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マネージャーの仕事は「評価」や「人材育成」とは限らない

BASE株式会社で金融事業の事業責任者と執行役員をしている柳川と申します。
私はエンジニア→PdM→事業責任者というキャリアを歩んできました。
その中でマネジメントの仕事も5年ほどしてきました。
具体的には以下のような仕事をしてきました。

  • 1からの組織立ち上げと採用リード

  • 多職種の多階層の組織のマネジメント

  • 1->30人規模の採用と組織運営

僕自身はいわゆるプロの職能マネージャーというよりは、事業責任者として、事業を遂行するためのマネージャーの経験であることはご留意ください。
マネージャーこそなんのためのマネージャーなのかが大事だと思うのです。人を管理することや育成することが目的化してはいけない。そう強く思っています。
今回はその経験を踏まえて考えた、「マネージャーの仕事とは」をまとめてみました。


対象

プロダクトをつくり、それを何らかの形でお金に変えていく
そんな仕事を前提にしています。
そして僕は、プロダクトづくりはその全工程が「企画」の仕事だと考えています。
上記に加えてスタートアップであることを念頭においています。

結論どーん

結論から言えば、マネージャーの役割はビジネスモデルや事業フェーズによって変わるものです。
そんな中この記事で言いたいこととしては、PdMがいるようなスタートアップ的環境では、マネージャーの主な仕事が「評価」や「人材育成」ではないケースが多いということになります。
なんのためのマネジメントかから深掘りして考えましょう。

評価も育成も、それ自体が目的ではなく手段にすぎない

組織は「人を育てるため」にあるのではなく、何かを成し遂げるために存在します。マネージャーは日々忙しい中で、その本質をつい忘れてしまいがちです。でも忘れてはいけないのは、順番です。

まず、目的がある
その目的を達成するために、戦略があり
その戦略を実行するために、組織がある

この順番は崩せません。
自分のチームや組織は、ちゃんとこの流れでつながっているか?
そのつながりを、自分の言葉で説明できるか?
その結果育成が第一目的であれば育成をするでOKです。

でもその可能性はそんなに高くないのではないかと考えています。
育成にコストをかけられるのは成功の継続フェーズかつそのフェーズが明確に続くと思われている時
もう少し言い換えると、型に沿ってやれる人を量産すれば儲かることが約束されている時だと考えます。

組織は手段です。

組織フェーズごとのマネジメント課題

組織のフェーズによって、あるべき組織の形は大きく変わってきます。
では、どんなフェーズがあるのでしょうか?
ここではフェーズ切りの一例として、
『急成長を導くマネージャーの型 〜地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント』から引用し紹介します。
この本は最高なのでぜひ読んでください。

立ち上げフェーズ(0→1フェーズ)

仮説検証を重ねながらプロダクトと組織を形にする時期。カオス耐性とスピード重視。

急拡大フェーズ(1→10フェーズ)

成長に伴い組織が拡大し、仕組み化・分業化が急務になる時期。勢いと整備の両立が鍵。

成功の継続フェーズ(10→100フェーズ)

市場ポジション確立後、現状維持に甘えず、次の成長エンジンを探し続ける時期。

軌道修正フェーズ(方向転換フェーズ)

仮説崩壊や市場変化に直面し、戦略やモデルの抜本的な見直しが求められる時期。

立て直しフェーズ(リカバリーフェーズ)

事業・組織ともに大きく傷んだ状態から、生存と再起動をかけて立て直しを図る時期。

評価と人材育成に集中できるのはビジネスモデルが安定している場合だけ

人材育成は「できる」でも、それには時間がかかる

そして本気で育成に取り組むには、いくつかの条件が揃っている必要があります。たとえば、

  • 十分な資金があること

  • 育成がそのまま利益につながる構造になっていること

  • 育成のノウハウがすでに型化されていること

  • 事業が安定し、成功の継続フェーズにあること

現実には上記が揃ってないどころか、目的も戦略も頻繁に変わる状況が多いのではないでしょうか。1年前と同じことをしているスタートアップがありますか?それはスタートアップと言えますか?
変化の多い環境では、「育成」の優先順位は下げざるを得ないと考えます。

スタートアップにおいては、成功の継続フェーズは来ない

スタートアップにおいて、「成功の継続フェーズ」なんてものは基本的に存在しません
たとえ一時的にプロダクトが伸び、収益が安定し、チームがうまく回っていたとしても、それはただの一瞬の通過点にすぎず、すぐに状況は変わります。

