「トヨタの勝利」は本当か? 世界を二分するEV鉄のカーテン。日本が「EVの死」を祝う間に、裏庭が燃やされていた話〜2026年、地図の半分で見落とした「悪夢」〜 #EV #自動車 #ビジネス #経済 #中国 #投資
こんにちは、ポス鳥です。
2026年の1月も後半に入りましたね。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
私の住む北陸では、重たい牡丹雪がしんしんと降り積もっています。
窓の外は一面の銀世界。
音という音がすべて雪に吸い込まれ、奇妙な静寂に包まれています。
さて、前回にEVのことを書いたかと思います。
最近、EVの落ち込みについて、テレビの経済ニュースも、似たようなトーンです。
『EVシフトの修正』
『ハイブリッド再評価』
『日本車、北米で過去最高益』
画面に踊る威勢のいい見出しを見ていると、ある種の「安堵感」が胸に広がります。
ああ、よかった。世界が正気に戻った。
エンジン音への愛着、使い慣れたガソリンスタンド、そして何より「日本車が世界で一番愛されている」という揺るぎない信仰。
それらが脅かされそうになった数年前の悪夢は去り、私たちは守られたのだ、と。
……しかし、本当に、そうでしょうか?
日本のメディアがあまり報じない、「地図の残り半分」の話。
新年過ぎて、早々にこんな話をするのは野暮かもしれません。
ですが、私は貿易商です。
現実を見誤れば、即座に死(倒産)が待っている。
だからこそ、あえてこの静寂を破り、皆様に問いかけなければなりません。
もし、「世界中でEVが売れなくなった」というのが、
日本人が見たいものだけを見た
「幻覚」だったとしたら?
もし、私たちが「勝利宣言」をしているその裏で、世界の覇権が音もなく書き換えられていたとしたら?
少しだけ、怖い話をしましょう。
📉 1. 誰も触れない「不都合なレポート」
手元のタブレット端末で、イギリスのエネルギーシンクタンク「EMBER」が発表した、2025年通期の自動車販売レポートを開きます。
ここには、私たちが信じている常識——「EVバブルは崩壊した」——を、残酷なほど無機質なグラフで否定する現実が描かれています。
結論から申し上げましょう。
世界全体のEV(電気自動車)販売台数は、
減っていません。
それどころか、2025年は過去最高を記録し、グラフの右肩上がりはさらに角度を増しています。
「待ってくれ、ポス鳥さん」と、皆様は仰るかもしれない。
「ニュースで見たぞ。フォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖したじゃないか。フォードもEV計画を縮小したし、あのテスラでさえ成長率が鈍化した。あれは嘘だったのか?」
いいえ、嘘ではありません。
欧米市場——つまり「OECD(経済協力開発機構)」に加盟しているような、いわゆる「金持ちクラブ」の国々では、確かにEV販売は急ブレーキがかかりました。
補助金が切れ、アーリーアダプター(新しいもの好き)に行き渡り、充電インフラの不足に一般層が愛想を尽かした。
それは事実です。
しかし、このレポートが示しているのは、もっと巨大で、もっと恐ろしい「地殻変動」です。
「OECD諸国(先進国)」でのマイナス分を、「非OECD諸国(新興国・途上国)」での爆発的なプラスが完全に飲み込み、さらに巨大な成長を生み出している。
数字で言えば、欧米での販売が前年比で数パーセント落ち込む一方で、東南アジア、南米、アフリカの一部では、前年比50%、100%増という、異常な数値が叩き出されているのです。
これは何を意味するのか。
私たちは無意識のうちに「欧米 = 世界(Global Standard)」だと思い込んでいます。
ニューヨークで流行れば世界で流行る。
ロンドンで廃れれば世界で廃れる。
かつてはそうでした。20世紀までは。
しかし今、パリの街角で充電スタンドが撤去されているその同じ瞬間に、バンコクの路地裏では、ブラジルのサンパウロでは、そしてインドネシアのジャカルタでは、「EVパンデミック」とでも呼ぶべき現象が起きているのです。
日本人が「ほら見ろ、EVは終わった」と祝杯を挙げているのは、例えるなら、東京の港区だけを見て「日本中がタワマンだらけになった」と錯覚したり、あるいは「港区でタワマンが売れ残っているから、日本中で住宅はもう不要だ」と断じるようなものです。
