見出し画像

【実話】「そのトラックを引き返せ!!」4年前の上海ロックダウン。ポス鳥の貿易会社に何があった?2022年春、上海の物流が死んだ日。国境の検問と、一枚の通行証を巡る脱出劇。#実話 #上海ロックダウン #サプライチェーン #物流 #Amazon物販 #輸入ビジネス #EC

割引あり

こんにちは、北陸の貿易商・ポス鳥です。

今日は2026年2月15日、日曜日ですね。

カーテンを開けると、目に飛び込んでくるのは眩しいほどの光。

今日の北陸は珍しく、小春日和のような穏やかな晴天です。

窓越しの日差しだけなら春のように温かい。

けれど、窓を少し開ければ、肺がキュッと縮こまるような冷たく澄んだ空気が流れ込んできます。

庭には数日前に降った雪がまだ残っていて、陽の光を反射してキラキラと輝いています。

こんな美しい午後は、熱いコーヒーでも飲みながら、過去の「戦場」を振り返るのも悪くないものです。

先日、昔からの熱心なフォロワーさんから、こんな長文のDMをいただきました。

「ポス鳥さん、以前SNSで少し触れていた、あの『2022年・上海ロックダウン』の時の実体験を、もっと詳しく聞かせてもらえませんか?

当時、ニュースでは街の封鎖ばかり報じられていましたが、物流の裏側で一体何が起きていたのか。一人の経営者としてどう動いたのか、その『生々しい記録』が知りたいのです」と。

確かに、SNS上で以前言っていたこともありましたね。

上海ロックダウンですか。

もう4年も前の話になるんですね。

世間では「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言いますが、巻き込まれた貿易関係者にとって、あの春の記憶は一生消えることのない「傷跡」のようなものです。

あの時の、胃がねじ切れるような焦燥感、スマホの画面越しに見た絶望的な光景、そして決断一つで数千万円、数億が吹き飛ぶプレッシャー。

それらは今でも、昨日のことのように鮮明に思い出せます。

結論から言いましょう。

あれは単なる「都市封鎖」では

ありませんでした。


私たち貿易商にとっては、世界経済という巨大な生き物の「心臓」が止まりかけ、血管である物流網が壊死しかけた、まさに悪夢のような数週間だったのです。

よし、今日は久しぶりに、時間をかけて語りましょうか。

教科書的な解説ではありません。テレビニュースや新聞では語れなかった話です。

あの日、私のコンテナがいかにして「死の淵」から生還したのか。

そして、効率化の極みにあったサプライチェーンが、いとも簡単に崩壊したあの現場で、私が何を学んだのか。

コーヒーのおかわりはいかがですか?

少し長い、そして濃い話になりますからね。

🧨 第1章:春節の憂鬱と、構造的なチャイナ・リスク

時計の針を、2022年の春に戻しましょう。

当時の世界は、まだ「コロナ」という見えない敵との戦いの最中でした。

日本では緊急事態宣言こそ解除されていましたが、街ゆく人は皆マスクをし、どこか重苦しい閉塞感が漂っていた時期です。

覚えていますか? アクリル板越しの会話、自粛という名の圧力。

しかし、海の向こうの中国は、もっと凄まじい「戦時下」にありました。

ゼロコロナ政策

つまり、「ウイルスを徹底的に封じ込め、感染者を一人も出さない」という、国家の威信をかけた極端な封鎖政策が敷かれていたのです。

街中で突然スマホのQRコードが「赤色」になり、その場で隔離される。

そんなSF映画のような光景が日常でした。

当時、私は中国の深セン(深圳)や広州にある提携工場で、小型家電やガジェット類を生産し、それを日本に輸入してAmazonや楽天で販売していました。

いわゆる「中国輸入ビジネス(OEM)」というやつですね。

このビジネスにおいて、私たちプレイヤーが一年で最も神経を尖らせ、胃薬を手放せなくなる「魔の季節」があるのをご存知ですか?