市場は動く。競合は現れる。技術は進化する。
「これでしばらくは大丈夫」と思った瞬間に、次の変化は始まっている。

だからこそ、スタートアップにおいては「成功したら安定する」という感覚は捨てた方がいい。
“止まらずに走り続けること”が、唯一の安定なのかもしれません

スタートアップにおいては、人材育成と評価は本質的な仕事にはなり得ない

評価や育成は、組織を維持し、成功を安定的に継続させるための施策です。
言い換えれば、「今うまくいっているものをコピーし、再現性を高めていくための活動」です。

でも、スタートアップのように事業やプロダクトが常に変化し、前提が揺らぎ続ける環境において、
今の状態をそのままコピーして本当に大丈夫でしょうか?

変わり続ける状況の中で、評価や育成の仕組みを「安定運用」しても、
気づいたときにはその前提自体がズレてしまっていることも少なくありません。

だからこそ、スタートアップでは「人を育てること」や「公平に評価すること」が
中心的なミッションになるべきフェーズは意外と限られているのだと思います。

スタートアップにおいては、人を管理するなど悠長

管理職なんていう名前がついてしまうと勘違いしますが、管理するという考えを持つのは危険です

特に組織に階層が増えすぎるのは危険です。
意思決定のスピードが落ち、誰が決めるのかが曖昧になり、課題に対する反応も遅れます。
権限を持つ人が現場から遠くなり、組織の異変に気づけなくなる構造ができてしまう。

そもそも人を細かく管理する必要があるのは、

  • 決められた仕組みの中で動く“歯車”が必要なとき

  • 強固なビジネスモデルがあり、労働集約型で成り立つ場合

  • 手足を縛っていても問題ないくらい安定した収益源(キャッシュカウ)があるとき

そんなときくらいです。

でも、スタートアップにはそんな悠長な前提はありません。
変化が前提であり、意思ある人が最前線で判断し、動いていくしかないのです。

じゃあ何をすれば良いのよ

マネージャーは、チームを使って目的を達成するための仕事に集中すべきだと考えています。

評価や育成に時間を取られるのではなく、
まず注力すべきは「チームとして成果を出すための設計や推進」です。

もう少し具体的に言えば、たとえば以下のようなことが該当します

  • 仕事の割り振り:メンバーの強みや状況に応じて適切に役割を分担し、チーム全体の力を最大化する

  • 計画や企画の立案:どこを目指すのか、そのために何をいつまでにやるのか、道筋を描き、共有する

  • 例外処理 :想定外の事態や責任の所在が曖昧な問題に対処、判断が難しく誰も拾わない案件に向き合い、チームが止まらないようにする

  • 業務改善:日々の仕事の中にある非効率やストレスを見つけ、仕組みごとアップデートしていく

これらはすべて、「個人ではなくチームで成果を出す」ための仕事です。
そしてマネージャーにしか見えない視点から、流れをつくる・整える・前に進めるという役割に集中することが、結果的にチーム全体の生産性と満足度を高めることにつながっていくのだと思います。
育成なんて烏滸がましくて、成果が出ることのサポートぐらいしかできないと思っています。

スタートアップにおいては、マネージャーは手を動かし続けるべき

特にスタートアップにおいて、マネージャーは手を動かし続けるべきだと思います。よく言われる「自分がいなくても回る組織をつくるのが優れたマネージャー」という言説には、少し疑問を感じています。
もちろん、ずっと同じことをやり続けろという話ではありません。
手を動かす中で、自分がやるべきことは常に変わっていくし、それに応じて役割も進化していく。

重要なのは、現場の温度感や変化の兆しを感じ取り、必要なアクションに即座に切り替えられる状態にあること。
ただ管理するだけの存在では、変化のスピードについていけないのがスタートアップの現実です。
現場の動きを変える権限があるのがマネージャなのですから、現場の状態に敏感でなければいけません。

