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漫画家アシスタント物語  第8章 〈21〉 「ダメ~ッ、あんたは破産!」

 
《 写真上: 利用したカードローン、毎月送られる利用明細書の山、実物 》
               < この8章〈21〉は、文庫本約8ページ分 >


「第8章」は、独立した「章」ですので、「第7章」の続きではありません。
「第8章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
 

さて‥‥ ここで‥‥‥‥
「漫画家アシスタント物語」のマガジンを購読してくれた方を紹介させてください。  肉森さん ‥‥‥‥‥‥ ありがとうございました!

今回は、肉森さんの人気記事の中から、私の勝手な好みでこの作品を‥‥

 
 
 
 
               その41  
  
     《 漫画家アシスタントが・・・いよいよ自己破産!? 》
 
 
池袋の人混みと喧騒の中で、まともに前を向いて歩けない‥‥

明るい午後の日差しと交差点を渡る人々のまぶしさが恐ろしいほどに冷たく感じる‥‥

きっと、警察に逮捕されたり、刑務所に護送される時の心境は、こんなものなんじゃないか‥‥‥‥

そんな気持ちで弁護士事務所を訪ねました‥‥

古い雑居ビルの4階にある事務所は、壁や廊下が掃除されていない様な‥‥ 陰気でジメジメした感じでした。

「 下利弁護士事務所 」( ※参照 )

ネズミ色のドアをノックして中に入ると10畳ほどの広さに机や本棚がビッシリと置かれ、弁護士の事務所というより‥‥ 洪水に襲われた村役場と言った方がよいほどの雑然ぶりです。

ビクビクしながら、私は押し出すような声で‥‥
 
「 あの‥‥ 先ほど電話した小池ですが‥‥ 」
「 ああ、小池さん、こっちこっち! 」
‥‥と、一番奥のデスクにいる下利弁護士が私を招きます。

大柄な体格は、ラガーマンを想像させるのですが、愛想の良いニコニコとした低姿勢は、まるで運動不足の売れない芸人風。

無精ヒゲが、弁護士としての威厳よりも安っぽさを醸し出し‥‥‥‥

「 え~と‥‥ パロミスとみみず銀行、ニコロスカード( ※参照 )‥‥と全部で6社、合計が500万‥‥ 」資料を読み上げる下痢弁護士。
「 あ‥‥ あのぉ‥‥ 」

私は、前日にメールで「 借金リスト 」から記し漏らしていた金融会社を告げました‥‥

「 実は、チビットからも50万ありまして‥‥‥‥ 」
「 え~~~っ!? 」

下利弁護士は、上体をそらす様にして‥‥
「 ダメだな、そりゃ‥‥ 破産だぁ‥‥ 」

キッパリと大きな声で‥‥ もう一度!
「 破産~~ンッ! 」

愕然としつつも‥‥ 私は、内心‥‥

『 無理もないよなぁ‥‥ 借金が多過ぎる‥‥ 』

書類の束をテキパキとまとめながら、助手を指差して

「 あっちで、正式な書類を作りますから、資料( 借金の契約書や支払いレシートなど )を全て出して下さい‥‥ 」

私は、弁護士助手の青年の前に座り、借金に関する資料を出して、一つ一つ確認しながら書類を作っていきました。

この弁護士助手というのが、覚醒剤で問題を起こしたタレント田代某氏によく似た30男で、小汚いチョビ髭面で私を軽蔑した様に見下しながら、借金の細部を調べるわけです。

助手はボサボサ頭をかきながら‥‥ あごを上げて、小馬鹿にしたように‥‥「 チー・スイ・ビー( ※参照 )の今月の明細書ですね‥‥? 」
「はい‥‥」

明細書には、お店で使う多くの備品代金やカミさんと旅行した時の費用など、結構高額になっていました。

この田代某氏に似た助手は、完全に多重債務者や破産者をバカにしたような‥‥負け組への嫌悪感を隠そうともしない横柄な態度で明細書をつまみながら‥‥

「 やけに沢山あるなぁ‥‥ 買い過ぎだよ! 」
「 はぁ 」(確かに買い過ぎだけど)
小汚い田代某氏似の助手の態度を我慢しつつ‥‥

「 旅行に? デパートにぃ? ‥‥ちょっと贅沢なんじゃないのぉ? 」
「 は‥‥ はぁ‥‥ 」
「 こんな無駄使いしちゃダメですよぉ! 」

私よりも20歳位若い、この(本当に小汚い)チョビ髭助手に‥‥ 完全にバカにされた様に説教されつつ‥‥

それでも、私は弁明に努め‥‥

「 この買い物は、お店( ※参照 )の備品で‥‥ 」
「 お店ぇ? 」
「 はぁ‥‥ はい 」
「 あんたお店やってンの? ‥‥会社? ‥‥事業者なの? 」
「 はぁ‥‥ 」
「 ダメだよ! 破産できないよ! 」
「 ‥‥!? 」
私は、何か間違いを犯したのかと緊張する‥‥‥‥

「 事業者の破産は簡単じゃないんだよ、管財人も必要になるし! 」
「 ‥‥??? 」
私の頭は‥‥一瞬で真っ白!

