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『≈Victory』オーダー2026 #5 Final(オーダー第5話)

※これはフィクションの小説です。登場人物や事件はすべて架空であり、実在の人物・団体とは関係ありません。
※これはオーダーシリーズの最終話です。これまでのシリーズを読んでいないと理解しづらい内容です。

「こんな人生、望んではいなかった。死ぬべきなの。嫌ぁ。こうすべきなのぉ。死ぬべきたくない!」
 錯乱した言葉と共に、目の前に女性が落ちてきた。路上駐車の赤いセダンに叩きつけられた派手な音が、都会の騒音を圧倒し、日常を切り裂いた。彼女の体がひしゃげて、鮮血をまき散らす。拍子に砕けたフロントガラスが冬の冷たい日差しを受けて、ダイヤモンドダストのようにきらきらと舞い落ちる。突然路上に咲いた血の花は、芹沢結愛の思考を止めるには十分だった。
「ねえ、どうしたの? ゆあ、なんで急に黙るの? なんかすごい音したけど? なんかあった?」
 スマホから漏れる声が、今まで知人と話していたことを思い出させてくれた。
 機械的にスマホを耳にあてて、会話に戻ろうとした。だが、言葉が出てこない。
 視線が女性から外せない。
 セダンの上で仰向けになっている彼女――いや、もう遺体なのだろう、ピクリともうごかない。前衛的過ぎる芸術家が作った悪趣味なオブジェみたい――の顔がだらりと垂れて、逆さまに結愛を見つめてきた。
 顔の上部で泣いて、下部で笑っている。見たこともない、不可解な表情だった。目元から零れた涙が、額をつたって、乱れた髪に吸い込まれていく。
 女性の光を失った瞳が、じっと結愛を見つめていた。

