漫画家アシスタント物語 第8章 〈12〉 危険なライバルのトップ争い
《 写真上: 東京の板橋にある古いマンション。画面中央の上から2つ目の部屋が私の部屋です。2DKの賃貸物件、洗面所は上から水が漏れてきます。》
< この8章〈12〉は、文庫本約10ページ分 >
「第8章」は、独立した「章」ですので、「第7章」の続きではありません。
「第8章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!
ただし‥‥
はじめての方は、「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
さて‥‥ ここで‥‥‥‥
「漫画家アシスタント物語」を購読してくれた方を紹介させてください。
Flyingcatさん ‥‥‥‥‥‥ ありがとうございました!
その23
《 漫画家アシスタントが・・・女の嘘に困惑する! 》
水商売や接客業などでの女性の言葉に「 真実 」など存在しない事は、よく分かっているつもりでも‥‥ つい、信じてしまうものです。
遊び慣れた人なら‥‥ 信じたふりをして楽しむ方法を知っているのですが‥‥ 遊び慣れないと、ついつい大火傷を負う事になったりします。
彼女たちのよくある「 嘘 」で‥‥
「 私、付き合っている人いないの‥‥ 」
とか‥‥
「 結婚なんかしてないよ~! 」
‥‥などという「 嘘 」があります。 しかし‥‥ 極たまに‥‥
「 私‥‥ 亭主がいるのよ‥‥ 」
なんて言う女の人がいますが、これも「 嘘 」です。 ホントは‥‥
「 私‥‥ 亭主と愛人とボーイフレンド以外にミツグ君やパシリ君もいるのよ! 」
‥‥というのが「 事実 」でしょう。
「 亭主がいるのよ 」と言えば、お人好しの男性諸氏は「 亭主 」の背後にいる有象無象( お花畑の住人達 )を想像しないものの様です。
私が代表を務めたお店のマッサージ師さんたちもそのほとんどが日本人の配偶者がいました。 ‥‥しかし‥‥ お客さんには「 独身 」という事で通していたわけです‥‥‥‥
ご存知の方もあるかと思いますが‥‥
よく、タイマッサージ店の受付などにマッサージ師さんの写真入り「 技術習得証明書 」( ※参照 )が額に飾ってあったりします。
お客さんからの信用を得るためにも良い事だと思うのですが‥‥ ほとんどのマッサージ師さんは、その提示を嫌がります。
それは、「 証明書 」に記載されている名前に配偶者の姓名「 YAMADA 」とか「 SUZUKI 」とか出ていると結婚している事がバレてしまうからなのです。
「 信用 」よりも「 独身 」を売りにしたいのでしょう。
ですから毎日の様に、40歳を越えたマッサージ師さん( 日本人と結婚している )がお客さんと‥‥
「 おネエさんは、結婚してるんですか‥‥? 」
「 まだ結婚してないデス‥‥ 学生なんデス~ 」
なんて事を言いつつ‥‥ お客さんの背中をマッサージしながら舌をペロッと出しているのです。
さて‥‥
お店に務めるマッサージ師さんは、常時4人~5人が勤務‥‥ お互いにより多くの指名を取りたがる‥‥ ライバル関係にありました。この女性同士のライバル心というものは仕事に励む原動力になるのですが‥‥
同時に、危険な火薬の様なものでもありました‥‥( 以下の話は、登場人物のプライバシーを侵害しない様に、若干、脚色されています )
お店がオープンして3年( 2007年頃 )‥‥ 経営も軌道にのって赤字になる事もなく、安定していた頃のことですが‥‥‥‥
お店にはサニヤさん( 仮名、26歳 )という少女の様に可愛い指名ナンバーワンがいました‥‥ そして‥‥ もう一人、そのナンバーワンを争っていたナッツさん( 仮名、35歳 )という年上のグラマーなマッサージ師さんがいたのです‥‥‥‥
ママさん( ※参照 )がよくこの二人について‥‥