だからこそ、マネージャー自身もプレイヤーとしての解像度を持ち、変化の中で自ら動きながら、チームを前に進めていく必要があるのだと思います。

プレイングマネージャーは悪いことではなくむしろ必然です。

「育てたい」気持ちとの折り合い

育成そのものは、できるのであればやるべきだし、決して悪いことではありません。
むしろ、健全な組織運営においては理想的な取り組みのひとつです。

でも現実には、組織を維持しながら、同時に結果も出さなければならない。
正直、これはかなりの無理ゲーです。

では、どうするか。僕の経験上、最も自然に人が育つのは「結果が出たあと」です。成果が出るプロセスに関わり、実感を得たときに、はじめて人は成長していく。

だからこそ、まずは結果が出る仕組みをつくるしかない。
育成を目的にするのではなく、成果を通じて人が育つ環境をどう設計するかに集中すべきだと思います。

要求を出すことは必要

育成と若干ズレますが、「要求を出すこと」は大事です。
今のチームの状況を踏まえた上で何をして欲しいか、どうなって欲しいかを伝える。
伝えた上でどれだけ支援できるかはフェーズによりますが、伝えなければズレ続けます。
「管理するための評価」は必要ないと思いますが、「どうなって欲しいかを伝えるための評価「は、チームで結果を出すために必要だと考えます。

「仕組み」を管理することに専門性が宿る時代へ

ここまでお話ししてきた内容を、少し別の角度からまとめてみます。
僕が伝えたいのは、「人を管理するのではなく、仕組みを管理する」という視点への転換です。

マネジメントは、どちらかというと「人」を中心に考えがちです。
評価する、育成する、ケアする、すべて人に対する操作や調整が前提にありました。

でも、生成AIの登場により、実際に手を動かす部分の多くが仕組み化・自動化されるようになると、マネージャーの役割も変わってきます。

これからは、仕組みそのものを設計・運用し、継続的にアップデートできる人に価値が集まっていく。
仕組みを生み出し管理する「ストラテジストとしてのマネージャー」が生き残るのです。

  • どのような構造にすれば、チームが最小の人数で最大の成果を出せるか

  • どこまでをAIに任せ、どこに人の判断や感性を残すか

  • プロセスが滞ったときに、仕組み側からどう再設計するか

こうした視点で組織やプロジェクトを見直す力
は生成AIが台頭する時代においても役に立つと思います。
マネジメントで生きていくならここにふるべきです必要な専門性になると考えています。

[まとめ]あなたのチームは何をするチーム?

あなたのチームは何をするチーム?
上記の問いに一言で答えられますか?

マネージャーの仕事は、人材を育てることではなく
チームとして成果を出せる仕組みを整えることだと思います。
その結果として人材が育つかも知れないというのがリアルなところなのではないでしょうか。

我々はチームの基盤とビジネスの基盤を整備しつつ、採用と育成を行い続けるしかないのです。マジで無理ゲーなんですが、一緒に頑張りましょう。
こういうのを現実的に成り立たせてこそ意義があるのです。
たまたまリソースに余裕があるから、育成にコストが割けるみたいなことは再現性が皆無だし、他力です。

僕自身元々組織作りや育成がやりたいというところから始まっています。故に事業をガチでやっています。事業をとにかく伸ばしたいマッチョだと思われがちかなと思いますが違うのです。
中長期目線で組織作りや育成をするにはまず事業が成り立たなければできないので、事業で成果を出せる人間になるべく頑張っています。
事業も伸ばせないのに組織や育成をやりたいというのは無責任の極みです。

故に評価も育成も手段であり、決して目的ではないと主張しています。

矛盾しているように感じますか?矛盾してないですよ!

[付録]マネージャーの仕事とされているもの

記事の後半になり今更感もありますが、Appendix的にマネージャーの仕事を分類してみました。ちょっと多いんですが11分類です。
これを見て、自分が今やっている仕事は何か、集中すべきは何なのか考えたことをコメントもらえると嬉しいです。