 結愛にとっては衝撃的な事件でも、世間にとっては些細な出来事でしかない。結愛自身も表面上はすぐに平静を取り戻した。いつもどおりの日常。でも、あの時の光景は胸の中に深く刻まれたようだった。気を抜くとあの女性の瞳が脳裏に蘇る。今もそれに悩まされていた。
 都内のテナントビル。デザイナーが手がけたのかどうかは知らないが、外見は洒落ている。でも、中身はさほどの特徴もない。用途がオフィスならばなおさらに。
 結愛はそんな個性的なビルの無個性なオフィスの一角で、割り当てられたデスクの事務椅子に持たれかかっていた。デスクの上のパソコンには、書きかけの原稿が表示され、大きな余白が早く続きを書けと促している。書きたいのは山々だが、脳裏の女性に見つめられているせいで、キーボードの上で手が動かなくなってしまった。
 原稿は、Webニュースの記事だ。大手メディアが提供するようなしっかりと裏どりがされた、まっとうなニュースではない。結愛の会社は、総合ニュースサイトの記事として提供してはいるが、実態は派手に脚色した三流ゴシップに近い。
 結愛としては、それは問題とは思っていない。サイトの利用者だって真実なんか求めていない、派手な脚色を楽しみたいという要望のほうが強い。
 今、問題なのは、その飾りをつけようとしているニュースソース。それがあの時の光景を強く刺激してくるということだ。
 ――AIチャッティーで有名な愛ワールド社のエリートサラリーマン、突然の自死。順風満帆のはずの人生の裏で、いったい何が彼を悲劇へと追い込んだのか。現代人の心の闇。
 書きかけの記事のタイトルに、脳裏の女性の瞳が揺れる。
 曲がりなりにも記者として、結愛は事件に触れる機会が多い。そして、最近、この手の事件が異様に増えている実感がある。脳裏の女性――彼女のケースも類例であるような気がしてくる。
 これは単なる偶然なのだろうか。
 だめだ。集中できない。書ける気がしない。
 はあ、溜息まじりに原稿ソフトのAIツールを起動する。
 汎用AIチャッティーのロゴが画面に浮かび上がり、消えると同時にチャット欄が現れる。
 そこへニュースソースをコピペして、普段の自分の視点の特徴を付記する。代筆を命令すると、瞬間的に必要な文字数に達した記事を、AIが苦も無く書き上げてみせた。
 いらなくない? 私。
 ――そんなことはありません、あなたの指示がなければ私は書くことができませんでした。これはあなたの指示で、あなたの着眼点で、あなたの文体で書いた記事です。つまり、これは、あなたの記事です。
 会社としては、AIの利用を否定していない。むしろ推奨までしている。だから、使うことに問題はない。だから、私に問題はない。そのはずだ。
 女の瞳が私を見ている。
 主任に記事を提出するとOKが出た。当然かもしれない。
 Webニュースの部門は単なる表看板にすぎない。ほとんど収益を期待すらされていない。稼ぎ頭はWeb広告の部門。芸能事務所の売り込み中のアイドルの販促をニュース記事に仕立て上げ、さながら事実のように「いま、この娘は大人気ですよ。応援しなくていいのですか? みんなのように」と読者に訴えかける。それを大手の総合ニュースサイトに潜り込ませるために、必要な表看板が私の居場所。そうした広告はいいお金になるらしい。本命をサポートするための、言うなれば嘘の顔が私。ならばこれでいいのだろう。私の記事に誰も期待などしていない。別にどうでもいいのだろう。
 私だってそれでいい。やりたくて記者をやっているわけじゃない。IT関連企業のOLという肩書がほしいからやっているだけだ。自分を盛れるし、自分が映える。それで生活費が貰えるのだから、何の不満もない。Win-Win。
 女の瞳が私を見ている。
 うっとうしい。なぜ、非難がましく私を見るの。あなたがそうなったのは、あなた自身の選択でしょ。私は何も悪くない。
「芹沢さん、夕飯ご一緒しません?」
 退社時間が近づいて、同僚の菅田さんが声をかけてきた。バツイチの地味な女性だ。顔の造作は悪くないのに、ろくに化粧もしないのが見苦しい。おかげで目の下の隈が目立つし、髪のほつれも目についてしまう。なにより気に入らないのが、いつもつけている白い花の髪留め……白い花は心に残るから嫌い。ようするに映えない女だ。一緒にいるだけで絵面が悪い。なにかとアプローチをかけて距離を縮めようとしてくるが、お断りだ。というか、もうこれ以上距離など縮む余地はない。すでにSNSで相互フォローしているし、グループ登録だってしている。これ以上親密な関係は築けない。いったい何がしたいのだろう、この人は。
「ごめんね。予定があるの」
 いつもの断り文句。
 予定はないが、ある。特にやることがなくても、アフターで予定がある多忙な女のほうが映えるから、いつもあるのだ。
 帰宅前に化粧室へ。やらねばならない日課がある。結愛のオフィスは十階。都心から少し外れているが、それだけに夜景が綺麗だ。居並ぶ高層ビル群を遠景に納めることができる。仕事終わりにそこで一枚、仕事のできる女アピール。いいねが稼げる大事なルーチン。
 そのためにもルーチン前の可愛さチェックは必要不可欠だ。化粧室の鏡の前で自分を確認する。うんうん悪くない。しっかり盛れてる。問題ない。アラサーにはとても見えない。大丈夫。
 と思ったが、少し目元のシワが引っかかった。目立つほどではない。気にしなくていいレベルだが……バッグを漁って化粧道具の一式を洗面台に並べる。ブラシ、筆、スポンジ、コンシーラー、下地、ミスト、綿棒、ミニパレット――ちょっとしたメイクアップアーティストのような大量の品々。これでも結愛が持ち運びを考慮し厳選したうえで、最小限にとどめた結果だ。大事な相棒たち、彼らがいないとうまく映えない。映えないのは駄目だ。
 保湿を足し、下地を薄く叩き込んだ。
 コンシーラーを細筆で置く。平筆でほどく。スポンジで押し込む。綿棒で削る。
 まだだ。まだ影が残る。
 駄目だ、これでは十分じゃない。笑っている時が重要なんだ。笑顔で充実アピールであげるんだから。そこで線が現れるようじゃ全然映えない。しわが目立ちますねw なんてコメントでももらったら、見放すフォロワーも出てくる。そんなのはダメ。ダメダメダメ絶対ダメ。
 にこやかに笑って、しあわせに笑って、充実して満ち足りて、最高の自分を見せないと、いいねがこない。フォロワーが減る。
 結愛は異常な早さで正確に補修作業を進めていった。その間、何人か化粧室に出入りしていった。その誰もが結愛の鬼気迫る姿に怯んでいたが結愛は気づきもしなかった。
 ようやく納得のいく仕上がりになり、結愛は鏡に向かって大きく笑った。唇の端が大げさに吊り上がり、少々不気味な笑みとなってしまったが、シワが見えなかったので、結愛は満足だった。
 結愛の個人的映えスポットに向かう。エレベーターの奥の休憩スペースのような場所。洒落た長椅子が置かれ、背後はガラス張りで、都心の夜景が一望できる。結愛だけのお気に入りの映えスポット。椅子に腰掛け夜景をバックに自撮り。焦らず丁寧に、顔の角度を念入りに、光の加減に気をつけて、満を持してシャッターボタン。
 悪くない。写メに加工はしない。必ずバレる。だから、自分を加工する。それが結愛のスタイル。それが受けがいい。いっぱいいいね。たくさんフォロワー。人気者で広い交友関係ーー充実した人生の証。
 でも、加工に手間取った。いつもより時間が遅い。まさか事実を語るわけにもいかない。
 少し悩んだが、結愛は、素早くスマホの画面で指を踊らせた。
 残業、大変でした。でも私は元気。さて夕飯何食べよっかなー。
 メッセージを添えた写真をSNSにあげると、すぐに好評の波が来る。
 コメントも続々とついてくる。
 おつかれさま。がんばりすぎないでねーー
 今日も素敵ですーー
 いいねくれた人にいいねをかえす。内容はスルーする。見なくていい。どうせいいねだ。どうでもいいね。
 コメント返信コピペして、いいねを返す。ちゃんと考えて返信してます、の言い訳時間が稼げたら、またいいねを返してコピペの返信ーー
 作業に没頭するうちにフロアの照明が暗くなった。薄闇の中に、スマホの画面の光に照らされた結愛の顔が、浮かび上がる。
 無意識に唇の端が吊り上がり、歪んだ笑みができていた。
 作業を終えてほっと一息つくと午後十時をまわっている。夕飯? そんなものはどうでもいい。夜に食べると体型が崩れる。ビタミン剤と水でいい。夕飯をとるのは週末だけだ。映えるお店で映えるディナーをSNSにあげて食べる。それだけで十分だ。
 帰宅しようと席を立つ。なんとはなしに夜景に目を向けると、窓ガラスには、墓石のような高層ビル群を背にした、知らない女が写っている。
 可哀想な女に見えた。
 精一杯に自分を飾って偽って、哀れなやつ。
 まもなく、それがガラスに写った自分だと気づいて、結愛は愕然とした。
 私が哀れなはずがない。フォロワーもたくさんいる。ちょっとバズったことだってある。性格もいい。ちゃんといいねされたらいいねする。見た目もいい。人気者だ。勝ち組に近い。
 そんな私を、なんで私は哀れだと思ってしまったんだ。
 脳裏に女が現れた。ひしゃげたボンネットの上に仰向けに息絶えている。すっと女が立ち上がった。徐々に姿が歪んで、変質していく。彼女のスーツが学生服に変わった。見覚えがある。高校の制服だ。結愛も着ていた。もう捨ててしまったが、当時は毎日着ていたものだ。女の顔がぐにゃりと崩れる。再び形を整える。少女の顔となった。活発で自由でマイペースで、見た目は普通。成績は中の下、頭も普通。取り立てて優れた部分なんてなかったのに、誰にも少しも引け目を感じていない、まぶしい少女。かつてのクラスメートで、結愛の世界から突然いなくなってしまった女の子。
 京香ちゃん……。
 京香が見ている。険しい表情だ。そんな表情の京香を見たことはなかった。結愛を見ている。
 どうして、そんな顔をするの。どうして。
 脳裏の京香が口を開いた。何かを喋ろうとした矢先、ふっと姿がかき消えた。
 呆然と、ガラス越しに夜景を見つめる。瞬間、景色が遮られた。ガラスの向こうをスーツの男が笑顔のままに落ちてきた。口の端を釣り上げるようにして、大きく無様に笑いながら、涙を振りまきながら、スーツの男が結愛の目の前を落ちていった。
 およそ現実味のない出来事だったが、ビルを出ると、人だかりができていて、救急車両の回転灯が、うるさく辺りを照らしていた。

