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資金がない。だから、一球入魂で決めにいく「GINGER ALE BEER 自社醸造への道」


資金がない私は、それでも、やりたいことを実現するために、

「作ったものは、必ずお金に変える」

という精神で、何事にも取り組んできました。

一球入魂。
絶対に決める。

そんな静かなる闘争心というか、目の前の課題に負けたくない気持ちなのかもしれませんねー。

だから、新しい取り組みを始めるときや、大きな買い物をするときは、必ず使えそうな補助金を探します。

振り返ってみると、私の補助金歴はこんな感じです。

私の補助金歴

2016年|青年就農給付金
新規就農者を対象に、最長5年間、年間150万円が給付される制度。

2018年〜2020年|小規模事業者持続化補助金・3回採択
販路拡大と新商品開発に活用。補助率は3分の2。
一事業者につき3回まで申請でき、私は上限まで使わせてもらいました。

2020年|経営継続補助金
生姜の増産と事業継続を目的に、農業機械を購入。補助率は、確か3分の2。

2022年・2025年・2026年|産業振興補助金
新商品開発や販路拡大に活用。補助率は3分の2。2026年は2年連続3かいめの申請だったので、採択を得るにに結構大変だった。

2025年|高度化支援事業補助金
商品の改良に活用。補助率は2分の1。

このうち、純粋に農業に関わる補助金は、コロナ禍に実施された「経営継続補助金」だけです。それ以外は、主に食品加工や販路開拓に関わるものです。

世間では、

「農業は補助金漬けだ」

みたいに言われることもあります。

でも実際には、私のような有機農家が自由に使える農業補助金は、ほとんどありません。

たぶん、一般栽培、いわゆる慣行栽培を行い、JAへ出荷している農家が機械を導入するときや、ハウス園芸の設備を購入するときなどに、その費用の一部が補助される仕組みが多いのだと思います。

あるいは、環境保全型農業へ移行する際に必要となる資材費への補助など。要するに、何でも自由に使えるお金ではなく、対象となる設備や取り組みに対して補助が出る。

住宅ローンに近い感じ、と言えば伝わるでしょうか。

私は、これまで一度もJAと取引をしたことがありません。だから、そうした制度の恩恵を受けたこともほぼありません。なんなら、青年就農給付金を申請したときには、JAに出荷しない事業計画を立て、販売価格もJA出荷価格の約4倍で設定していたため、丸2年半、採択されませんでした。

この話のオチは、農林水産副大臣に直談判して解決した、というものなんですけどね。

この話は、また別の機会に。

60万円の試作費

話を戻します。

「GINGER ALE BEER」の試作には、弊社のある自治体の産業振興補助金を使わせていただきました。

これは、本当にありがたかった。

試作だけで約60万円かかったため、自社資金だけで取り組むことはできませんでした。こうして、いよいよ都内の醸造所で試作が始まりました。

当初の予算では、2回の試作ができる予定でした。試作は、本醸造で使用するタンクよりも小さな、25リットルの容器を2つ使って行われます。

生姜の辛味を出すために必要な量は、すでに決まっていました。
そこで1回目の試作では、香りに重点を置きました。

香り付けに使う生姜の原料を2種類選び、それぞれの仕上がりを比較することにしたのです。そして、待ちに待った1回目の試作品が届きました。

早速、試飲。

ところが。

炭酸が効いていない……。

「なんじゃこりゃ」

期待していた分、まあまあガッカリです。

醸造所に伝えたところ、醸造工程における不備を認めていただき、2回目の試作へ進むことになりました。

2回目。ビールが混ざる

2回目の試作品は、営業用のサンプルとして使う予定でした。

完成日に合わせて販促スケジュールを組み、取扱先を獲得するための営業を始めるつもりでいたのです。
ところが、またしても、あり得ない事件が起こります。
醸造所から連絡がありました。

醸造所:
「充填後のビールが〇〇してしまいました」

私:
「えっ?」

同じ日に、醸造所では他ビールの充填も行っていたそうです。細かいことは言えませんが、〇〇してしまったとのこと。

いやいやいや。

マジで、あり得ねえー。

結局、サンプルを使った営業は、開始できなくなってしまいました。
ただし、不幸中の幸いもありました。

2回目の試作では、香り付けに使う2種類の原料を比較し、より仕上がりの良い方を選定することができたのです。そのため、3回目の試作では、香り付けの原料を一つに絞ることができました。

