娘との会話で、また前に進めると思った夜
離れて暮らす娘に会えてよかった。
言葉を覚え始めて、日に日に可愛らしさを増していく孫。夫婦二人で、お互いに協力しながら育てている姿を間近で見られて、私はすっかり安心した。
夕食のとき、「この子を寝かしつけたら、一緒にお風呂に入ろう」と娘からの提案。
我が子と過ごす時間を、なによりも大切にしているやさしいパパがいても、寝かしつけはママが一緒じゃないとだめらしい。
コンコン!と、ノック音が響く。
扉の向こうには
「やっと、今寝たよ。お風呂に行こうね」
と、ニコニコした娘が立っていた。
海沿いのホテルには、開放感のある露天風呂もあった。
ぼんやりとした明りがともる二人だけの大きな湯船は、音も景色も気にならない極上な空間だった。
漆黒の空と海の気配だけを感じながら、透明な湯の中でからだと気持ちがじんわりとゆるんでいった。
久しぶりに、一緒に過ごせた孫の様子をあれこれ話しながら。
新米パパの子育ての腕前に感心した私は、
「育児書でもたくさん読んで勉強してるの?」と、娘に聞いてみた。
すると、予想に反して返ってきたのは、
「そんなことないよ。パパは自分の感覚でやってる。それに、私ともいろんなことを話しながら、あの子の世話をしてるんだよ」
と、はっきりした自信に満ちたひと言だった。
ハッとさせられると同時に、胸の奥からこみ上げてきた。
私が子どもたちのために精一杯やってきたことは、言葉ではなく体現することで伝わっていたんだ。
相手を尊重し、向き合いながら対話を続けることの大切さ。
今、娘が大人になり、私がもっとも伝えたかった人としての関わり方が自然にできている。
娘からのうれしすぎる言葉から、いままでの自分の人生の意味を振り返ってみた。
記憶に残らないほど、時間に追われて、無我夢中の時期もあった。
子どもの日常を守ることを第一にしていたあの頃は、日々の暮らしを整えるだけで年月が過ぎていた。
でも、ちゃんと私の思いが伝わってたのだと思う。
そして、子どもと向き合って積み重ねた日々そのものが、今の私を支えている。
目の前で気持ちよさそうに湯につかる表情を見て、私もあたたかい気分につつまれた。
ふと、大人になった娘の姿から、これからの自分もまた前に進める気がした。