 帰り道のことはよく覚えていない。毎日繰り返し通る道だから、頭を使わずとも間違わない。ルーチンワークはオートで進む。ルーチンワークの多い毎日は、ほっといても自動で勝手に過ぎていく。そうして生きてきたのなら、これからもそうして生きるなら、ひょっとすると、私は別にいらないの? いやいや、そんなわけないよね。フォロワーたくさん、いいねたくさん、私にはきっと価値がある。
 翌朝の目覚めは最悪だった。夢の中に京香ちゃんが現れた。険しい顔で睨んでいた。きっと私を怒っている。
 彼女が怒るのもわかる。
 京香ちゃんの悲報を担任が口にしたとき、クラスは悲壮感につつまれた。彼女はケータイの友達リストが少なかったから、人気者とは言えなかったけれど、誰からも憎からず思われていた。だから、同級生たちは誰もが涙した。声をあげて泣いた子もいて、泣き声を聞いた子がさらに悲しくなって、終わらない悲しみが広がった。なのに、私だけは泣かなかった。泣けなかった。自分がそんなに冷たい人間だったとは知らなかった。京香ちゃんの一番近くにいたのは私だったのに。友達リストの一番上が京香ちゃんだったから、大事な友達だったのに。京香ちゃんの様子がおかしいことにも気づいていたのに。私はなにもせず、なにもできず、涙すら見せず――京香ちゃんが怒るのも無理はない。最低だ。
 そして、京香ちゃんの机には京香ちゃんのかわりに安っぽい花瓶に挿した白い花が現れた。私は白い花が嫌いになった。
 あの日から世界は、京香ちゃんがいない場所になった。京香ちゃんと友達になりたかったのに、なれなかった。
 うん? いや、友達だったよね? ケータイの友達リストでトップにしていたじゃないか。つまり、友達ということだ。
 なのに、なんで私は友達になりたかったなんて、そんなことを望んだの? すでにこれ以上ないほどに、友達だったじゃない。
 頭痛がしてくる。
 もう物思いにふけるのはやめよう。やるべきことがある。
 朝はすっぴんの自撮りの写メをあげなくてはいけない。すっぴんでも可愛い、いいね。それはけっこう稼げるショット。やらないと。もちろん本当にすっぴんなんて見せられない。いくら可愛い私でも、すっぴんはさすがに見れたものじゃない。ファンデーションをべた塗りで、すっぴん風に仕上げてあげる。その後は大急ぎで本メイク。タイムラインでばれないように、簡単な化粧ですませたふりしてがっちり盛って、出勤前のワンショット。そこも大事な、いいねポイント。大事な朝のルーチン。やらないと。
 なのに、どうにもやる気が出なかった。
 脳裏に京香ちゃんの姿が浮かぶ。彼女の唇が動いた。少し気づいた。彼女は怒っているのではない。懸命に何かを伝えようとしているような……でも声は聞こえない。口の動きを注意深く見つめる。
 あ、な、た、の、ば、ん。
 た、た、か、え。
 京香ちゃんは、険しい顔でそう言っていた。
 結愛には意味がわからなかった。