視界が狭い。
あまりにも狭すぎる。
世界は広いのです。
そして、人口の大多数、これから車を買う人々の大多数は、欧米ではなく「南側(グローバルサウス)」に住んでいるのです。
🇹🇭 2. 【思考実験】バンコクの朝、湿った風の中で
数字ばかりでは実感が湧きませんね。
少し、想像力の旅に出かけましょう。
目を閉じてください。
日本の冬は消え、代わりに、じっとりと肌にまとわりつく熱帯の湿気、排気ガスが混じり合った独特の匂いが鼻をつきます。
あなたは今、2026年1月のタイ・バンコクにいます。
あなたは、この街で20年間ハンドルを握り続けている、50代のタクシー運転手だとしましょう。
愛車は、10年落ちのトヨタ・カローラ。
走行距離は30万キロを超えていますが、さすがは世界のトヨタ。
エンジンは快調、エアコンもキンキンに冷えます。
あなたは、この車を誇りに思ってきました。
日本車は壊れない。日本車は高く売れる。
それはこの国の「信仰」に近い常識でした。
しかし最近、あなたは頭を抱えています。
ガソリン代です。
中東情勢の悪化と通貨安のダブルパンチで、ハイオクなんて夢のまた夢。
レギュラーガソリンでさえ、1日の売上の半分近くを飲み込んでいく。
朝から晩まで渋滞の中を走り回り、手元に残るのは、屋台の麺料理を家族と食べるのがやっとの小銭だけ。
「このままじゃ、息子の学費が払えない……」
そんなある日、ドライバー仲間の溜まり場で、妙な光景を目にします。
友人の若いドライバーが、見たこともないピカピカの新車を自慢しているのです。
流線型のボディ、未来的なLEDライト。
ボンネットには「BYD」のロゴ。
「お前、宝くじでも当たったのか? 新車なんて」
あなたが尋ねると、彼はニヤリと笑って答えます。
「まさか。これ、今のカローラを下取りに出して、ちょっと追い金しただけで買えたんだ。日本円でいえば200万円もしない」
「中国車か……。安かろう悪かろうだろ? すぐ壊れるぞ」
これはベテランとしての親切心です。
しかし、彼は首を振りました。
「それが違うんだ。まずな、ガソリンスタンドに行かなくていい。家のコンセントで充電すれば、満タンにするのにコーヒー2杯分もかからない。燃料代が今までの10分の1だぞ? 10分の1!(今回は極端に計算しています)」
あなたは耳を疑います。
「それに、オイル交換もいらない。プラグ交換も、ベルト交換もいらない。モーターと電池だけだから、壊れる場所がないんだ。メーカー保証も8年ついてる」
そして彼は、決定的な一言を放ちます。
「お客さんも喜ぶんだよ。静かだし、スマホの充電ポートもある。アプリで配車を受ける時も、『EV指定』の客が増えてる。兄貴、いつまでガソリンの臭いをさせてるんだい?」
……さて、目を開けてください。
思考実験の問いはシンプルです。
あなたが海外のタクシー運転手なら、それでも「トヨタの信頼性」を選びますか?
それとも、明日の生活のために、子供の学費のために、プライドを捨てて中国製EVに乗り換えますか?
答えは、火を見るよりも明らかだったということです。
これが今、日本人が知らない間に、東南アジア含めて、世界の新興国「現場」で起きているオセロのひっくり返しです。
「環境に優しいから」ではありません。
「意識が高いから」でもない。
「圧倒的に生活が楽になるから」という、生存本能に直結した理由で、EVが選ばれているのです。
次は、なぜ欧米から締め出されたはずの中国車が、これほどまでに世界中に拡散してしまったのか?
その物理的なメカニズムである「風船効果」についてお話しします。
そこには、教科書通りの経済学が通用しない、歪んだ重力場が発生しているのです。具体的に話を進めましょう。
【筆者コメント】
EVに関しては、テスラは落ち込み気味ですが、中国EVに関しては出荷数が増えています。
輸出せざる得ないという背景もありますが、それでも、なお右肩上がりということは「出荷できるところがある」ということです。
先進国のニュースだけを見ているだけでは読み取れない。具体的に何が起こっているか後半で語っていきます。是非どうぞ。
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【本文予告】
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