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インフルエンザについて完全解説

こんにちは。小児科医のひろです。
10月からインフルエンザのワクチン接種がスタートします。
この時期は、多くの親御さんからインフルエンザに関する質問を受けます。

今回は、インフルエンザについてまとめて記事にしました。
インフルエンザについて網羅的に記載してあるので、これを読めば不安な点は解消されると思います。

ぜひ、最後までお読みください。


1. インフルエンザについて

インフルエンザはインフルエンザウイルス(主にA型またはB型)によって起こる急性の呼吸器感染症です。一般的な「かぜ」が様々なウイルスで起こり、のどの痛み・鼻水・くしゃみ・咳など軽い症状が中心で発熱も高くならないことが多いのに対し、インフルエンザでは突然の高熱(通常38℃以上)や頭痛、関節痛、筋肉痛、全身のだるさ(倦怠感)といった全身症状が急速に現れます。同時に、喉の痛み・鼻水・咳などのかぜと共通する症状も出ます。インフルエンザの方が症状が重く急激に進行する点が、かぜとの大きな違いです。特に小児ではまれにインフルエンザ脳症(急性脳炎)を起こすことがあり、高齢者や免疫力の低下した人では細菌による肺炎を併発して重症化することがあります。多くの方は1週間程度で回復しますが、一部では重い合併症により入院治療や死亡に至るケースも報告されています。

なお、インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型・D型がありますが、季節性インフルエンザ(毎年流行するもの)の主な原因となるのはA型とB型です。これらのウイルスは少しずつ遺伝子が変異しながら毎年流行を繰り返すため、かかったことがあっても再び別の型に感染する可能性があります。

2. 流行

インフルエンザは毎冬に流行します。日本では例年12月から3月頃が流行シーズンで、いったん流行が始まると短期間に多くの人に感染が拡がります。特に小児(学童や幼児)はインフルエンザにかかりやすく、流行の中心になりやすい世代です。世界的に見ても毎年子どもの20~30%がインフルエンザに感染すると推計されており、成人(5~10%程度)よりも高い発症率です。子ども達は学校や保育園で集団生活を送るためウイルスが広まりやすく、家庭内や地域への二次感染も起こしやすい傾向があります。
日本でも2023/2024シーズンは小児を中心に大流行となりました。厚生労働省の推計では、2024年末の1週間(第52週)に全国で約258万5千人ものインフルエンザ患者が発生し、統計開始以降最多を記録しました。

3. 原因

インフルエンザウイルスは主に人の呼吸器粘膜に感染し増殖します。A型は変異を繰り返しながら世界中で毎年流行を引き起こし、B型も毎冬流行します(C型は症状が軽く流行しにくいので通常問題になりません)。

感染経路として、インフルエンザウイルスは、患者の咳やくしゃみによる飛沫感染で広がるのが典型です。ウイルスを含んだ小さなしぶき(飛沫)を周囲の人が口や鼻から吸い込むことで感染が成立します。また、ウイルスが付着した手指で自分の鼻や目を触ることでうつる接触感染もあります。ウイルスが体内に入ると、数日の潜伏期を経て増殖し、発熱や喉の痛みなどの症状(発病)が現れます。発病前日から発症後5日程度はウイルスを排出するとされ、特に発症直後の熱が高い時期は周囲への感染力が強いです。小児はウイルスの排出期間が長めと言われ、症状がなくなってもしばらく他人にうつす可能性があるため注意が必要です。

特に子どもは免疫系が未成熟で、過去にインフルエンザにかかった経験やワクチン接種回数も少ないことから十分な免疫を持っていない場合が多いです。そのため流行期には学校や園で次々と感染が広がり、家庭内にもウイルスを持ち帰りやすいと言えます。また小児は手洗いやマスクの習慣が不十分だったり、咳エチケットが徹底できないことも一因です。特に乳幼児の場合、鼻水を拭いた手で周囲の物に触れるなどしてウイルスが付着し、保護者やきょうだいへ伝播するケースもあります。こうした理由で小児はインフルエンザの流行拡大の中心になりやすく、流行を抑えるには小児へのワクチンや集団生活での衛生対策が重要とされています。

4. 検査/診断

インフルエンザが疑われる症状(高熱、全身倦怠、咳など)がある場合、医療機関で迅速診断キットによる検査が行われることが一般的です。迅速検査では細長い綿棒で鼻腔や咽喉をぬぐって検体を採取し、ウイルスの有無を15分ほどで判定します。小児科や内科クリニックでも広く実施されており、その場でインフルエンザかどうかをほぼ確認できます。ただしこの検査は、発症直後(症状が出てからごく早期)では陰性になりやすいという欠点があります。ウイルスが体内で十分増えないうちに検査しても検出感度が低いためで、一般に発熱から12時間以上経ってから検査するのが望ましいとされています。実際、発症後12時間以内だと約2割が偽陰性(実際はインフルエンザなのに陰性と出る)になる可能性が報告されており、受診が早すぎて陰性だった場合は翌日に再検査するといった対応がとられます。逆に発症から3日以上経過するとウイルス量が減ってきて検出感度がまた落ちるため、12~48時間の間に検査を受けるのがもっとも正確と言われます。