 クリスマスが近づいている。今年は雪が降りそうもない。派手に飾られた街を歩くと、飾れていない自分が恥ずかしくなる。メイクをきちんとしなかったのは何年ぶりのことだろう。SNSの朝のシーンをあげなかったのは何年ぶりのことだろう。うつむき加減で歩いていく。都会の喧噪の中にサイレンの音が混ざっている。最近は珍しいことではない。交差点を渡る。
 ――理想のAIパートナー、チャッティー。趣味に、仕事に、いつでもどこでもあなたの側に。あなたの人生を強力にサポートします。
 ――AIは愛。愛ワールド社。
 シェアNo.1のAIの広告が煩い。あちこちで視界に入る。
 うるさい繁華街をぬけたところで、背後で衝突音がした。悲鳴があがる。だが見る気にもなれなかった。
 オフィスに入ると、あちこちから奇異な目を向けられた。
「芹沢さん、大丈夫? 体調が悪かったら無理しなくてもいいよ」
 そこそこ映える見た目のアラフォー主任が、優しく言葉をかけてきたが「別に君がいなくても大丈夫」と言われた気がした。
 唯一、労りが見えなかったのは菅田さんぐらいだ。そういえば、彼女にしてはめずらしい。朝の挨拶は欠かさない、うっとうしい人なのに。
 気になって様子を伺うと、菅田さんの左目からペンが突き出ていた。
 菅田さんが私の視線に気づいたらしく、こちらを向いた。口の端を吊り上げて笑っている。左目からは血の涙、右目からは色のない涙がこぼれていた。いつもどおりの地味な見た目だけど、色のコントラストが映えている。菅田さんが器用に不気味な笑顔のまま唇を動かした。
「誰も私を見てくれないから、私も見ないほうがいいかと思ってつぶしてみたの……なのに芹沢さんったら、今朝は見てくれるのね。うれしい。じゃあ、片方は残しておきましょう」
 悲しそうに明るいトーンで、聞いていると眩暈がしそうな声だった。菅田のお気に入りらしい、髪留めの白い花に赤い汚れが付いている。
「でも意味ないわよね。チャッティーがいるから、私がいなくても仕事はまわるし、見てくれるのが芹沢さんだけじゃ悲しいし、知り合いは憐みか軽蔑の眼差ししかくれないし、あの人は戻ってこないし、子供はいないし、いつも一人でやることないし、残りの人生もかわらず一人でしょう。一人は嫌だから、死ぬべきよね。うん、死ぬべき。死にたくない。嫌。死ぬべきたくないぃ」
 突然、菅田さんは声を荒げると、椅子を蹴倒して、オフィスを飛び出していった。
 呆気にとられる結愛の脳裏で、京香が何かを叫んだ。声は聞こえない。だが、聞こえた気がした。考えるより先に体が動く。
 結愛ははじかれたように菅田の後を追って駆け出した。
 菅田が廊下を走りぬけて、上り階段を駆け上がっていく。
 後を追うが、距離が縮まらない。
 ちくしょう。ヒールのせいだ。ヒールが邪魔だ。背が高いほうが映えるから、ハイヒールにしたが、走りづらくて仕方がない。
 脱ぎ捨てて、菅田を追う。階段を駆け上がる。
 エレベーター使ってよ。愚痴をこぼしたくなったが、今は口は呼吸で忙しい。
 結局五階も上らされ、屋上へとたどり着いた。菅田がフェンスを乗り越えようとしている。結愛はその背中に抱きついた。
「死なせて助けて離して離さないで、私なんてもう死ぬべきたくない。もう一人はいやなの!」
 振りほどかれそうになるのを必死に耐える。ほとんど考えもなく結愛は叫んでいた。
「一人じゃないから! ううん。一人なのはあなただけじゃないから、結愛もそうだから、結愛もいるから、あなたの場所に!」
「あああああ」
 笑顔で泣く菅田が悲鳴のような雄たけびをあげる。結愛もつられて声をあわせる。
 だんだんと菅田から力が抜けていくのを感じた。
 菅田が床に座り込む。結愛も隣に座った。屋上のコンクリートがお尻に冷たかった。高所を吹く冬の風が冷たかった。結愛は思わず菅田に肩を寄せた。菅田も身を預けてきた。
「大丈夫か?」
 後を追いかけてきたアラフォー主任が屋上に姿を見せた。
 寄り添う結愛たちを見て安堵の息をつく。
「大丈夫そうだな――」
 そして、口の端を吊り上げた。
「――でも、俺はもうだめだ。妻は絶対浮気しているし、相手はたぶん俺の弟だし、娘は口を聞いてくれないし、死ぬべきだ。死にたくない。死ぬべきだぁ。セックスレスでもう限界だ」
 主任は髪を掻きむしったあと、ふと、動きをとめた。
「だから、結愛ちゃん、遊ばせて。あ、べつに愛とか恋とかそういうのではなく、俺の欲望のはけ口として、お付き合いいただけませんか?」
 菅田が手を握ってきた。主任の異様な様子に怯えているようだった。結愛の思考は停止していたが、反射的に答えていた。
「いやです」
「おわったー。望みは絶たれたー」
 とめるまもなく、主任がフェンスをハードル走のように飛び越えて、結愛たちの視界から消えた。
「やだぁー、俺、元陸上部ー」
 主任の声が遠ざかっていく。
 呆然とする二人の横を続けざまに人影が走り抜けていく。
「もう働きたくない、死にたいやだぁー」
 ビル内の他のオフィスの人間とおぼしきサラリーマンや、
「葛城くんが結婚とかありえないー、私の推しの私のなのにーもう死ぬたくないやぁ」
 OLが柵を乗り越え、
「三十路で清掃バイトとかおわってるやん、自分。もう死んだほうがええでー、ちが、やだぁー」
 清掃服の男が柵をまたいで飛んで行った。
 他のビルの屋上でも空を舞う人影があちこちに。地上からは、衝突音とかすかな悲鳴とサイレンの多重奏が巻き起こる。
 結愛は菅田と抱き合った。彼女の血の涙が服についた。彼女の髪留めの白い花が震えている。結愛も自分の体が震えているのを感じた。
 二人して、お互いの存在を確かめるように、つなぎとめるように腕に力を込めていた。

