【本日のお品書き】甘酢らっきょタルタルチキン|「ごめんなさい」は終戦条約じゃなかった
今日もお疲れ様。おいちゃんです。
夜、シンクの汚れをスポンジでこすりながら、ふと今日一日の出来事を反芻していた。
3歳の息子。
彼はいま、人生最大の「イヤイヤ期」という荒波の中にいるけれど、その「叱られた時のリアクション」の歴史を紐解くと
そこには驚くべき生存戦略の進化が見て取れるんだ。
これは単なるワガママじゃない。
一人の人間が、理不尽な巨神(パパ)に対抗するために編み出した
知恵と勇気の物語だ。
第1シーズン:【無の境地・遮断期】
言葉が通じ始めた頃。彼は叱られると「五感を閉鎖する」という荒技に出た。 パパが「ダメでしょ!」と言った瞬間、彼はスッと虚空を見つめ、聞こえないふりをする。 なんなら、楽しそうに鼻歌さえ歌い出す。
「メンタルが強すぎるだろ…」と呆れたけれど、あれは彼なりの防御壁だったんだな。
第2シーズン:【大洪水・物理攻撃期】
「無視じゃ逃げられない」と悟った彼が選んだ次は、「涙ですべてを流す」こと。 理屈じゃない。とにかくデカイ声で泣く。床に転がり、重力を味方につけて暴れる。 「可哀想な僕」を演出し、パパの良心に直接ダメージを与える、力技の時代だった。
第3シーズン:【迷探偵・シラ切り期】
言葉を覚えた彼が手にした武器は、「バレバレの嘘」。
口の周りをチョコレートでベタベタにしながら、「たべてないよ?」と真顔で言う。
おもちゃが散乱している中心で、「勝手に落ちたの」と言い張る。 証拠は揃っているのに無罪を主張するその姿は、三流のサスペンスドラマを見ているようだった。
第4シーズン:【屁理屈期】
知能が上がり、彼は「責任転嫁」という魔法を覚えた。
「片付けなさい」と言えば、「いま、やろうとおもってたのに、パパがいったからやる気なくなった!」と逆ギレ。
「お姉ちゃんを叩かない!」と言えば、「手が勝手に当たっただけ。」と、自分の肉体を別物として扱う。
5歳のお姉ちゃんもこれには呆れ顔。
パパの血圧が上がり始めたのはこの頃だ。
第5シーズン:【あざと男子期】
これが一番厄介だった。叱られそうになった瞬間、彼は戦術を変える。
潤んだ瞳で上目遣いをし、「パパ、だいすき♡」と言って抱きついてくるのだ。 怒りの矛先を強制的に「愛」で溶かす、卑怯かつ最強の必殺技。
何度この技に騙され、怒るタイミングを見失ったことか。彼は完全にこちらの弱点を握っていた。
第6シーズン:【覚醒・自省期(現在)】
そして今日。ついに新シーズンが幕を開けた。 イタズラをして、僕が目を合わせた瞬間。彼は泣くでも、嘘をつくでも、抱きつくでもなく、小さな声でこう言ったんだ。
「……ごめんなさい。もうしません。」
時が止まったかと思った。 それは、彼が「自分の非」を認め、「他者の感情」を想像し、勇気を持って「謝罪」を選んだ瞬間だった。
今まで散々、ふざけ倒してきた彼が、急に「人間」としての顔を見せたんだ。
嬉しかった。「ああ、これでやっと言葉が通じる」と感動さえした。
……でもね。 その感動は、たった3分しか持たなかった。
目を離した隙に、リビングから「ガシャン!ドカッ!」と不穏な音が響いた。 慌てて振り返ると、そこには信じられない光景が。
お姉ちゃんが「絶対に触っちゃダメ!一番大事なんだから!」と言い聞かせて並べていた大切なお人形たちを、彼が満面の笑みで宙に放り投げていたんだ。
宙を舞う青緑色の物体。
床に転がる、つぶらな瞳の半魚人。
そう、お姉ちゃんが愛してやまないサンリオの「ハンギョドン」だ。
あの哀愁漂うとぼけた顔が、さらに哀愁を帯びて床に転がっている。
「もうしません」の舌の根も乾かぬうちに、彼は姉の大事なナワバリを荒らしていた。
僕と目が合うと、彼は悪びれもせず「シーズン1(無視)」の顔に戻っていた。
そうか。終わらないんだ。
「ごめんなさい」はゴールじゃない。ただの「休憩タイム」だったんだ。
息子との戦いは、まだまだ終わらない。
そんな長期戦を生き抜くには、こちらもスタミナをつけなきゃいけない。
今日の「だれやめ」メニュー
感動して、裏切られて、また笑って。 そんなジェットコースターみたいな感情を支えるのは、「甘酢らっきょタルタルチキン」。
子供じみた甘さ(タルタル)の中に、大人の酸味(らっきょう)が潜んでいる。 それはまるで、一筋縄ではいかない息子そのものだ。 だしまろ酢の優しさで鶏肉を包み込み、らっきょうの「ポリッ」とした食感で、明日への闘志を燃やす。
さあ、第7ラウンドのゴングが鳴る前に、腹ごしらえといこうか。

作り方
【材料】(2〜3人分)
鶏もも肉:1枚(300g)
何度裏切られても受け止める、パパの包容力(脂身)。
塩・こしょう:少々
薄力粉:適量
だしまろ酢:大さじ3
カオスな育児を丸く収める魔法の水。
サラダ油:小さじ1
[懲りない男のらっきょタルタル]
桃屋の花らっきょう:8粒くらい
多めがいい。人生には刺激が必要だ。粗みじん切りで。
マヨネーズ:大さじ3
花らっきょうの漬け汁:小さじ2
この汁が味の決め手。捨てないで。
味の素:2振り
理屈抜きの旨味。
塩・こしょう:少々
パセリ:あれば
【手順】
対話(下準備) 鶏肉の厚みを均一にし、塩こしょうで下味をつける。 薄力粉をまぶす時は、息子の頭を撫でるように優しく、丁寧に。 (「次は騙されないぞ」と念じながら)
摩擦(焼く) フライパンに油を熱し、皮面から中火で焼く。 ジューッという音は、日々の親子のぶつかり合いの音だ。皮がパリッとするまで我慢して触らない。裏返して中まで火を通す。
和解(味付け) 余分な油を軽く拭き取り、だしまろ酢を入れる。 一気に立ち上る酸味を含んだ湯気。タレにとろみがつき、肉全体が艶やかに輝くまで煮絡める。 (この照りが出た瞬間だけは、平和が訪れる気がする)
複雑性(ソース作り) 刻んだらっきょう、マヨネーズ、漬け汁たちを混ぜ合わせる。 白くて甘いマヨネーズの中に、ゴツゴツとしたらっきょうが混ざる。 滑らかさと異物感の共存。これが今の我が家の現状だ。
ゴング(盛り付け) 皿に盛ったチキンに、タルタルをどっさりとかける。 カロリーを摂取して、明日の戦いに備えよう。
実食
チキンのジューシーな脂、だしまろ酢の角の取れた酸味。 そこに、らっきょうの「シャキシャキ」という小気味良いリズムが重なる。 噛むたびに味が変化して、飲み込むのが惜しいくらいだ。
「ごめんなさい」が言えた君へ。 そして、その3分後に姉の大事なハンギョドンを宙に放り投げた君へ。
やっぱり君には勝てないや。 でも、このチキンを食べたら、また明日も全力で叱って、全力で遊んでやろうと思う。
今日も1日、おやっとさぁ。
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