「 ライオンとトラが同じ檻の中にいるのと同じ‥‥ 」
‥‥と、心配していたのですが‥‥‥‥
事あるごとに意見が対立したり‥‥ 時には、一言も口をきかなかったり‥‥
スタッフの待機する小部屋は、些細な事が切っ掛けになって‥‥ いつ爆発するか分からない‥‥ そんな緊張感が漂っていました。
マッサージをする個室は、カーテンやつい立で仕切られているだけですので、隣の個室の話し声がたまに聞こえてしまう事がありました‥‥
ある日、グラマーなナッツさんが施術をしている隣の部屋で幼い表情のサニヤさんがお客さんをマッサージしながら‥‥
「 お客さんは、ナッツさんを指名した事があるんですか‥‥ 」
「 うん。あるよ‥‥ 彼女さぁ‥‥ 結婚してるのかなぁ‥‥? 」
この会話に、ナッツさんが隣の個室で聞き耳をたてます‥‥‥‥
‥‥‥‥そして‥‥‥‥ ナッツさんは激昂して、ママさんの部屋へ飛び込んで来ます‥‥‥‥
「 サニヤが私の事を喋っている! 」
ママさんはナッツさんを落ち着かせる様に静かに事情を問いただします‥‥
「 私の客に私が結婚してる‥‥って言った! 絶対に許さない! 」
この「 結婚していない 」という「 嘘 」は、スタッフの間ではお互いに秘密にする「 仁義 」の様になっていましたから、ナッツさんの訴えが事実ならおだやかではありません‥‥
すぐにサニヤさんを呼んで詰問すると‥‥‥‥
「 言ってナイ! 私、絶対‥‥言ってナイヨッ! 」
結局‥‥ 「 言った 」「 言わない 」の応酬‥‥ どちらが正しいのか判断できずにいました‥‥
それにしても、お互いに秘密を守る事が「 仁義 」になっているのは熟知しているはずなに‥‥‥‥ なぜ、こんな事が起きたのか‥‥‥‥ サッパリ分かりませんでした‥‥
その日、ナッツさんは怒りを露わにしたまま‥‥ 終業時間前に身支度をはじめ‥‥
「 もう辞める! 」
‥‥そう言って‥‥ 二度と戻りませんでした‥‥‥‥

その24
《 漫画家アシスタントが・・・指名№1をかばうが! 》
どうしてなのか‥‥ その理由は、分かりませんが‥‥ 水商売などでは、女の子( コンパニオン、フロアレディ、セラピスト‥‥ )の手取り分とお店の取り分とは五分五分の場合が多い様です。
お店の女性一人が売り上げる金額の半分が本人の手取り給料という事になるわけです。
つまり、お店の粗利益は、女性従業員の数に比例して大きくなります。さらに、一人で数人分の売上げを稼ぎ出す「 №1 」はお店にとっては事実上の生命線とも言える重要な存在になります。
私が代表を務めるお店にとっての最大の危機は、お客さんのトラブルや不況による減収ではなく‥‥ この「 生命線 」とも言えるマッサージ師さんたちのトラブルでした。
これは、前回も紹介した‥‥ 少女の様に可愛いサニヤさん( 仮名、26歳、お店の指名№1 )に関わるトラブルです‥‥
以前も書きましたが、常に「 №1 」と「 №2 」は緊張状態にあるのですが、仮にそのどちらかが傷ついて離脱しても、時間が経過するとまた新たに同じ様な問題が持ち上がります‥‥ つまり、キリが無いのです。
年に一回や二回は、こうした問題が発生します。
さて‥‥
事の発端は、私のミスにありました‥‥
お店の開店から4年目‥‥ 2008年の秋‥‥
通常、マッサージ師さん達の接客は、順番が決まっていて、その日その日に順番が入れ替わり、各人の接客量に不公平が無い様に調整されています。
ところが、私がお店番をしたその日‥‥ この順番を間違えてしまうのです‥‥‥‥
お客さんの身体を拭く蒸しタオルの準備に汗をかくほど、その日の夕方から夜にかけて、やたらと忙しく‥‥
来店したお客さんを応接室から個室へ案内した私は、施術を終えて控室に戻ろうとするサニヤさんに‥‥
「 次は‥‥ サニヤさん! 」
「 え? ‥‥私? 」