『 ど‥‥ ど‥‥ ど~すりゃイイの? 』

 

 


池袋のグリーン大通りの交差点。弁護士事務所を出て、6月の明るい日差しの中をこの交差点を背にしながら私は池袋駅に向かいました。まるで幽霊の様な有様だったと思います‥‥2011年撮影

 
               その42  
  
   《 漫画家アシスタントが・・・弁護士に励まされる!? 》
 
 
チョビ髭の弁護士助手が困った表情で下利弁護士を振り返ると‥‥
 
「 会社やってるんじゃ~破産は難しいな~ 」
 
私は最初の目的であった「 任意整理 」( ※参照 )に話を戻す事にしました‥‥ というか‥‥ もうそれ以外に方法が見つからず‥‥‥‥
 
「 と‥‥ 取りあえず‥‥ パロミス( ※参照 )を整理してから‥‥‥‥ 」

長期間の借り入れ契約のあるパロミスなら、借金額を相当に減額できるかもしれない‥‥ その結果でどうするか考えても遅くはない‥‥
 
‥‥そう考えた私は、破産ではなく「 整理 」をして利息の過払いがどれ位あるのかを確認したいと下利弁護士に話しました。

「 分かりました 」
 
下利弁護士は、なんだかスッキリした様に明るく‥‥
 
「 まず、高利のパロミスから吹っ飛ばしますかっ! 」( 弁護士の頼もしい一言 )
 
元気よくそう宣言すると、さっそく、助手に先ほどまで作らせていた破産のための書類を破棄して、パロミス一社への整理手続きに入りました。
 
これからは、とても簡単に話が進み‥‥

「 では、後はパロミスから入出金のデータを出させて、そこから利息の引き直しをしますから‥‥ 」

つまり、25%~36%という高金利を20%の金利に引き直して計算をし直します。その結果は数日中に出るわけです。

「 ンじゃ~後は連絡を待っていて下さい! 」

そう、落ち込みと疲労で青くなっている私を励ます様に下利弁護士は笑顔を見せます。

「 よろしくお願いします‥‥」

元気のない私は、軽そうな下利弁護士の笑顔と励ましのお陰でさらに複雑な心境になっていましたが‥‥

次の一言‥‥‥‥ この軽い弁護士の次の一言で「助けられた」気持ちになりました‥‥‥‥

「 小池さん、何も考えないで‥‥‥‥ 仕事の事だけ考えて下さい! 」

挫折と敗北感‥‥ みじめな後ろめたさ‥‥ 悶々もんもんとしてしまう気分を、救ってくれる言葉でした。

この弁護士事務所へ来る時には、前科を背負った犯罪者か指名手配犯の心境だったのに‥‥ 今は、肩の荷が下りた様な‥‥ 少しだけ落ち着いた気分で‥‥ 6月の午後の日差しの下を歩いていました。
 
下利弁護士が言った通り‥‥ 私が不安と絶望に沈んでいても何も始まらないのだ‥‥‥‥
 
さっきと同じ、遠くに聞こえる‥‥
 
 ♪ビ~~~ク、ビック、ビック、ビックカメ‥‥‥‥♪

‥‥でも、今は‥‥‥‥ 少し違って聞こえる‥‥‥‥

『 前を向いて歩いて行こう‥‥! 』

追い風を受ける様に私は地獄ではなく、いつもの池袋駅に向かって歩いていました‥‥‥‥


 

 

        「 漫画家アシスタント物語 第8章〈22〉」へつづく・・・・

                    「第8章〈20〉」へもどる‥‥

                    「もくじ」 へ‥‥

 



 ~~~ 参照 ・第8章〈21〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)
 

 【その41】
・下利弁護士事務所 : 仮名、場所や時期など、細部を脚色しています。
・ニコロスカード : 大手信販会社。カードローンを利用してました。
・チー・スイ・ビー : 大手の信販会社。カードローンはもちろん、普段の買い物などでもこのカードを多用しました。
・チビット : テレビの竹中某のコマーシャルで有名な某ローン会社。
・お店 : 私が池袋北口に開いたタイ式マッサージ店(04~09年)。 (風俗店ではありませんが、盛り場辺りには、怪しげなマッサージ店が多く‥‥)
 【その42】
・任意整理 : 借金利息分を棒引きにしてもらって、元本のみを分割返済したり、利息の引き直し計算(高金利を利息制限法に基づいて計算し直す)をして元本を減らしたり、過払い利息を返還させたりする。
 
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