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rockcat
照射|欧陽菲菲の夜|あわいの掌編集4
春の渡りが終わりに近づくころ。
思いも寄らない鳥が、我が町をかすめていく。
──夜中に鳴く鳥は何?
ある晩、妻がそう尋ねてきた。
夜半に鳴く鳥といえば、フクロウとか、ホトトギスとか、ヨタカとか、ミゾゴイとか。珍しめなところでは、ジュウイチとか、アカショウビンとかもある。
鳥は鳥目だと思われているけれど、夜渡る鳥もいる。
──全部違う。寂しげな声で、フィーフィー言うのは誰?
これまた抽象的な。
フィーフィーと言えばウソかゴジュウカラだが、夜には鳴かへん。
その口まねは、ほんまに正しいんか。音程は取れてるんか。そのあたりがいささか怪しい相方を思い、わたしは鼻白んだ。
その夜、湯船に身を沈めると、ふいに、あの遠い記憶が浮かび上がる。
夜半の場末のバーの、悲しげなフィーフィーと言うたら──。
朧げな輪郭と飲み残したウィスキーの香りが、鼻孔の奥深くで燻っている。
胸の奥が、少しだけ波立つ。
──言ったら?
ラヴ・イズ・オーヴァー?
フィーフィーならば、ラヴ・イズ・オーヴァーに相違あるまい。黒曜石のような毛色と、あの声色の気配だけが、いまも耳朶の奥深くに沈んでいる。
もうそれでエーヤン。終わりにしよう。きりがないから。
そう荘厳に告げてみせると、今度は妻が、静かに鼻白んだ。
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