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エッセイ「若者と偽のナポリタン」

 若い人がナポリタンを食べて「懐かしい味」と評するのを見ていて、あなたの若い頃はナポリタンなんて食べなかったでしょう、と思うことがあった。しかし、言いたいことは分かる。記憶というよりイメージを評しているだけで、それは私の世代が高度経済成長期のエネルギーに満ちた時代へノスタルジーを感じるようなものではないか。

​ どちらも先人から「あの時代は良かったのだよ」と教え聞かされた刷り込みによって、そう思わされているのかもしれないね。

​ しかし、ナポリタンが世代を超えて「懐かしい」と思わせるのにはケチャップの存在が大きい。ケチャップの味というのは、どこか「原風景」に近いものがあるんだ。

​ 若い人にとっての「懐かしさ」は、自分が生きてきた時間軸の記憶というよりは、子供の頃に食べた安心感のある味の延長線上にあるのかもしれない。ケチャップの甘みと酸味は、味覚が未発達な子供でも分かりやすく美味しいと感じるものだしね。

​ オムライスやチキンライスが今でも人気なのは、まさにその「ケチャップはご馳走の味」という刷り込みが大人になっても残っているからなんだよ。

​ その証拠に、彼らが懐かしいと口に運ぶ今のナポリタンは、私の世代が頬張っていた本物のナポリタンではない。

​ 今のスパゲッティというのは麺が細くて、茹で加減も少し硬いアルデンテが喜ばれるでしょう。でもね、本物のナポリタンの麺は2mm以上の太麺を規定の時間より2分長く茹でる。これにサラダ油をまぶして混ぜたら、冷蔵庫で一晩寝かせないといけない。

​ このもっちりした麺をフライパンで少し焦げ目がつくくらいしっかり炒めると、香ばしさが加わってより美味しくなるんです。今のナポリタンは「炒め物」だけれど、昔のナポリタンは「焼き麺」だったんだ。ここまで違えば「懐かしい味」の意味が違うことも分かるでしょう。

​ しかし、そんな本物のナポリタンを食べさせる店もなくなったなあ。自分でこしらえることも出来るけど、ナポリタンは喫茶店で食べるから美味いんだよ。

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山下静希 自分の記事の価値を知りたいと思っています。 いただいたチップで一杯の美味しいコーヒーを飲ませていただきますので、応援よろしくお願いします。