正直に言うと、あの白髪ばあさんの話は、三割も聞いていなかった。
ばあさんが喋るたびに飛んでくる、唾液の飛沫(しぶき)が気になって、気になって、気になって。内容どころではなかったのだ。
「違うのよ、名前を名乗る暇もなくて。ずっと『オミヤさん、オミヤさん』って……」
「オミヤさん、ねえ……アッ」
娘が何をひらめいたように手を叩く。
「お母さん、それ方言だよ! この辺りでもおじいちゃんおばあちゃんたち、『あなた』のことを『おみゃーさん』って言うじゃん! それだよ、オミヤって名前じゃなくて、ただ『あんた』って呼ばれてただけ!」
娘のキレのよい滑舌を聞いて、初めて私の中で『オミヤさん』が『おみゃーさん』に変換される。
そう言われてみれば、確かに。
確かに、この地域では人を指す言葉として『おみゃーさん』が使われている。
この地域に移り住んできて15年。
旦那の転勤で引っ越してきたが、私が地元の人たちとそれほど深く付き合っていないこともあって、この辺りの言葉には未だ慣れない。
だって、何言ってるかわからないんだもの。特にご年配さん。
「で、『勇者オミヤ』さんは、あっちの世界で何を命じられたわけ?」
「何って……」
あの『おみゃーばあさん』は、何を言っていたかしら?
覚えているのは、怒涛の飛沫とどこかで聞いたことのある単語。
「エストロゲンとホルモン……」
そう、私はこの単語を知っていた。
異世界という全く未知の場所で、おみゃーばあさんが叫んでいた言葉。それが、私の記憶の引き出しとカチリと音を立てて繋がった。
(……待って。もしかして、わたし)
検索結果にあった『チート能力』という言葉が脳裏をよぎる。
本来、その世界にいないはずの人間が、特別な力や知識を持って世界を救う。 私は、あの世界の住人が誰も知らない『聖域の秘密(キーワード)』を、最初から知っているのではないだろうか。
「……ねえ、お母さん。今、ものすごく痛いこと考えてるでしょ」
娘が掃除機のコードを弄びながら、半眼でわたしを見ていた。
「違うわよ、痛くないわよ! あのね、私、その『エストロゲン』っていう言葉、知ってるのよ。あの世界では失われつつある大事なものらしいんだけど、私には最初からその知識が備わっていたっていうか……」
私は少し胸を張って、確信を持って言った。
「もしかして私、本当に選ばれし勇者なんじゃないかしら? あっちの世界のことを、生まれながらに知っている……みたいな」
「お母さん……」
娘は深いため息をつくと、私の目の前に人差し指を突きつけた。
「それ、先週行った『婦人科』で先生に言われた単語だから。勇者の特殊能力じゃなくて、ただの通院記録だからね?」
……アッ。
言われてみれば、そうだ。
先週、あまりの「のぼせ」と「イライラ」に耐えかねて、近所の婦人科の門を叩いたときのこと。 カーテンの向こう側で、眼鏡をかけた先生がカルテを見ながら淡々と言っていたのだ。
『アザミさん、更年期で、エストロゲンが急激に減っていますね。ホルモンバランスが乱れている証拠です』
あの時は、どこか恥ずかしくて「はあ、そうですか」と俯くのが精一杯だった 。なんだか、自分の「女」としての部分を、他人に、しかも数値で値踏みされているような、なんとも言えない「ヤラシイ」感覚がして。
「思い出した? 勇者どころか、絶賛、更年期障害の治療検討中でしょ」
娘は呆れ果てた様子で自分の部屋へ消えていったかと思いきや、一冊の使い古したメモ帳を手に戻ってきた。
「いい? お母さんの説明じゃ、全然わからないから。noteに日記書くんでしょ? そのときに困らないよう、次にあっちへ行ってそのおばあさんに会えたら、言われたことを一言一句、正確にメモしてきなよ」
娘が押し付けてきたのは、表紙にコーヒーの染みがついた、娘の受験勉強のお下がりだった。
おたまに続き、メモ帳。
私の装備は、どんどん「勇者」から「主婦の習い事」に近づいている気がする。 でも、なんだか書いているうちに、次はもっと上手におたまを振れる気がしてきた。
(どういう場面でおたまを振るうのか、よくわかってないけど)
戦士としての覚悟……じゃなくて、主婦としての「お片付け」の覚悟、決めましたよ!
さあ、みなさん!
それでは、今日はこのへんで。
夕飯の支度(今日はサバの味噌煮です☆)があるので失礼します😀 ミ☆
アザミ@異世界転生中
50歳パート主婦。ただいま異世界転生中😀
アザミっ娘@大学生:21分前
やだお母さん、この会話も書いたの?www
アザミ@異世界転生中:2分前
一番大事なところじゃない。
でも婦人科のこと書くのは恥ずかしかったわ。
アンタの言う通り、
ハッシュってのもつけてみたわ。どう?
#更年期 #異世界転生 #おたまは武器 #メモ帳必須 #エストロゲンはヤラシくないらしい

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