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「自律分散」は理想論じゃなかった。大刀洗町で出会った景色の話




1社に縛られて働くことへの、ずっとある違和感

2025年からフリーランスになって、複数の組織と同時にプロジェクトで関わる働き方を続けている。

企業の営業やマーケティング支援、DX推進、そして自治体のアドバイザー。バックボーンもまったく違う人たちと、期限のあるプロジェクトを一緒に動かす。

「なんで1社に所属しないんですか?」と聞かれることがある。

答えはシンプルで、今の時代に合っていないと思うからだ。

1つの組織に全部を委ねる働き方は、ある意味で中央集権的だ。情報も、判断も、キャリアも、1つの軸に集約されていく。それは安定に見えるけど、個人の自律性を少しずつ削っていく構造でもある。

管理される社会、コントロールされるキャリア。そういう方向に流れていくことへの懸念が、ずっとある。

よく自分が働く会社のやり方や進む方向に文句を言いながらも従いながら働いている人がいるけど、単純にあれが自分には無理なんだろう。

だから私は、プロジェクト型で動く。様々なバックボーンを持つ人たちが、目的のために一時的に集まり、それぞれの専門性を持ち寄る。終わったら解散して、また別のプロジェクトで誰かと出会う。そういう自律分散的な働き方の方が、今の、そしてこれからの時代に合っていると思っている。

そう考える一方で正直、「それって理想論でしょ」というのも、頭のどこかにあった。
でも、決して理想論ではないということを、福岡県の小さな町との仕事から紹介しようと思う。


実務に関してはこちらに詳しく書いています。




ヒョウ柄の公務員と、10年越しのまちづくり効果検証

大刀洗町(たちあらいまち)。福岡県の中南部に位置する、人口約1万6千人の町。
ここの地域振興課に、村田まみさんという公務員がいた。(現在は人事交流でうきは市へ)
19歳で入庁して以来、ずっとこの町で働いてきた人。地域ブランディング、観光、ふるさと納税、DX——気がついたら担当業務が増え続けて、課員14人でそれを回している。返事は「イエス」「はい」「頑張ります!」の3種類、というのが彼女の自己紹介だ。

そして彼女には、ひとつのトレードマークがある。ヒョウ柄だ。
服も、名刺も、小物も。春夏秋冬すべてヒョウ柄のバリエーションがあるらしい。なぜかといえば、SNSでまちのPRを始めた時に「自分がシンボルになろう」と決めたから。個人がメディアになる、という発想を2012年に実践していた人だ。

最初は炎上もしたらしい。「公務員が何をやってるんだ」と役場にクレームが来たそうだ。でも同僚が、上司が、地域の人が守ってくれた。そしてその町は2023年には「街の幸福度ランキング」九州ナンバーワンになり、人口は過去最高を更新し続けている。

私がアドバイザーとして関わることになったのは、2025年11月のことだった。
テーマは地域ブランディング事業の効果測定。約10年間続けてきた施策の成果を、数字で可視化したい。議会にも、町民にも、根拠を持って説明できる状態を作りたい!という依頼だった。

週1回のオンラインMTGでの伴走。フルリモート、月4時間という関わり方で、現状ある定量データの洗い出し、足りない部分に関してアンケートを作成し分析をおこない、次年度からのKPI設計とマニュアル整備まで一緒に進めていった。




数字を作る仕事と、現場を見ること

分析アドバイザーとしての仕事は、データと向き合う作業が中心だ。

これまで大刀洗町がやってきたことをキャッチアップしながら、それらの定量データの有無を確認して、手元にあるデータを可視化できるようにまとめていく。

それでもデータが足りない。肌感覚的に効果があると感じる、確かな手応えのある部分に関してのデータが圧倒的に足りない。だから、アンケートを集めることにした。大刀洗町のブランディング事業がこれまでやってきたことを定量的に誰もが一目見てわかるように伝えられるように項目をイチから設計し、12月末に広く回答を呼びかけた。