1. 採用

必要なスキルやスタンスを持つ人材を見極め、チームに迎え入れる仕事。単なる人員補充ではなく、チームの未来像や事業の方向性に沿った“仲間探し”。

2. 仕事割り振り

誰が何を担うかを決め、リソースを最適に配置する仕事。スキル・負荷・成長機会のバランスを見ながら、個とチームが両立する形をつくる。

3. 評価

パフォーマンスや成果、姿勢などを観察・判断し、適切な評価を行う仕事。報酬や役割への反映だけでなく、本人へのフィードバックや成長の鏡として機能させる必要がある。

4. 人材育成

メンバーが自律的に成長していけるよう支援する仕事。教えるだけではなく、問いを投げかけ、機会を設計し、学びの土壌を耕すことが求められる。

5. ケア

メンバーの心身の状態に気を配り、安心して働ける状態を保つ仕事。モチベーションの変化や疲弊の兆候を察知し、必要なアクションをとることが重要。

6. 組織風土作り

チーム内にどんな価値観や文化が根付くかを意識して形づくる仕事。言動・制度・日々の判断を通じて、「何が当たり前か」をデザインする。

7. 計画企画立案

チームや事業の中長期の方針や打ち手を考える仕事。目の前のタスクだけでなく、その先にどうつなげるかを描く“意味設計”に近い役割。

8. 業務進捗管理

各メンバーやチームが担当する業務が計画通り進んでいるかを把握し、必要に応じて調整する仕事。滞りを解消する潤滑油のような役割も担う。

9. 関係構築

チーム内外と良好な関係性を築く仕事。メンバー間、他チーム、経営層など、複数の関係線を結び直し、信頼を土台に連携を促進する。

10. 例外処理

想定外の事態や責任の所在が曖昧な問題に対処する仕事。判断が難しく誰も拾わない案件に向き合い、チームが止まらないようにする。

11. 業務改善

日々のオペレーションや仕組みを見直し、より効率的・効果的に進めるための仕事。現場からの声を拾い、再発防止や仕組み化を通じてチーム全体の生産性を上げる。

[未来予想]これからの組織とマネージャー像の変化

冒頭で書いた次回のnoteのネタです。「AI時代でも死なないホワイトカラーは仕組みを生み出し管理するストラテジスト」的なことを書こうと思っています。ここではそのネタに軽く触れます。

後日書きました。

管理職はこれから減っていく

これからの時代、管理職は少しずつ減っていくと思っています。
むしろ、「管理職が必要になるほど人を集めすぎない」「労働集約を前提にしない」という方向へ、組織のあり方自体が変わっていく。

小さな意思決定単位=ミニリーダーの時代

その代わりに増えていくのが、小さな単位で意思決定し、動いていけるミニリーダーの存在です。
弊社で言えば「Owners」にあたるような人たち。
彼らを中心に、少人数ながら目的を持った自律的なチームが生まれていくはずです。

ピラミッド型組織はなぜ減っていくのか?

「管理職が完全に不要」とまでは言いません。フェーズや役割によって必要なケースも当然あります。
しかし、今後は多層的でピラミッド型の組織構造は確実に減っていくでしょう。

なぜなら、その構造は

  • 意思決定が遅く、

  • 柔軟性に欠け、

  • 変化に対応しづらい

という、いまの環境にとっては致命的な弱点を抱えているからです。

「管理職」という言葉が持つ罠

そもそも「管理職」という言葉自体が誤解を生みやすい。
“管理”が目的化してしまい、本来達成したかったはずの目的がぼやけてしまう
仮に管理が必要だったとしても、その先に何を実現したいのかを見据えることが重要です。

これからのチームに必要なのは「意志」

これからの働き方で問われるのは、役職ではなく「どんな意志で動いているか」です。
肩書きで動くのではなく、目的や意味に基づいて行動する人たちが価値を発揮する時代。
そんな意志を軸にしたチームづくりが、これからの組織には合っていくと考えています。

[感想]大量に新卒一括採用できる会社すごい

大量に新卒を一括採用できる企業を見ると、素直にすごいなと思います。
自分も新卒採用していただき育てていただきました。本当に今更すごいことだと思うし大感謝しています。
大量の新卒を可能にするだけの強固なビジネスモデルがあるということの証明です。

こうした会社では、採用された人たちが組織の中で駒として機能するように設計された仕組みが存在している。
それは悪い意味ではなく、役割と再現性が明確で、大人数でも成立する構造があるということです。

ところで採用された側の視点で考えてみると、ちょっと面白い問いがあります。
自分は「ビジネスモデルの中の駒」として採用されたのか、
それとも、「金のなる木があるから中で次の成長を期待された投資対象」として採用されたのか?
という問いです。この視点から自社を見つめ直してみると、
ビジネスモデルや経営の考え方が、少し違った角度から見えてくるかもしれません。
自分が今いる環境の設計意図に気づくきっかけにもなるはずです。

編集後記 この記事で一番言いたかったこと

マネージャーが一番現場だから!だってボスじゃなくてリーダーでしょ!
シニアとかマネジメントになったからって、身を引いたり遠慮したりしちゃう人いるけど!
「いや、あなたが成長しなければ組織の成長の蓋になるわけなので、成長機会ガンガン取りに行けよ」
と思う。
そして機会とは何かの解像度を上げていけ。
任せるにしても積極的に身を乗り出して任せろ。
「それは相手の成長機会を奪うから」とか言ってられるほどあなたは成長しきっているのかと言いたい。
しかも挙げ句の果てに「成長したいからプレイヤーに戻ります」とか言ってしまうそこのあなた!
















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