 その日は菅田を病院へ送り届けて一日が終わった。彼女の衝動はおさまったようで、病室のベッドで笑う彼女は、左目の包帯を除けばいつも通りの顔だった。だが、以前より、綺麗に見えた。
 ニュースのヘッドラインは多発した衝動的自死行為の関連トピックであふれかえり、人の減った結愛の職場は、たとえ窓際部門といえども仕事に忙殺される事態となった。
 主任がいなくなり菅田は入院中。もともと部署は少人数。しかも結愛は残されたメンバーの中ではもっとも古株でプロパー社員だった。必然的に主任の代役を務める羽目になったうえ、菅田の担当記事までカバーしなくてはならない。もともと仕事熱心ではなかったから、仕事量が激増すれば、とてもではないが効率よくタスクをさばけなかった。AIサポートをフル活用しても、主任の代役と菅田の担当分を終わらせるのが精一杯で、自分の仕事は丸々手つかずで、終業時刻を迎えてしまった。入社以来初めての残業だ。SNSで残業をうそぶいたことは幾度もあるが、本当にやるのは初めてだ。
 デスクトップ画面に、記事のタイトルが表示されている――全国各地で多発する自殺シンドローム。
 書かれているのはそれだけだ。本文は真っ白で一言も書かれていない。
 以前から、衝動的な自死の症状は耳にしていた。それは散発的なものだった。けれど、先日は首都圏を中心に同時多発的に発生した。特に被害がひどかったのは、AIチャッティーの開発運営企業である「愛ワールド社」だ。都内の本社ビルに在籍している社員の半数以上が同症例により、重症あるいは帰らぬ人となっている。
 別の記事のタイトルに視線を移した。
 ――自殺シンドロームの原因は、チャッティー?!
 愛ワールド社の惨状から、そんな噂が広まっている。なぜ、チャッティーを使うとそんな症状に陥るのか、合理的な理由を説明できないままに、世論はチャッティーを危険視し始めている。おかげで他のAIについても懐疑的な風潮となりつつある。
 ビルの消灯時間になった。オフィスの照明も暗くなる。窓の外の夜景がよく見えるようになった。一見何事もなかったような光景だけれど、確実にそこで過ごす人々は少し減っている。
 いまのところ、大惨事が再び起こる予兆はない。けれど、散発的な悲劇は途絶えることなく続いている。
 読者に言うべきことはたくさんある気がする。書くべきことはたくさんある気がする。けれど、手は動かない。余白は埋まらない。時間だけが積もっていく。
 頭がぼんやりしてくる。
 画面の隅のチャッティーのアイコンがまぶしく見える。
 マウスのポインターがそこへ吸い寄せられる。チャット画面が開いた。
 ――何かお手伝いできることはありますか?
 魅惑的な言葉に心が揺れて手が動く。
 まもなく、記事の余白は綺麗に消えた。
 これじゃあ、私、いらなくない?
 うん、いらないね。死んだほうがいいんじゃないかなー。
 そうだね。そのとおりかも。
 首筋に痛みが走って、我に返る。
 いつの間にか握っていたボールペンのペン先が、喉元を軽くつついていた。

