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川崎病ってどんな病気!?

こんにちは。小児科医のひろです。
小児科外来で、「熱が長く続いて、目が赤くて、首が腫れてきてます。」
「これって川崎病ですか?」とご心配される親御さんは多いです。
実際に、私も小児科外来で川崎病と診断し、入院で治療を行ったお子さんを多くみてきました。

今回は、下記をテーマに記事を書いてみました。

「川崎病」について

それでは、早速解説していきましょう。


1. 発症頻度

川崎病は乳幼児に多く発症する原因不明の血管炎(血管の炎症)で、小児の後天性心疾患の最大の原因ともなる病気です。

日本では年間1万5千人以上の子どもが川崎病を発症しており、その数は年々増加傾向にあります。2018年には過去最多の17,364人が報告され、0~4歳児人口10万人あたりの発症率は359.1と非常に高い値でした。患者の約87%は5歳以下の乳幼児で占められ、特に生後6か月~1歳前後の赤ちゃんに好発します。

2. 原因

川崎病の明確な原因はいまだに解明されていません。現在、有力な仮説は「ウイルスなどの感染症に対する過剰な免疫反応」が引き金になるという考え方です。実際に呼吸器ウイルス(例えばライノウイルスやRSウイルスなど)の流行と川崎病発症には数週間~数か月の時差を伴う相関が報告されており、これらのウイルス感染が川崎病を誘発する一因と考えられています。ただし、川崎病そのものが他人にうつる伝染病ではありません。新型コロナによる外出自粛で多くの感染症が激減した時期でも、川崎病の患者数はそれほど減少しませんでした。このことは川崎病の発症がインフルエンザのような飛沫・接触感染では説明できず、空気中の何らかの病原体や環境要因が関与している可能性を示唆しています。

また遺伝的素因も一部指摘されており、日本や東アジアで患者が多いことや、兄弟で発症する例が約2%報告されていることが根拠の一つです
(※それでも約98%は兄弟姉妹に波及しません)。

3. 症状と診断

川崎病は現在も症状に基づいて診断されます。
典型的な主な症状は次の6つです。

・発熱:高い熱が数日続く。
・目の充血:両方の白目部分が赤く充血する(目やには出ない)
・口の変化:唇が赤くひび割れる、舌がイチゴ状に赤くブツブツする(苺舌)、喉が赤く腫れる
・発疹(皮疹):全身に発疹が出る(乳児ではBCGワクチンの接種痕が赤く腫れることが特徴的)
・手足の変化:手のひら・足の裏が赤く腫れて硬くむくむ。回復期には指先の皮がむけてくる
・首のリンパ節の腫れ:首のリンパ節が腫れてグリグリ触れます(通常は片側性で、痛みはあるが膿まない)

これらのうち主要症状のうち5つ以上が揃えば、川崎病と診断されます。

4つしか当てはまらない場合でも、他の疾患が否定され、かつ心エコー検査(心臓超音波)で冠動脈の拡がりが確認されれば川崎病とみなして治療を行います。このように一部の症状が欠ける「不全型川崎病」も全体の約20%にみられることが分かっています。不全型であっても適切な時期に診断・治療しないと冠動脈の合併症リスクが高くなるため、医師は総合的な所見と検査所見から慎重に診断します。

4. 検査

診断の参考として血液検査では強い炎症反応が認められます。具体的にはCRP(C反応性タンパク)血沈(赤沈)の著明な上昇白血球の増加などがほとんどの患者でみられます。また発症から1~2週間くらい経つと血小板数(血液を固める成分)がどんどん増えてくるのが特徴、50万/μLを超える高値となることもあります。こうした所見は診断の手助けになるとともに、他の疾患(例:麻疹や溶連菌感染症など)との鑑別にも役立ちます。

心エコー検査は川崎病が疑われた段階で全例に実施され、心臓の冠動脈に拡張や瘤(コブ状の膨らみ)がないか確認します。この検査所見は不全型症例で診断を裏付ける重要な情報になるほか、治療方針を決める上でも非常に重要です。川崎病では冠動脈瘤の発生を早期に食い止めることが何より大切なので、経過中も入院中から定期的にエコーで心臓をチェックします。

また、川崎病については、後述するガンマグロブリン(IVIG)治療治療に反応しにくいタイプを見極めるには補助的な情報が重要になります。その一つが日本で開発された 「群馬スコア(Gunma score)」 です。
これには、好中球の割合が高い、血小板が少ない、アルブミンが低い、ナトリウムが低い、肝障害マーカーの数値が高い、CRPが高い、年齢が低いといった因子が点数に組み込まれています。スコアが高い場合には、医師が「追加治療を早めに検討すべきかどうか」を判断する助けになります。