まあ、それだけでも良かったと思うしかない。

3回目。なぜか香りが薄い

そして、3回目の試作。

今度こそ、と思うじゃないですか。ところが、出来上がったビールを飲んでみると、なぜか2回目よりも香りが薄い。

「なんでやねん」

もちろん、実際にはこんな言い方はしていません。

理由を確認すると、

「香り付けの生姜を投入してから、醸造終了までの期間が、2回目より数日短かったことが原因です」

とのこと。

「なんで勝手に短くすんねん!」

もちろん、これも実際には言っていません。

実際の私は、

「それであれば、改善できるということですね。本番では、この点の改善をお願いします」

と、至ってマイルド・アンド・ピースフルに伝えました。
実際に改善点が明らかになったことに安堵していました。

ちょっと考えれば避けられそうなミスが、次々と起こる。

本気で悩みました。でも、怒ったら終わり。起きてしまったことを責めても、現実は変わらない。それなら、次こそ良いものを造ってもらえるように、相手のモチベーションを下げないことに最大限の努力をする。
その方が、結果的には自分のためになる。
こうして、ようやく試作が完了しました。

そして2024年11月中旬、収穫イベント後の宴の席で、参加者の皆さんに試作品を飲んでいただくことができたのです。

今日は2026年6月。

振り返れば、もう1年半前の出来事です。

ここまででも、まあまあ、しんどかった。

ハプニングは、宇宙の法則なのか

とにかく、

「少し考えれば回避できるのでは?」

と思うトラブルが多すぎる。

だけど、ある意味では仕方がないのかもしれません。いろいろな意味で不完全な要素があるからこそ、私のような小さな事業者の委託醸造を受けてもらえる。

このバランス、分かりますか?

完全に仕組み化され、効率化された大手の工場では、そもそも少量の試作や、変わった原料を使った商品開発には対応してもらえない。
新しいことが起きる場所には、不確定な要素がある。エントロピーが増大する方向に進まなければ、新しい出来事は起きない。しかるに、ハプニングはつきものである。こちらは全力で避けようとするけれど、宇宙はそれを許してくれないのです……。全ての出来事に感謝🙏

この文章を書きながら、当時を思い出し、再びため息をついている今。

でもね。

ここで終わりじゃないんですよ。

また次の、想像だにしていなかった出来事が起こりました。

チーン💫

15%の生姜が、本醸造では使えない?

これはね、もう本当にあり得ない。

マジで、ない。

試作は、25リットルの容器を使って行いました。GINGER ALE BEERのレシピでは、生姜を原材料の15%使用します。当然、その配合で試作を重ねてきたわけです。

試作というのは、本醸造を前提に行うもの。これは当然の共通認識、ということで良いですよね?ところが、いよいよ本醸造という段階になって、醸造所からこう言われました。

「設備の容量上、15%の副原料を使用できないため、生姜の量を減らしてください」

はい?

どゆこと??

あり得ねえーーーーーー!!!!

いやー、もう無理っす。

こちらは60万円をかけて、15%の配合で試作を重ねてきたんですよ。
最終的に500リットルで本醸造することも、最初から伝えていました。
それなのに、本醸造の段階になって、

「設備上、入りません」

と言われても。

知らんがな。

いや、正直、怒鳴る元気もありません。

「どうなってんの?」

という謎が大きすぎて死にました。

とはいえ、私は、淡々と伝えました。

「これまで、本醸造を前提として、この配合で試作を重ねてきました。この段階で生姜の量を減らしてほしいと言われても、受け入れることはできません。現在の設備で実現する方法を考えていただくのが、そちらのお仕事ではないでしょうか」

加えて、心の中では、

「おたくの現場、どうなってんの?」

です。

もちろん、こんな言い方はしていません。

ブルワーからは、

「少し方法を考えて、また連絡します」

と言われました。

いやいや。まず、考えてから連絡してくれ。というか、試作の時点で本醸造を見据えてくれ。

最初から、最終的には500リットルで仕込むと言っていただろうが。

……と、心の中では思いました。

でも、実際には、そんな言葉は出てきません。

言葉って、生き物じゃないですか。湧き上がってきたのが怒りよりも深いため息だったので、言葉にはなりませんでした。

こういう人、いるんですよね。私には、なかなか理解できないけれど。

しばらくして、醸造所から打開策が示されました。
最終的には、15%の生姜を使用して造れる方法が見つかったのです。

いやいや。

最初から、その提案を持ってこいよ!

