エッセイ「黄色い包み紙」
最近のカフェなんかにいくとね、どうにも納得のいかないオムライスに出くわすことが多いんだよ。チキンの入っていないあっさりしたケチャップライスの上に、半熟でトロトロの黄色い塊がどっかと乗っかっていてね、ナイフを入れるとダラリと真ん中から崩れ落ちるようなあれだ。
世間じゃあんなものが持て囃されているみたいだけどね、私に言わせればあんなものはオムライスじゃないよ。ただの「オムレツ乗せケチャップご飯」ですよ。
本当のオムライスというのはね、主役であるチキンライスを、しっかりと一枚の玉子が隙間なく包み込んでいてこそ、初めて完成するものなんだよ。
具材だって妥協しちゃいけないよ。ゴロゴロとした鶏もも肉に、甘みの出た玉ねぎ、それに少しのマッシュルーム。それらをフライパンで炒めてね、コクのあるケチャップで米の一粒一粒までしっかりと炒め上げた、濃厚なチキンライスじゃなきゃダメなんだ。
それをね、フライパンで手早く焼いた薄焼きの玉子の上に滑り込ませ、トントンと手元を返しながら綺麗にくるりと包み込む。皿に盛られたその姿はね、まるで黄色い包み紙に包まれた大切な贈り物のようじゃないか。
運ばれてきても、いきなりスプーンを刺すなんてことは、ご法度ですよ。玉子に無造作にかけられたケチャップをスプーンの背で伸ばして準備をする。
それでね、端からスプーンを入れれば、香ばしい玉子の皮を破って、中からアツアツのチキンライスが湯気と一緒に顔を出すんだ。上に塗られた真っ赤なケチャップの酸味と、しっかり火の通った玉子の香ばしさ。それとね、濃厚なチキンライスに入ったチキンのゴロゴロ感に、全体の旨味が口の中でひとつに合わさる。この一体感こそが、洋食屋が長年守ってきた伝統の味というものですよ。
まあ、実際にはそんな悠長なことを考えることなんかありはしないけどね、一気に平らげてしまう頃には、お腹も心もすっかり満たされているわけだ。
トロトロの玉子で甘やかされた若者には怒られてしまうかもしれないけれどね。スプーンで綺麗に包みを破りながら食べるあのささやかな高揚感だけは、いくら時代が変わろうとも譲れない私の小さなこだわりなんですよ。
了
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