 記事をまとめて、サイトにあげて、会社を後にした頃には、まもなく日付が変わる時刻になっていた。終電前に駅へとたどり着けるように、足を急がせる。街中には先だっての惨事の痕跡はほとんどなくなっている。ところどころに見かける慰問の花々は、クリスマスイルミネーションの中に埋没してしまっている。社会の自浄作用の強さが少し空恐ろしくなる。そのせいか、冬の夜の冷気のせいか、結愛は襟元にまいたマフラーの中に首をすくめた。そうして、アスファルトを行く自分の足を見つめていると、ヒールの前にスマホが現れた。誰かの落とし物らしい。それも今しがた落としたような。
 画面が瞬いている。チャッティーのアプリだった。
 ――フラれちゃった。クリスマスも近いのに。あんまりだよ……
 そっか、つらいね。でも、元気をだして。これが最後の恋じゃない。これは終わりじゃない。ただの、新しい恋が始まるプレリュードなんだよ。
 視線をあげると、電信柱に顔を打ち付けている女性がいた。
 額が割れている。涙と血が顔の上で混ざっている。口角が吊り上がり、顔の下だけ笑っている。
 呆然と眺めていると、事態の異常さに気づいたらしい青年が、女性にかけよって止めに入った。女性は気を失ったようで、青年の腕の中に倒れこむ。青年が自分のスマホで通報しているのを見ていると我に返った。
 私もああして死ぬべきじゃないかな。
 彼女は無事だったでしょ。あの青年が新しい恋の相手になるかもしれないじゃない。
 そうだね。そうして、またフラれて同じことを繰り返す。意味がないね。死ぬべきじゃないかなぁ。どうせ遅かれ早かれ、死ぬだろうし。彼女も私も死ぬべきじゃないかなぁ。
 うつむきながら重い足取りで、結愛は家路を急いだ。
 
 もうさ、終わっていると思うんだよね。
 どうして生きているのか不思議。
 無駄無駄、価値なし、諦めて。
 私が私に言い募る。大げさな笑みで楽しそうに言い募る。
 死ぬべき、死のうよ、終わらせよう。みじめな人生をやめちゃおう。
 京香ちゃんが現れる。京香ちゃんは喋れない。険しい顔で大きく口を動かす。
 
 ま! け! る! な!