彼女は少し‥‥ 戸惑った表情‥‥ この瞬間に運命が決まります‥‥
「 はい、サニヤさんですよ 」
彼女は、今来たお客さんが待つ個室へタオルや着替えなどを抱えて小走りで向かいます‥‥
しばらくしてから‥‥
お店では、サニヤさんに次いで指名の多いタウさん( 仮名、32歳、指名№2、姉ご肌の女性 )が昂奮して私のところへやって来ます‥‥
「 社っ長~~ッ! 違うヨ~~ッ! 」
「 ‥‥はぁ‥‥? 」
「 順番~~ッ 違ウッ! サニヤじゃないヨッ! 私ダヨッ! 」
あわててスケジュール表を確認‥‥ 確かに‥‥ 順番を間違えている! しかし、もう施術が始まっている段階でマッサージ師の入れ替えは出来ない‥‥
無理に入れ替えようにも、施術が始まっている以上、それ自体にギャラが発生しているわけです‥‥‥‥「 間違えたから、マッサージを止めて控室に帰って下さい 」とは言えないわけです。
「 ゴメン! 間違えた! 」
‥‥通常なら、社長が頭を下げて謝罪すれば済む話なのですが‥‥ この時は、予想もしない方向へ問題が展開していきました‥‥
「 社長が謝る事ナイッ! 」
「 ‥‥? 」
「 サニヤは、自分の順番じゃない事、知ってるハズ‥‥ それなのに‥‥‥‥! 」
この瞬間から‥‥ お店が戦場になりました‥‥
「 №1 」の孤独というのでしょうか‥‥ あっと言う間に「 サニヤは悪い女 」「 サニヤは汚い 」などと他のマッサージ師さんたちと共にタウさんは口撃を開始します。
それまであった緊張感に目をつぶっていた私もバカだったのですが‥‥ それにしても、このうっかりミスがこれほど重大な結果を生むとは想像もしませんでした‥‥‥‥
マッサージ師さんたちは、サニヤさんに対して、タウさんを中心とした連合軍( タウさん含む4人 )が攻撃を開始します。
その日の夜‥‥ 終業時間が近づいた頃に‥‥
タウさんが一人、私に向かって切り出します‥‥‥‥
「 社長、サニヤとは一緒に仕事なんかデキナイヨッ! サニヤをクビにしてヨッ! 」
サニヤさんが犯罪行為でも犯したならクビにも出来ましょうが‥‥ 何も悪い事はしていない‥‥ そう考えた私は‥‥‥‥
「 サニヤさんは悪くないでしょ‥‥ 」
‥‥私は、何とかタウさんを説得しようとしますが‥‥
「 サニヤと一緒じゃ仕事デキナイッ! 」
私は、それでも‥‥ 小さな声でサニヤさんをかばいつづけますが‥‥ 次の瞬間‥‥
「 社長‥‥ 」
「 ‥‥? 」
「 サニヤひとりで仕事デキナイヨ! 」
鋭い目つきで私をにらみます‥‥‥‥ 私は言葉を失います‥‥‥‥
『 №1を切れるわけね~~だろ! 』
私の目がそう語っていると悟ったタウさんは‥‥
「 フン‥‥ 」
‥‥と、アゴを上げて見下すような視線で私を一瞥‥‥‥‥
その日から連絡を断ってしまいます。
そして一週間後には、サニヤさん以外の全てのマッサージ師さんが居なくなっていたのです‥‥‥‥
「 漫画家アシスタント物語 第8章〈13〉」へつづく・・・・
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~~~ 参照 ・第8章〈12〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)
【その23】
・技術習得証明書 : タイ国には、多くのタイ式マッサージ学校があります。そこでは、3週間~3ヶ月の履修でマッサージ技術(初歩から中級)の習得が可能です。さらに学校から授業の終了証を受ける事ができます。
・ママさん : 私の妻。タイマッサージ店を切り盛りする。1964年、タイのチェンマイ出身。1995年に結婚して来日、とても明るいが・・・いったん怒ると鬼より怖い。酒を飲んだら乱暴者。
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