迅速検査で陽性となればインフルエンザと確定診断されます。陰性の場合でも流行期には症状や周囲の感染状況から総合的に診断されることがあります(特に発症直後で陰性の場合は医師の判断で「疑い」として治療を開始し、後日再検査するケースもあります)。インフルエンザの診断は臨床症状と検査結果を踏まえて医師が行います。なお、PCR検査やウイルス培養検査といった高感度の方法もありますが、結果判明に時間がかかるため通常の診療では用いられません(主に入院患者の精密検査や行政のサーベイランス目的で行われます)。したがって、多くの小児では迅速検査によるその場診断が行われ、早期の治療方針決定につなげられています。

5. 治療

基本的にインフルエンザは時間経過とともに自然に改善する疾患であり、すべての患者に抗インフルエンザ薬が必須というわけではありません。まずは自宅で安静・保温・十分な水分補給を行い、解熱鎮痛薬などで症状を和らげながら体力の回復を待つのが基本です。しかし、乳幼児や基礎疾患のある子、症状が強く重症化リスクの高いケースでは抗インフルエンザ薬による治療が推奨されます。抗インフルエンザ薬を適切に使うことで、発熱期間の短縮(平均1日の短縮)や合併症予防の効果が示されています。特に発症から48時間以内に投与を開始すると有効性が高いため、治療薬はできるだけ早期(発症後2日以内)に使うのが原則です。重症化リスクが高い場合には、発症後48時間を過ぎていても投与を検討します。一方で、基礎疾患のない健康な子で発症後に受診が遅れた場合などは、無理に抗ウイルス薬を使わず経過を見る判断もなされます。最終的な投与判断は医師が症状の程度や患者背景を考慮して行います。

現在、日本で使用できる抗インフルエンザ薬は以下の6種類があります(2024年に新たにワクチンの経鼻剤も承認されました)。

・オセルタミビル(タミフル®):経口薬(カプセル・ドライシロップ)
A型B型に有効なノイラミニダーゼ阻害薬です。日本では生後2週以降の新生児から使用可能で、小児で最も処方頻度が高い薬です。原則1日2回5日間内服します。嘔吐など消化器副作用に注意が必要ですが、小児から高齢者まで幅広く使われます。

・ザナミビル(リレンザ®):吸入薬(粉末吸入)
ノイラミニダーゼ阻害薬。専用の吸入デバイスで粉薬を吸入するタイプで、5歳以上の吸入協力が可能な小児から使用します。1日2回の吸入を5日間行います。吸入時に咳き込みや喉の刺激感があり、喘息など呼吸器疾患のある子には注意が必要です。幼児では吸入が難しいため通常用いません。

・ラニナミビル(イナビル®):吸入薬(ドライパウダー剤または吸入懸濁液)
ノイラミニダーゼ阻害薬。1回の吸入(長時間作用型)で治療が完結するのが特徴です。粉末タイプは基本的に5歳以上で使用し、乳幼児には困難ですが、2019年に承認された吸入懸濁液フォームにより幼児への投与も可能になりました。懸濁液はネブライザーで吸入させる形で、国内の乳幼児1,104例の調査でも安全性上の大きな問題は報告されていません。吸入時はエアロゾルが発生するため、感染対策(周囲への飛沫拡散防止)に注意が必要です。

・ペラミビル(ラピアクタ®):点滴静脈注射薬。
ノイラミニダーゼ阻害薬。生後1か月以上から使用でき、1回点滴(単回投与)で治療します。嘔吐がひどく経口薬が飲めない場合や、呼吸困難・脱水などで入院が必要な重症例に用いられます。医療機関で点滴するため入院または外来点滴が可能な環境で使われます。

・バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®):経口薬(錠剤・顆粒)
ウイルスの増殖に必要な酵素(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ)を阻害する新機序の薬で、2018年に登場した1回服用型の治療薬です。12歳以上では錠剤1回服用、12歳未満の小児にも体重に応じた単回投与量が定められています(例:10〜20kgで10mg)。10kg未満の乳幼児には適応がなく、また2024年現在20kg未満には顆粒製剤が未承認のため5歳以下の小児には原則推奨されていません。一方、薬効研究では従来薬と同等以上の効果が示されており、特にインフルエンザB型に対しては有熱期間を短縮し合併症を減らすとの報告もあります。服用が1回で済む利便性も高く、中学生以上の年代では広く使われ始めています。


上記の薬を年齢や症状の重さによって使い分けます。
乳児(1歳未満):
内服できるオセルタミビルが第一選択で、服用が難しい場合や重症例にはペラミビル点滴が考慮されます。吸入薬のザナミビルとラニナミビルは乳幼児には使用経験が乏しく推奨されません。

・幼児(1~5歳):
内服可能ならオセルタミビル中心ですが、症状が軽ければ経過観察とするケースもあります。バロキサビルは低年齢には製剤上の制約があり積極的には使われませんが、B型インフルエンザの場合に医師が効果を期待して検討する場合もあります。

