あすみ小学校ビレッジ ⑩七夕集会 連載恋愛小説
旧あすみ小学校時代からの伝統行事「七夕集会」を去年復活させた千種。
農家さんに協力してもらい用意した巨大な笹10本。それらを飾りつたあと講堂の両側に設置し、盛大に祝う。七夕をテーマにした出し物が目玉で、今年は劇に決まった。
脚本・演出は光石善。織姫の父・天の神様役としてオサムも特別出演。寺子屋の面々は大忙しだ。
「え~、それではここで。村長からひとこといただきます」
「え? 村長……? 挨拶してないんだけど」とこそこそ泉にささやく龍次。
もう紹介は済ませています、と小声で伝える。
マイクを向けられても微動だにしない、日に焼けた精悍な横顔。
「ワン!」
その一声に、どよめきが起こった。
「これは吉兆だ。いいことが起こる気しかせんな」とオサムはご満悦。
お役目を終えた村長に、瑠美はおやつを献上している。
「2年ぶりくらいかな。め……ったにほえないんだよね。自分が犬ってこと忘れてるのかも」
龍次はほっとしたような半笑いのような表情。
「スミ氏が村長でしたか。それは存じ上げませんで……」
あるときは駄菓子屋「おしゃべり天国ルミ」の副店長。またあるときは「あすみ小学校ビレッジ」の広報部長であり村長。
写真を撮られてもいやがらないので、ビレッジのアカウントはスミくん祭りだ。
「おしゃべり天国……ってなんかスナックの店名みたいなんすけど……」
瑠美は喫茶店か駄菓子屋で迷ったらしい。どちらにしても、近所のひとがふらっと立ち寄り近況を話す、語らいの場にしたかったと。
子どもはもちろん、元・子どももテンションが上がり、店先のテーブル席では、瑠美世代が女子会と称して話に花を咲かせている。
名実ともに彼女の夢は現実となった。
「毎朝起きたらワクワクして飛び起きるよ~。ストレッチしてからでないと、関節ヤバイけどね」
駄菓子屋は、どの世代をもなごませくれる特別な存在。
「今がいちばん楽しい」と言いきる看板娘であり店長、瑠美本人も内側から光を放っている。
ご近所さんの最大の関心事・恒例「きらきらのど自慢」も忘れてはならない。
幼児は『きらきら星』や『星に願いを』などの定番ナンバーを。おませな女子は『三日月』を熱唱。やんちゃな男子は『昴』をなぜか英語で歌い上げる。
いちばんの喝采を浴びたのは、ほかでもない瑠美。
駄菓子屋で留守を守るスミ村長と、竹細工店を営むおとなりさん。
彼らに感謝しつつ、コーラス部で鳴らした美声を活かし『星のかけらを探しに行こう』で聴衆を魅了。前もって録音してきた自前コーラスとハモる凝りよう。
見事、優勝トロフィーを手にし、この日のために用意したというスパンコールの衣装は誇らしげにきらめいていた。
(つづく)

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