分かり合えなくてもよかった/わたしが本当に欲しかったのは会話でも対話でもなく、自分自身とのつながり
ずっと誰かと分かり合うことを求めてきた人生だった。
分かり合いたい。心が通じ合いたい。
幼いころから心が通じ合わない環境で生きてきたネイティブカサンドラのわたしにとって、それはもう渇望と呼ばれるほどの強い欲求だった。
幼少期は母と心が通じ合わなかった。
大人になって結婚した人ともやはり心が通じ合わなかった。
わたしは誰かにわたしの気持ちを分かって欲しかった。
どんなわたしにも寄り添ってくれて受け入れてくれて心底理解し合える最愛の人が欲しかった。
いつか、ここではないどこかに、わたしの気持ちを理解してくれる人がいるのだと信じていた。
その人をずっと探してきた。
次こそはきっと出会えるはずだと・・・・。
でもそんな人はいなかったんだよね。
わたしの気持ちを完璧に理解してくれる人なんてこの世界のどこにもいなかった。
当たり前だよね。
だって他人同士だもの。
どれだけ言葉を尽くしたってすべてを完璧に理解し合えることなんてない。
わたしがずっと求めてきたものは、共依存の世界にだけ存在する幻のようなものだった。
わたしが育った共依存家庭では、他人の気持ちは察して行動するのが当たり前だった。他人の気持ちは努力すれば必ず分かるもので、他人の機嫌を損ねてしまったら、それは機嫌を損ねた本人の責任ではなく、周りの人のせいだとされた。他人を喜ばせられるように、自分を犠牲にして他人を優先しなければならなかった。
その世界の中では恋人や夫婦、家族は言葉で気持ちを伝える努力をしなくても相手の気持ちを察することが必要とされ、なんの努力もなく心が通じ合っているのが当たり前で、そうできないのは察する側の努力不足だとされた。
そんな世界の中でわたしはずっと、わたしを完璧に理解してくれて心の底から分かり合える他人が必要だと思ってきたし、どこかにいるその人を一心に求め続けてきた。
でもそんなものは存在しなかったし、そもそも必要じゃなかったんだ。
わたしが本当にほしかったもの。
それは自分自身とのつながりだったんだよね。
自分の内側の声に耳を澄ませて、自分の本当の声を聴いて、自分の気持ちにどこまでも寄り添ってあげる。どんな自分も決して否定することなく、なにがあっても絶対に自分だけは自分の味方になってあげる。
自分に対する唯一無二の絶大な信頼感がほしかったんだ。
他人に求めていたものは、本当は自分が自分にしてほしいことだった。
自分が自分のいちばんの味方になって、自分が自分に寄り添えるようになって、自分の内側としっかりと繋がるようになったら、他人に分かってもらいたいという渇望はいつの間にか消えていた。
自分がきちんと自分の気持ちを理解してあげてさえいれば、他人に分かってもらう必要はなくなった。
「心底分かり合える」「運命的に繋がり合ってる」みたいな奇跡体験も求めなくなった。
ずっとわたしが求めてきた「わたしを完璧に理解してくれて心の底から分かり合える人」は必要じゃなくなったんだ。
そんなふうにわたしがわたしに寄り添って、どんなわたしにも共感できるようになってくると、不思議と他人にも共感できるようになってきた。
例え意見が違っていても、感じ方が違っていても、心が通じ合わなくても、他人の違いをそのまま受け入れられるようになってきた。
無理に同じにしなくていい。
違っていい。
分からなくていい。
相手の「違い」を「違い」のままで、「分からなさ」を「分からなさ」のままで楽しめるようになった。
無理に一緒になろうとするから、否定が生まれる。相手を変えようとしてしまう。心が通じ合わないと悲しくなる。
無理して意見を一致させたり、相手のために我慢したり、一生けんめい話し合いを重ねて同じになろうと努力する関係よりも、違う個性を持った人間が、お互い素の自分のままで一緒にいられる。「わからない」を「わからない」ままで置いておける関係。「わからない」を楽しめる関係。
そういう関係が、心地よく感じられるようになってきた。
わたしと心底心が通じ合って、わたしのことを完璧に理解してくれるただ一人の相手なんてこの世にいない。
むしろいなくていい。
一緒にいる相手は奇跡の相手じゃなくていい。
わからなくても通じ合わなくても、お互いが心地よく過ごせる関係。
それぞれが自分の内側としっかり繋がっていて、それぞれの人生を楽しんでいて、それでも一緒にいられる人と一緒にいたい。
わたしが本当にほしかったもの、それは
会話でも対話でもなく、自分自身とのつながりだった
という話。
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