それが2月です。

そう、「春節(しゅんせつ)」ですね。

「ああ、中国の旧正月でしょ? お店が休みになるやつね」

もしそう思っているなら、認識が甘いと言わざるを得ません。

ビジネスにおける春節は、単なる連休ではなく「産業の完全停止」を意味するからです。

想像してみてください。

日本の人口以上の人々が、一斉に大移動する様を。

中国全土から沿岸部の工場に出稼ぎに来ている何億人もの労働者(農民工)が、一斉に故郷へ帰ります。

これを「春運(しゅんうん)」と呼びますが、その延べ移動人数は数十億回とも言われます。

まさに人類史上最大の民族大移動です。

この期間、中国の生産機能は文字通り「死にます

工場は太い鎖で鍵がかけられ、機械の電源は落とされ、工場のオーナーとも連絡がつかなくなる。

物流会社もドライバーがいなくなり、トラックは動かない。

中国という「世界の工場」のブレーカーが、バチンと落ちるのです。

そして、私たち発注側にとって一番恐ろしいのは、連休中ではありません。

連休明け」なんですよ。

ここに、中国特有の構造的なリスクが潜んでいます。

なぜなら、田舎に帰った工員たちの多くが、そのまま工場に戻ってこないからです。

かつては「出稼ぎに行かないと食えない」状況でしたが、近年は中国の内陸部(四川省や貴州省など)も急速に経済発展しています。

「故郷の近くに新しい工場ができたから、そっちで働くよ」

「親の介護もあるし、もう都会の厳しい生活は疲れた」

そんな理由で、春節を機に離職する人が後を絶たないのです。

離職率が20%〜30%を超えるなんてザラですよ。

では、春節明けの工場はどうなるか?

熟練の技術を持ったベテランが抜け、代わりに昨日まで畑を耕していたような新人がラインに入ります。


当然、現場は大混乱です。

結果、私たちに届く商品はどうなるか。

縫製が甘い、接着剤がはみ出している、検品がザル、納期が平気で1ヶ月遅れる……。

これが、私たちが恐れる「春節明けの品質劣化(クオリティ・フェード)」の正体です。

✅ 第1章の小まとめ

🧧 春節(旧正月)のリスク

中国における春節は単なる連休ではなく、工員が大量離職し、生産ラインが一時的に崩壊する「魔の季節」です。

📉 品質の低下

連休明けは熟練工が戻らず新人が現場に入るため、不良品率が跳ね上がる傾向にあります。

😷 ゼロコロナ下の緊張

2022年当時は、極端な防疫政策により、ビジネス環境が極度に張り詰めていた背景があります。


📦 第2章:Amazonという「怪物」と、第2陣の誤算

だからこそ、私たちベテランの貿易商には、絶対に破ってはいけない鉄の掟があります。

春節前に、向こう3〜4ヶ月分の在庫をすべて作り終え、日本へ送り出しておくこと

通常なら、必要な分だけこまめに発注し、現金を回すのが正解です。

在庫は「悪」ですからね。当時の私は1商品で通常1.5か月~2か月分の在庫を持つようにしていました。

春節時は4,5か月分を用意していた形です。

実際、この時期だけはそのセオリーを無視してでも在庫を積まねばならない「明確な理由」があります。

3月や4月、日本市場では何が起きますか?

カテゴリによっては、「新社会人セール(新生活セール)」です。春先に飛ぶように売れるものがいくつもあります。

商品によっては、一年で最も物が動く、最大の書き入れ時の一つですよね。

ここで、Amazon含め、通販をやっている上では外せないECプラットフォームの話です。

例えばAmazonの「アルゴリズム(A9)」の残酷なロジックについてです。

Amazonで商品を売るために最も重要なのは、「検索順位」です。

ユーザーが「ワイヤレスイヤホン」と検索した時、1ページ目に表示されるか、2ページ目以降に埋もれるか。

これで売上は数倍、下手したらカテゴリによっては10倍以上違います。

そして、この検索順位を決める最大の要因の一つが「在庫が安定して供給されているか」です。

それはそのはずです。在庫切れの商品を上位に出しても、Amazonでの売上は発生しません。つまりAmazonは儲からないのです。

在庫切れの商品を下位に追いやるのは当然です。

その観点から、もし春節の影響で3月の入荷が遅れ、在庫切れ(Sold Out)を起こしたらどうなるか?