 京香ちゃんが私を押しのけて私に向かって繰り返す。何度も何度も険しい顔で繰り返す。

 このところの目覚めは最悪つづきだ。きちんと眠れた気がしない。疲労がぬけない、体が重い。頭もどこかぼんやりしている。窓から漏れる日差しが憎らしい。
 今日も朝のルーチンはこなせそうにない。でも、さすがにこれ以上間をあけると、いいねもフォローもなくなりそう。人間関係がこわれてしまう。友人がいない孤独でかわいそうな人になってしまう。
 洗面所の鏡の前に立った。相棒だったはずの化粧道具を並べる。このところファンデーションと口紅ぐらいしかまともに使っていない。盛らない人は美しくない。映えない人は価値がない。世界のルールに従わないと、生きていく資格はない。
 気乗りはしないが、化粧を施す。いつものように入念に。すっぴんのショットは今日はいいだろう。盛るだけで。
 今まで散々に繰り返してきた作業のはずなのに、うまくメイクが整わない。目元の皺がどうしても消えてくれない。なぜだかさっぱりわからない。何度も試みるうちに出勤時間も迫ってくる。スマホが揺れて、洗面台のタイルの上でけたたましい騒音をだしている。焦ったせいで、自分でもひどい出来になった。あきらめて、スマホのスケジューラーを切る。
 鏡の中の自分はとても映える気がしなかった。いつものようにいつもの化粧をしたはずなのに、若さが消えて、疲れがにじみ、美しいよりも先に――
 ――醜い、な私。
 そうだね、死んだほうがいいかもね。
 スマホを見る。SNSの自分のプロフ。フォロワーの数が減っている。数日発言しなかっただけなのに、もう世界から脱落しかけている。
 今の自分は良い出来ではない。でも、さすがにこれ以上の沈黙はまずい。
 必死に笑顔をつくる。思った以上に、口角が吊り上がる。我ながら不気味な笑顔。
 でも、これでいいよ。これであげよう。大丈夫。
 そんな自分の声に動かされて、自撮りを一枚、そのままSNSにアップする。
 いいねを待つ。
 ……こない。
 いつもならすぐにいいねの波なのに。
 焦燥感に襲われる。おかしい。なんで。
 いやいや、その顔でいいね。がくるわけないから。
 さっき、大丈夫って言ったじゃない。
 コメントがついた。
 一瞬、喜びに胸が膨らんだが、すぐにしぼんで干からびた。
 ――え? なにこれ、ホラー?
 ――クリスマスなのにハロウィンをなぜやるのかw
 ――マジ幻滅。
 ――キモすぎだろ、この女(笑)
 フォロワーの数が見る間に減っていく。血の気がどんどん引いていく。
 いいねがないね。フォローがないね。死ぬしかないね。
 鏡の中で私の目が泣いている。鼻水まで流している。でも、口元だけは異常に嬉しそう。
 ね? 私って何の価値もないね。死ぬべきだね。
 そうかもしれないね。もう、友達はいない。ケータイの友達リストは時代の流れでなくなった。かわりのSNSもこのとおり。私は一人になっちゃった。もう誰とも繋がれない。誰もいない。友達はいなくなった。死にたくなるほど一人ぼっち。ケータイがなくなったから、もう繋がれない。SNSもフォローがないから繋がれない。京香ちゃんももういない。
 京香ちゃん……。
 京香ちゃんが険しい顔をしている。唇が動く。
 た、た、か、え。
 ま、け、る、な。

 結愛は唇を噛み締めた。血の味がする。
 いや、そもそも、私に友達がいたことってあったか!? 当時は他人を友達扱いしてアドレスを一杯にしていた。今はSNSで似たようなことをしている。他人を友達と名付けてただけじゃないのか。だから、京香ちゃんと友達になりたかったなんて気持ちが出てきたんじゃないの!?
 思えば、友達を他人としか思えなくなったのは、京香ちゃんがいなくなってからだ。アドレス一杯の友達が他人にしか見えなくなったのも、他人のことが好きになれなくなったのも、自分のことが好きになれなくなったのも。
 あの時、京香ちゃんがどこかおかしな素振りをしていたことには気づいていたのに。どこか苦し気だったことも。
 なのに、そんな京香ちゃんに、何もしなかった何もできなかった私は、私のことが嫌いになったから、だから、こんな私に。
 京香ちゃん。京香ちゃん。京香ちゃん。一緒に生きたかったよぉ。
 京香ってだれ?
 自分の中の自分が放った疑問に愕然とする。
 脳裏の京香ちゃんが中指を突き立てた。私の中の私に。
 瞬間、閃いた。あの時の京香ちゃんがなぜ苦しんでいたのか。なぜ、京香ちゃんの居場所が白い花にとってかわられたのか、なぜ世界は京香ちゃんを失ってしまったのか。
 なぜ、私のくせに、京香ちゃんを、知らないんだよぉぉおぉお!
 鏡の中の私の唇がぶるぶると震えている。口角が徐々に下がっていく。
 おまえだなぁ?! おまえが、私の大切な友達をぉ。友達になりたかった人をぉ。京香ちゃんをぉ、京香ちゃんをぉ、私からぁ奪ったんだなぁぁぁあああああ!
 鏡の自分に拳を叩きつける。たたき割ってやりたかったのに、結愛の力では割れなかった。頭はよくないし、力もよくない。そんなことわかってる。自分で思うほど可愛くもない。そんなことだって気づいている。弱い。そのとおりだ。わかっている。価値はないかもしれない、誰にも勝てないかもしれない。でも、
 た、た、か、え。
 ま、け、る、な。
 繰り返し繰り返し、殴りつけた。鏡は割れない、私は倒せない、中にいるのに手が出せない。それでも、
 た、た、か、う。
 ま、け、な、い。
 ネイルが飛んで、爪が割れて、指の皮もすれて、滲んだ血が鏡に付いて、鏡の自分も血がついて、それでも殴る。ゆるしてたまるか。ゆるさない。
 鏡の自分の笑みがもう、笑みではなくなる。
「京香ちゃんを、返せよ! くそったれ!」
 笑みが消えて、怒りに満ちた自分を最後に写して、鏡が砕けて、洗面台に散らばった。