結果1,288名から回答をいただいた。その回収したアンケートを分析し、町への「関心」「行動」「愛着」を3つのスコアで可視化する。KPIを設計し、属人化しない運用体制を設計する。月次レビューをどう回すか、誰が何をアウトプットするかを整理する。

それはそれで手応えのある仕事だった。でも画面の中の数字は、どこまでいっても抽象的だ。

そう感じていたタイミングで、ちょうど大刀洗町のブランディング事業のひとつである「レタスフェスタ」が開かれると聞いた。2026年3月1日。現地に行ってみようと思った。




3月1日、大刀洗公園で見た景色

正直に言うと、会場に着いた瞬間、驚いた。
こんな田舎のイベントに、こんなに人が集まっているのか、と。

約2,500人。飲食ブースは賑わっていて、ステージでは演奏や歌が聞こえてきて、シャボン玉のパフォーマンスで人だかりができていた。
でも、一番印象に残ったのはそういうことじゃなかった。

公園の芝生で、子どもたちが走り回っていた。

お父さんやお母さんと一緒に来て、笑顔ではしゃいで、シャボン玉を追いかけて、また走って。それだけのことなんだけど、その景色がすごく良かった。

子どもが楽しそうにしているって、未来が明るくなる気がする。

人がたくさん集まって、笑っている。それだけで、なんか幸せだなと思う。
村田さんをはじめ、地域振興課のみなさんとも現地でお会いした。みなさんとても温かく歓迎してくれた。普段はオンラインの画面越しにしか話していない人たちと実際に会うということはとても大切なことだと思う。熱量、温度みたいなものはオンラインでは感じ取るのに限界があるからだ。

そしてふと思った。
私がここ数ヶ月、画面の中で設計していたKPIや指標。その先にあるのが、この景色なんだと。




「自律分散」はすでに始まっている

村田まみさんは、19歳からずっと大刀洗町に「コンパスの針が刺さっている」人だ。

一方で私は、複数の組織をプロジェクトで横断しながら動く人間だ。
一見、真逆に見えるかもしれない。でも実は、同じ方向を向いていると思っている。

彼女がやってきたのは、行政という組織の中にいながら、住民と、民間と、外の人たちと、対話しながらまちを動かすことだった。「スナックまみ」を開いて、起業した人や移住してきた人が知り合う場を作る。居酒屋の店主たちを焼酎蔵に連れて行って、ご当地ハイボールを生み出す。組織のヒエラルキーじゃなく、プロジェクトとつながりで動く。

それはまさに、自律分散の実践だ。

大きな組織に全部を任せるんじゃなく、目的のためにいろんな人が関わり、それぞれの強みを持ち寄る。外から来た私のような人間が、ちょっとだけ何かを加えて、また次に向かう。

「自律分散って理想論でしょ」という声が、頭のどこかにあった。

でもこの町で、約2,500人が芝生に集まっていた。子どもたちが走り回っていた。10年かけてコツコツ積み上げてきたブランディングが、確かに「人が来る場所」を作っていた。

それは理想論じゃなく、現実だった。




これからも、プロジェクトをまたいで動く

大刀洗町の仕事は3月末で一区切りがついた。

今は行政へのアドバイザー業務は別の自治体で似たような「データを政策に活かす」テーマで関わっていて、行政以外でも中小企業やスポーツチームといったその地域を盛り上げようとするプロジェクトに関わっている。

1つの組織に縛られず、プロジェクトをまたいで動くことで見えてくるものがある。違う文脈を持ち込むことで生まれる化学反応がある。

そういう働き方を、これからも続けていきたいと思っている。

自律分散は、理想論じゃない。もうすでに、始まっている。




大刀洗町でのアンケート分析について、レポートが大刀洗町公式ホームページで公開されているのでよかったら御覧ください!
https://www.town.tachiarai.fukuoka.jp/kiji0032042/index.html

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