5. 治療

現在、川崎病と診断されたらできるだけ早期(発症後できれば7日以内)に治療を開始することが推奨されています。標準的な初期治療は、ガンマグロブリン製剤の点滴静注(IVIG)アスピリン内服の併用です。

IVIGは発症早期に2g/kgという高容量を1回点滴投与することで炎症を速やかに鎮め、冠動脈障害の発生率を劇的に下げる効果があります。事実、治療を行わなかった場合には15~25%もの患者に冠動脈瘤が生じるとされていましたが、現在はIVIGを中心とした早期治療の普及により日本ではわずか2~3%程度まで冠動脈への合併症が減少しています。

アスピリン(ASA)は抗炎症・抗血小板作用を期待して用いられます。急性期には比較的高用量(30~50mg/kg/日)を投与し、解熱後は低用量(3~5mg/kg/日)に減量して血液が固まりにくい状態を維持します。この低用量アスピリン療法は、川崎病発症から約6~8週間後の心エコー再検査で冠動脈に異常がないことを確認できるまで続けるのが一般的です。

治療開始が早ければ入院後数日で熱が下がり症状も改善し、多くのお子さんは1~2週間程度で退院できます。

ただし約10~20%の患者さんは初回のIVIGが効かずに高熱が持続したり、いったん下がっても再び発熱してしまうことがあります。このようなIVIG不応例では、追加の治療が必要となります。追加治療としては、2回目のIVIG投与のほか、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン内服やメチルプレドニゾロン大量点滴=ステロイドパルス)を併用する方法が確立されています。ステロイドは2012年の国内ガイドライン改訂で正式に治療に組み込まれ、上述のとおり、「群馬スコア」が高い例では初期治療から併用することもあります。

さらに近年の研究成果に基づき、免疫抑制剤のシクロスポリンA(CsA)や抗TNF-α抗体のインフリキシマブ(IFX)といった新しい薬剤も難治例に対して有効性が確認され、適応症として保険承認されています。ごく稀にこれらを用いても効果が不十分な場合、最終手段として血漿交換療法(患者さんの血液を一部入れ替えて炎症物質を除去する治療)などが検討されます。幸い川崎病の治療法は年々進歩しており、複数の治療手段によってほとんどの症例で炎症を収束させることが可能です。

6. 予後

十分な治療を受ければ予後(経過)は良好で、大半のお子さんは後遺症なく元気に回復します。日本全国の調査でも、発症後1か月以降に冠動脈に後遺症が残った例は約2.5%に過ぎないことが報告されています。

しかも多くは小さな瘤で、時間経過とともに縮小したり血管が元の太さに戻ったりします。治療後も定期的に心エコーで経過を追い、大きな後遺症がなければ日常生活の制限もありません。川崎病が原因で命を落とすことは現在ほとんどありません。実際、2019~2020年の全国調査でも川崎病による死亡例は2例のみ(約28,000例中)でした。

7. 予防と再発

残念ながら川崎病は明確な原因が分かっていないため、発症そのものを確実に予防する方法はありません。

再発(2回目以降の川崎病発症)については、頻繁ではなく約3~5%程度と報告されています。大多数のお子さんは一度かかれば繰り返すことはありませんが、もし過去に川崎病にかかったお子さんが再び高熱や発疹など川崎病を思わせる症状を呈した場合には、早めに医療機関を受診して医師に相談してください。

8. 注意点

川崎病のお子さんが治療を受けた後、予防接種のスケジュールに関して注意が必要です。特に生ワクチン(麻疹〈はしか〉、風疹、水痘〈水ぼうそう〉、おたふくかぜ、ロタウイルスなど)は、IVIG療法によって投与された大量の免疫グロブリンが体内に残ることで効果が落ちてしまう可能性があります。日本小児科学会の指針では、川崎病でガンマグロブリン製剤(IVIG)を投与後、少なくとも6か月以上の間隔をあけてから生ワクチンを接種するよう推奨されています。退院時に担当医師から予防接種再開のタイミングについて指示がありますので、それに従ってください。

また、アスピリン服薬期間中に発熱した場合は主治医に連絡しましょう(まれにアスピリン服用下で水痘やインフルエンザ感染症に罹患すると肝機能障害を起こすことがあるためです)。

定期健診では心臓のエコー検査を行い経過を確認しますので、指示された通り必ず受診してください。

9. まとめ

川崎病は原因不明で、お子さんに高熱や発疹が出て心配な病気ですが、現在の標準治療によって重い合併症はごく一部に限られます。また、ほとんどのお子さんが完全に回復します。日本は川崎病発症数が世界で最も多い国ですが、その分診療の経験も蓄積しており、日本川崎病学会のガイドラインに沿った治療体制が整っています。万一お子さんが川崎病と診断されても、早期治療で後遺症なく治る可能性が非常に高いです。早期治療が大事であるため、ご心配な場合は、早めに医療機関を受診してください。

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