単に「売上が止まる」だけでは済みません。

AmazonのAIは「この商品は供給能力がない」と判断し、必死に積み上げてきた検索順位を容赦なく圏外へと吹き飛ばします。

つまり、在庫切れは「」を意味するのです。

だから私は、2021年の11月。まだ北陸の雪が降る前の時期に、リスクを背負って深センの工場へ大量の発注をかけていました。

「4月分までの在庫、全部まとめて春節前に作ってください!」

工場は契約に基づきフル稼働してくれました。

その結果、生産は2回に分けて完了しました。

まず【第1陣】

これは1月20日頃に完成し、即座に出荷されました。春節前の駆け込み乗船に成功し、2月上旬には無事に日本の倉庫に到着しました。

これで3月までの通常販売分は確保できたわけです。

問題は、【第2陣】でした。

これは4月の「新生活セール」で爆発的に売るための、合計1千万円分の勝負在庫です。

工場は頑張ってくれましたが、完成したのは1月31日。春節休みの直前ギリギリでした。

もう船の予約は一杯で取れません。

私は工場長に頼み込みました。

「分かった。とりあえず工場の倉庫に置いておいてくれ。春節が明けたら、一番の船で送ってくれればセールには間に合うはず」

そう、計算上は間に合うはずでした。


しかし2月中旬、春節が明けても、私の荷物は動きませんでした。

この当時、コロナの影響でとんでもなくコンテナがごった返していました。春節明けの物流がパンクし、船の予約が全く取れなかったのです。

「ポス鳥さん、船が取れない。工場も稼働してないから、発送できない2月末まで待ってくれ」

「まだダメだ、来週になる」

そんな押し問答を繰り返しているうちに、カレンダーは3月中旬を回っていました。

ようやく「上海港からの便なら取れる!」という連絡が入り、私の第2陣はやっとの思いで工場を出発したのです。

まさかそのトラックが、世界を揺るがす大事件の中心地、ロックダウン直前の上海へ飛び込んでいくことになるとは、夢にも思わずに。

✅ 第2章の小まとめ

💀 Amazon SEOの残酷さ

在庫切れを起こすとアルゴリズムに低評価され、検索順位の消滅(ビジネス的な死)を招くリスクがあります。

🧱 第1陣と第2陣

当座の在庫(第1陣)は確保できていたものの、セールの勝敗を分ける主力在庫(第2陣)の輸送が春節後の混雑で遅れていました。

💸 スケジュールの誤算

「春節明けすぐに送れば間に合う」という計算が、世界的な物流パンクによって狂い始め、3月中旬まで出荷がズレ込んでしまいました。

🚢 第3章:なぜ荷物は「上海」を目指したのか

さて、ここからが物語の核心、そして最大の「」に入ります。

私の商品は、中国南部の「深セン」で作られました。

地図アプリを開いてみてください。

深センは香港のすぐ隣。

そこには世界トップクラスの取扱量を誇る巨大な「深セン港(塩田港など)」があります。

常識的に考えれば、工場の目の前にあるこの港から船に乗せ、太平洋を渡って日本の大阪港や東京港へ運ぶのが最短ルートですよね?

しかし、私の大切な第2陣の荷物を満載したトラックは、なぜか深セン港を素通りし、北へ向かって走り出しました。

引用元:Googleマップ

目指すは「上海」

距離にして約1,500km。


日本列島で例えるなら、鹿児島から青森まで走るような大移動です。

なぜ、わざわざそんな手間とガソリン代をかけてまで、遠く離れた上海を目指したのか?

ここに、貿易実務を知らないと見えてこない、物流業界の「不都合な真実」と「抗えない引力」が存在します。

1. 「ハブ港」という怪物の引力

当時の物流業界は、異常事態の真っ只中にありました。

コンテナ不足」です。

コロナ禍の巣ごもり需要で世界中の荷動きが活発化し、空のコンテナが奪い合いになっていた時期を覚えていますか?