・学齢児(6~11歳):
自力での吸入が可能ならザナミビルやラニナミビルも選択肢になります。特に運動誘発性喘息などの持病がなければ吸入薬で1回治療とするのも有用です。バロキサビルも体重次第で使用可能で、服用が1回で済むため保護者の負担軽減につながります。

・中高生(12歳以上):
5種類の治療薬すべてが適応となり、患者さんの状態に合わせて選択されます。

薬同士の有効性には大きな差はなく、早期投与すればどの薬でも一定の効果があります。「どれが一番」というより年齢・症状・ライフスタイルに合わせて適切な薬を選ぶことが重要です。

なお、日本では異常行動への注意が保護者向けに周知されています。インフルエンザにかかった小児(特に学齢期~思春期)では、まれに高熱時に意識混濁や幻覚に伴う異常行動(突然走り出す、ベランダから飛び降りようとする等)が報告されています。かつてはタミフル服用との関連が疑われましたが、その後の研究で薬の種類に関係なくインフルエンザ罹患時に起こりうる現象と判明しました。

6. インフルエンザワクチンでの予防

インフルエンザ予防接種(ワクチン)は発病リスクを下げ、重症化を防ぐ有力な手段です。ただし効果は100%ではなく、「かからないための完全な保証」ではない点に注意が必要です。現行のインフルエンザワクチンは、体内に侵入したウイルスの増殖そのものを完全に防ぐことはできませんが、発熱やのどの痛み等の「発病」をある程度抑える効果があります。例えば、日本で行われた研究では6歳未満の小児におけるワクチン有効率は約60%と報告されています。これは「ワクチンを接種しなかった子どもと比べて、接種した子どもの発病リスクが相対的に60%減少した」ことを意味します。接種してもインフルエンザにかかる可能性はありますが、その場合でも症状が軽く済んだり、肺炎や脳症など重い合併症の予防に寄与します。実際、ワクチンは重症化予防に最も効果が大きいとされ、米国の研究ではワクチンが小児のインフルエンザによる生命危機的な状態になるリスクを75%低減したとの報告もあります。したがって小児においても毎年のインフルエンザワクチン接種が推奨されています(※後述のとおり、日本では小児は定期接種の対象ではありませんが、任意接種として多くの小児が受けています)。

生後6か月以上の小児が接種対象で、日本では13歳未満は基本2回接種となっています(※1回目接種時に12歳でも2回目が13歳に達すれば2回接種で差し支えありません)。

また、日本では、鼻腔にスプレー噴霧する経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト®)が2024年から使用開始されました。2歳以上~18歳(19歳未満)が対象で、0.2mLを片方の鼻腔に0.1mLずつ噴霧します。注射針を使わず接種できるメリットがあり、米国では小児で従来の不活化ワクチンと同程度の予防効果が報告されています。また1シーズン1回の接種のみでよいというメリットもあります。日本でも選択肢の一つとして今シーズンから導入されました。ただし生ワクチンのため、免疫力の低下した子ども(白血病治療中など)には使用できないなど制限があります。

7. 他の予防法

日常の感染対策として、インフルエンザ流行期には、手洗いやアルコール消毒の励行、咳エチケット(マスク着用やティッシュで口鼻を覆う)が挙げられます。また、人混みや密集した室内はなるべく避け、室内では適度な換気が重要です。家庭内に患者が出た場合は、看病する人以外との接触を減らし、タオルや食器の共用を避けるなどの対策が有効です。また十分な睡眠とバランスの良い食事で抵抗力を高めておくことも大切です。

8. 自宅療養と出席停止期間

お子さんがインフルエンザにかかったら、医師の許可があるまで登園・登校は禁止です。学校保健安全法により、発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過するまでは出席停止と定められています。発症日を0日目として数えるため、最低でも6日間は休む必要があります。熱が下がった後もウイルス排出が続くため、規定日数が過ぎるまでは自宅で安静にしてください。医師から登校許可の診断書は原則不要ですが、園や学校の方針に従いましょう。

9. 注意点

インフルエンザの発熱時にアスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬は絶対に使用しないでください。小児がインフルエンザや水痘の際にアスピリンを服用すると、ライ症候群というまれですが重篤な脳症・肝機能障害を引き起こすリスクが知られています。このアスピリンは川崎病の治療薬として用いられております。下記の川崎病の記事にも記載がありますので、参考にしてください。

10. まとめ

インフルエンザはただの風邪とは違い、子どもでは重症化のリスクもある感染症です。毎年冬に流行し、学校や園を通じて広がりやすいため注意が必要です。検査は発症から少し時間が経ってから行うと正確で、治療薬は年齢や重症度に応じて内服・吸入・点滴が選ばれます。予防接種は発病や重症化を減らす効果があり、2024年からは鼻に噴霧する新しいワクチン(フルミスト)も利用できるようになりました。発症した場合は登園・登校を一定期間控え、家庭では安静・水分補給を心がけ、アスピリンを使わないよう注意してください。

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