という話なんですけどね。

次回、いよいよ本醸造

さて。

次はいよいよ、本醸造です。

ここまで、

一難去って、また一難。
一難去って、また一難。

もう、いいっしょ。

この後に、どんなトラブルが起きるというのか。

はい。起きました。

残り、あと2回。

【次回のトラブル予告】

トラブル1
ラベル表記に問題が勃発
→結果的に、問題回避に成功。

トラブル2
醸造予定日が近づいているのに、醸造所から返事がない。

最後の最後に、大きいのが来ました。
これは、発泡酒のラベル表記に関わる法律の話です。
久しぶりに、法律と行政機関を相手に、

「それ、本当に正しいんですか?」

と、戦うマインドになった出来事でした。

全国共通の法律であるにもかかわらず、管轄する地域や担当者の解釈によって、求められる規制内容が変わってしまう。行政あるある、です。

次回は、この話を書きたいと思います!(次回へ続く)

(余談)

私は、今の六次化を「本当の六次化」だと思っていない

私は、本気で農業に人生をオールベットしてきました。
その中で、ずっと心のどこかにあるのが、

「今の六次化は、本当の六次化なのか?」

という疑問です。

今の六次化に対するアンチテーゼとして、

「真の六次化を、自分が達成してみせる」

と心に誓っているのか。それとも、単なる執着なのか。
自分でも、よく分かりません。

ただ、はっきり言えることがあります。

六次化とは名ばかりで、その実態は、相変わらず一次産業から価値を吸い上げる仕組みではないか。私は、今もそう感じています。

六次産業化とは、本来、

一次産業×二次産業×三次産業

によって、農林水産物の価値を高め、その利益を生産者へ還元するための仕組みだったはずです。けれど現実には、農業者が原料を安く提供し、加工や流通、販売を担う事業者の側に利益が残る。これでは、これまでの構造と大きく変わりません。

私は正直、二次産業が一次産業を引き上げることは難しいと思っています。加工には加工の設備と人件費がかかり、利益を確保しなければ事業は続きません。その中で、原料を生産する一次産業の利益まで守ることを、二次産業だけに期待するのは難しい。

では、どうするのか。

可能性は、大きく二つだと考えています。

一つは、一次産業者自身が、自分たちの生み出している価値を言語化し、商品や価格へ反映していくこと。

もう一つは、販売を担う三次産業が、食品そのものの価値を引き上げるマーケットをつくること。

どちらの場合も、最後に問われるのは、

その価格が、消費者に受け入れられるのか

ということです。ここが、一番大きな壁になります。

「安い」には、理由がある

そもそも、食品の原料となる自然資源は有限です。
土地も、水も、作物も、人が働ける時間も、無限ではありません。
限られた資源を、どのように配分していくのか。
突き詰めれば、食品の価格とは、その話なのだと思います。

食品が極端に安い場合、私は大きく二つの可能性があると考えています。

一つは、商品に含まれる自然由来の原料が少ないこと。
もう一つは、一定量の資源を、短期間に効率よく集めていること。

後者は、一時的には大量に、安く供給できます。しかし、その方法を続ければ、土地や水、生態系、あるいは働く人の力が、いつか枯渇します。

だから今、社会全体が、

「資源を使い切る仕組み」から、
「資源を循環させる仕組み」へ、

少しずつ移行しようとしているのだと思います。

持続可能な農業。
循環型の社会。
環境に配慮した生産。

いろいろな言葉がありますが、要するに、

使ったら終わり、ではなく、次へ回していける仕組みをつくる

ということです。

作るだけでは、農業を続けられない

ビールの話から、チト外れました。

かつて、多くの農業者は栽培だけを行っていました。作った農産物を一括してJAへ納め、販売はJAに任せる。生産者は、栽培に専念する。ある時代までは、それが非常に優れた仕組みだったのだと思います。農家が個別に営業や物流、代金回収まで行わなくても、作ったものをまとめて流通させてもらえる。この仕組みが、国内農業を支えてきたことは間違いありません。

しかし、消費のあり方も、流通の仕組みも、農業者を取り巻くコストも、大きく変わりました。今の時代、この仕組みだけで国内農業を維持していくことは難しくなっています。

もちろん、地域によって状況は異なります。努力を重ね、地域の農業を支えているJAもあります。一方で、時代の変化に対応せず、従来の集荷と販売を繰り返すだけでは、生産者の所得を守ることはできません。農村の衰退とJAのあり方は、深く関わりを持っています。

そして、農業をもう一度、持続可能な産業として立て直すためには、生産者自身が販売先を持つことが不可欠です。

誰に、どのような価値を届けるのか。
なぜ、この農産物はこの価格なのか。
どのような土地で、誰が、どんな考えで作っているのか。

そこまで自分たちの言葉で伝え、価格を決め、お客様とつながる。

つまり、

独自の販路を持つ。
そして、新しいマーケットを自らつくる。

私は、それ以外に、農業が再び力を取り戻す道はないと思っています。

だから私は、生姜を育てるだけではなく、加工し、商品をつくり、営業し、販売する。発酵生姜シロップも、GINGER ALE BEERも、単に加工品を増やしたいから作っているわけではありません。

生姜を原料として安く手放すのではなく、生姜が本来持っている価値を、自分たちの手で商品と価格に変えていく。

私にとっての六次化とは、加工品を作ることではありません。

一次産業者が、自らの価値を取り戻すこと。

たぶん私は、それを証明したくて、ここまでやっているのだと思います。


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