この時、船会社はどう動くか。

「あちこちの小さな港に寄るのは非効率だ。一番デカい港に船を集めろ!」となります。

その「一番デカい港」こそが、上海港でした。

世界一のコンテナ取扱量を誇る上海は、あらゆる船が集まる巨大なハブ(拠点)

確かに深セン港も大きいのですが日本行きの船便も、深セン発に比べて圧倒的に上海の便数が多く、スケジュールの融通が利いたのです。

2. 「混載便(LCL)」の経済学

さらに、私のような中小零細企業にとって決定的な理由がありました。

私はコンテナを一本丸ごと借り切る(FCL)ほどの大型製品は少ない形です。

そのため、他の事業者の荷物と相乗りする「混載便(LCL)」を利用していました。

混載便の場合、荷物が集まらないとコンテナが満杯にならず、いつまで経っても出荷されません。

深センでは、日本行きの混載コンテナが満杯になるのを待つのに数日かかることがある。

しかし上海なら?

世界中の荷物が集まるため、またたく間にコンテナが埋まり、次から次へと船が出ていくのです。

そして何より、「運賃」です。


中国国内のトラック輸送費は、日本とは比べ物にならないほど安い。

「深センから日本への高い船賃」を払うより、「深センから上海まで激安トラックで運び、上海から日本への安い船賃」を払う方が、トータルコストが数十万円も安くなるケースがザラにあるのです。

だから私のビジネスパートナーである中国の輸入代行会社、広州の「陳(チェン)さん」は、いつものように涼しい顔でこう言いました。

「ポス鳥さん、今回も上海ルートで行きますね。その方が早いし安いよ。トラック手配済みです」

私は何の疑いも持ちませんでした。

「OK、陳さん。いつものルートで頼むよ」

そう答えて、私は日本の日常に戻ったのです。

トラックは順調に北上していました。

福建省を抜け、浙江省を走り、長江デルタ地帯へ。

私の1千万円分の在庫は、平和な田園風景の中を、春の風を切って上海へと近づいていました。

そう、あの日までは。

✅ 第3章の小まとめ

🧲 上海一極集中の理由

コンテナ不足の中、便数が圧倒的に多く、荷物がすぐに集まる「ハブ港」への依存が業界全体で進んでいました。

💰 コスト構造の罠

1,500km陸送しても、上海から出した方がトータルで安く、早いという「LCL(混載)」特有の論理が存在します。

😈 効率化の魔力

平時においては、コストとスピードの両面でこのルートこそが最適解だったといえます。

❄️ 第4章:長野の静寂と、Xデーの戦慄

2022年3月下旬。

運命の日、私は仕事の用事で長野県に出張していました。

営業車で回っていたのですが、まだ雪が残る静かな山あいのホテル。

窓の外には、水墨画のような美しい景色が広がっていました。

都会の喧騒とは無縁の、静寂そのものの世界。

私は久しぶりの出張に少し浮かれ、温泉にでも浸かってゆっくりしようかと思っていた矢先でした。

スマホが短く振動しました。

陳さんからのチャットです。

「ポス鳥さん、マズいことになりました」

画面には、短いテキストと共に、中国のニュースサイトのURLが貼られていました。

見た瞬間。

「は?」


【ここから先は、有料会員限定のコンテンツです】

【こんな人におすすめ】

  • 海外ビジネス・輸入物販を行っている方

  • 物流・サプライチェーンの裏側に興味がある方

  • 危機管理・リスクヘッジの実例を知りたい経営者の方

  • ポス鳥の思考をより深く知りたい方

【本文予告】

  • なぜ荷物は、わざわざ封鎖直前の上海を目指したのか?

  • 現地から送られてきた戦慄の動画ファイルの中身。

  • 物流が死んだ高速道路で、たった一つ残された「脱出ルート」とは?

私たちを応援していただけませんか?



私たちのメンバーシップに加入していただけないでしょうか?ご興味ある方は、ぜひ以下ボタンからどうぞ。

月500円と、月980円の2コースあり。読み放題!初月無料・解約縛りなし!かなりお買い得だと思います!




ここから先は

14,741字
この記事のみ ¥ 1,800〜
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

こっちの方がお得!この記事+α(全記事30記事以上・総額20万円分)が980円から【初月無料・解約縛…

全部・読み放題プラン!(月980円)

¥980 / 月
1ヶ月無料

この記事が参加している募集