 
 菅田さんが復帰して主任の後任に選ばれた。結愛のほうが社歴が長いことを考えれば、面白くない人事のはずだけれども、結愛は心から祝福できた。オフィスにもやっと元の平和がもどってきたように思う。仮初だったとしても。
 今日はクリスマスイブだった。明日が祝日であることもあって、街中は浮かれた気分が漂っているし、オフィスの雰囲気も和やかだった。本社がチャッティーの使用を禁止する旨の通達をだしてきたので、記事の作成は手間にはなったが、菅田主任や同僚に助けられたり助けたりで、なんとかうまくやっていけている。自分の力で書く記事はなんだか少しまぶしい気がする。気のせいだとは思うけれど。
 菅田主任が今日は仕事を早く締めて、簡単にクリスマスパーティーをしようと提案した。アフターで時間をとられるのは嫌がる人がいても、勤務時間中にケーキを食べるのを嫌がる人はいない。甘いものが嫌いな人は困るかもしれないが、幸いオフィスは全員甘党だ。
 結愛はバッグからスノードロップの造花を一輪とりだした。そうして簡素ながらパーティの準備に浮かれるオフィスから、結愛はそっと抜け出した。エレベーターで屋上へと向かう。
 屋上にでる。見上げれば、夕刻の空は暗い。重く圧し掛かってくるような灰色の雲が広がり、冷たい風が肌を刺す。明るい気分にはとてもなれない空模様。でも、結愛は気に留めなかった。
 スノードロップを手に、命を失った人を偲びながら、フェンスへと歩み寄る。
 フェンスの傍へ、そっと造花を供えて目を閉じた。
 元主任……元って字は悲しいな。前の主任と、目の前で亡くなった人たちに祈りをささげると、結愛は京香を思い描いた。
 京香ちゃん。あの時、私だけ泣けなくてごめんね、でも、違うの。わかったの。ショックが大きくて、驚きすぎて、泣く余裕もなかっただけだって。私、ちゃんと悲しかった。私が一番悲しんでた。だって、京香ちゃんのこと一番大事だったもの。友達リストで一番、いやあなただけが友達だった、あなただけが大切な友達だったから。
 今だって、涙は出ないし出したくないけど、誤解しないで。私ちゃんと悲しんでるから。
 結愛は気づいていた。京香のことを友達だと思う気持ちが、一方通行かもしれないことを。京香は本当は自分のことをなんとも思っていなかったかもしれないことを。そして、こうして思い描く京香ちゃんは、本物ではないかもしれないことも……。
 でも、かまわないと思っている。
 友達でいたい気持ちに嘘はないし、京香ちゃんのおかげで今があるのも間違いではないから。
「芹沢さん、そろそろ始めましょう」
 屋上に菅田主任が姿を見せた。わざわざ呼びに来てくれたらしい。左目の眼帯が痛々しいが、彼女は以前よりきれいに見える。髪飾りが似合っている。白い花も汚れが落ちている。
「もう少ししたら、行きます。ありがとう」
「うん、待ってるから」
 菅田主任は微笑むと軽やかな足取りで戻っていった。
 結愛は柵にもたれ掛かって眼下を眺めた。
 AIを頼ると人は壊れる。そう信じる人が多くなった。チャッティーはもうほとんど見ない。代わりに、急に外国人が多くなった――そして、なんだかんだと世の中は落ち着いて、決められた通りに動き始めてる。けれど、AIが消えても、空気が重い。きっと、どこか間違えている。
 クリスマスイブの街並みを見下ろしながら、結愛は脳裏の京香に語りかけた。
 京香ちゃん、これで勝ったと思っていい?
 その顔は険しいままだ。
 そうか、そうだね。やっぱり、まだなんだね。でも、大丈夫。私はもう大丈夫、私、負けないから。これからもいつまでも。
 脳裏で、京香ちゃんが、そっと笑ってくれた。
 少し力のない笑みだったが、結愛にはそれで充分だった。
 結愛は唇を噛み締める。
 正体の一端はつかめたような気がする。どうしようもなく大きな存在だと思う。
 勝てないだろう。私は弱い。いいところなんてほとんどない。わかってる。
 でも、戦う。
 戦い続けるかぎりは、負けはない。
 空を見上げる。
 今年は雪が降らないと思っていた。けれど、白い花のような雪が結愛の額に降りてきて、そっと消えた。
 唇を噛みしめる。笑わないように。痛みを忘れないように。
 結愛は、空に向かって心で吠えた。
 私と京香ちゃんを、“私たち”をなめるなよ。
 くそったれ。



 た、た、か、え。
 ま、け、る、な。

 了


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おまけの掌編