ウズベキスタンAI法改正 / 中央アジア初のAI立法が選んだ手法 雑感雑感
Ⅰ 改正の位置づけ
中央アジアのAI規制に関する情報は、欧米や東アジアのそれと比較して、日本語で入手しうる分量が限られている。ウズベキスタンにおいて、AIに特化した初の法改正が2026年1月21日に発効したとの報に接したので、手元の資料をもとに整理し、若干の所感を述べておきたい〔注1〕。
今回の改正は、ウズベキスタン共和国法「人工知能の利用から生じる関係の規制に関連する特定の立法行為への追加および修正の導入について」(法律番号ЗРУ-1115)として採択された。AI単独の基本法を新規に制定するのではなく、既存の「情報化に関する法律」(2004年2月11日制定、No. 560-II)と「行政責任法典」(1995年4月1日制定)の二法を改正し、AI固有の規律を埋め込むという手法が採られている。
Ⅱ 改正の内容
1 AIの法的定義
改正法は、情報化法第3条にAIの定義を初めて導入した。その内容は、人間の認知機能(自己学習および意思決定を含む)を模倣し、特定のタスク遂行時に人間の知的活動の結果に匹敵する成果を得ることを可能にする技術的ソリューションの集合である〔注1〕。
この定義は特定のアルゴリズムや技術構造に依拠しない。機能面の特性、すなわち認知機能の模倣とタスク特化的な成果に焦点を当てた、技術中立的な構成となっている。将来の技術発展に対する一定の耐久性を持たせる意図があると読める。
2 情報化法第71条の新設
新設された第71条は、AIを情報資源の作成および情報システムの運用に利用する場合の一般原則を定める。
第一の原則は、危害防止と権利尊重である。AIを用いて作成された情報資源およびAI技術に基づき作動する情報システムは、人の生命、健康、自由、名誉、尊厳を害してはならず、その他の不可侵の権利を侵害してはならないとされる〔注1〕。
第二の原則は、法的に重要な決定における完全自動化の禁止である。個人の権利と自由に影響を与える法的に重要な決定を行う際、AI技術を用いて作成された情報資源および情報システムの結論にのみ排他的に依拠することは許されない〔注1〕。いわゆるHuman-in-the-loopの法定義務化であり、公的機関の決定のみならず、個人の権利と自由が影響を受ける場面であれば民間主体の決定にも及びうる規定ぶりとなっている。
3 行政責任の新設
行政責任法典にも対応する改正がなされた。情報化法第121条第1項が改正され、AI技術を用いた個人データの違法な処理およびマスメディア、電気通信ネットワーク、インターネットを通じた当該データの拡散が、行政責任の独立した根拠として追加された〔注1〕。
制裁については、行政責任法典第462条に新たな第2部が設けられ、違反者には50から100基礎計算単位(BCU)の罰金に加え、行政違反の対象を構成する物品の没収が規定されている〔注1〕。AI技術による個人データ処理とその拡散が、通常のデータ保護違反とは区別された固有の類型として位置づけられた点に、立法者の認識が表れている。
Ⅲ 若干の検討
既存法の改正による規律の導入という手法は、AI基本法の立法に何年もの時間を要するリスクを回避する実際的な選択である。定義規定、行為原則、そして制裁規定を組み合わせた三層の構造は、少ない条文数で一応の規制体系を完結させている。
ただし、いくつかの点は今後の解釈と運用に委ねられている。Human-in-the-loopの要件について、人間による監督の具体的な水準や方法が法文上は明らかでない。形式的な人間の関与で足りるのか、実質的な判断権限の留保が求められるのかは、下位法令や行政実務に依存する。この点はEU AI規則における高リスクAIシステムの人間による監督要件と類似の課題を含んでおり、他国の運用実績が参照されることになるであろう。
また、BCU建ての罰金が現実の抑止力としてどの程度機能するかについても、制裁水準の十分性という観点から検討の余地がある。AI関連のデータ処理違反は被害が広範に及ぶ可能性があり、違反によって得られる利益との均衡が問われる場面が想定される。
2025年5月の法案段階から最終形への変容についてはDentonsが先行するアラートで分析を行っており、法案審議過程の詳細は同記事に譲りたい〔注1〕。
〔注1〕 Dentons "Uzbekistan adopts first AI-focused amendments to information and administrative laws" (Jan. 29, 2026), available at https://www.dentons.com/en/insights/articles/2026/january/29/uzbekistan-adopts-first-ai-focused-amendments-to-information-and-administrative-laws, last visited Feb. 10, 2026.
(マガジン)「AIと法-雑感」
※目次は以下を参照
note総則規約3条2項前段
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