あすみ小学校ビレッジ ⑫中庭ピクニック 連載恋愛小説
ビオトープ施工は、業者に頼むことが決まった。
とはいえ、すこしでも費用を安くするため、素人でもできる作業は大人たちが担当した。観光局職員も、かわりばんこにフル稼働。
大きな石を取りのぞいたり草刈りをしたり。植栽用にふかふかの土と入れ替えたり。
暑い盛りなので熱中症を警戒し、泉はきめこまかなサポートを心がけた。
1時間にいちどは水分補給。経口補水液や濡れタオルをスタンバイ。つらそうなひとには早めに声かけし、休憩をとってもらう。
のべ人数約100名。土日を中心に1カ月強。雨天で中断することもほとんどなく、お盆期間に入る前にすべての作業が完了した。
竣工式がわりに、みんなでお弁当をひろげ、中庭ピクニック。
「光石さん、大活躍でしたねえ」
オサムにねぎらわれているのは、善パパ。日曜大工が趣味らしく、ベンチや柵などをプロ顔負けの技で仕上げた。
「いやいや……言い出しっぺの親としては、せめてもの罪滅ぼしです」
「ぼく、犯罪なんかしてないもん」とぷんすかしている善を、オッサン先生は穏やかにフォロー。
「むしろ功労者だよなあ。気持ちいいなあ」
完成したてなので森のよう、とまではいかないが。
造園会社の担当者が厳選してくれた樹木や植物が風にそよぎ、目に涼やか。なによりも、ちいさな滝の水音、水面のきらめきは、これまでの苦労を洗い流してくれる。
「水があると風も涼しいね!」
ママ特製からあげで、ほっぺをふくらませている善。
これから毎日、生き物調査をするのだと、大いにはりきっている。
彼のことだから、ちょっとした論文ができるくらいのデータが集まるだろう。
それにしても善ママの気合いには頭が下がる。
泉は仕出し屋さんでお弁当を発注しようとしたのだが「任せてください」と却下されたのだ。仕事でまともに手伝えなかったから、と夫婦そろって律儀なふたりである。
夏らしく見ためも鮮やかな惣菜セットが届き、一堂はため息をついた。
タコとわかめの酢の物、枝豆トウモロコシごはん、カリカリ梅と塩昆布のいなり寿司、海老のガーリック炒め、大葉とチーズのチキン春巻き、パプリカ入り酢豚、ツナとレタスのサラダスパゲティー。
あまりのおいしさに「お料理教室ひらいてくれないかなあ」と本音がこぼれてしまった。
「え? 泉ちゃん。包丁こわいの?」
「それは大丈夫だけど、いまいちなんだよねえ……センス?」
善はなぜか龍次に話を振る。
「りゅうちゃんはこまかいことするの好きでしょ。ごはんもつくれる?」
ジオラマの構想でも練っていたのか、彼は眠そうにまばたく。
「ええと……うん。たいていのものなら」
「だって! ぴったりだね」
笑いかけられても反応に困るんですが……
「麺類はパパ担当だよ~。パスタとかおいしーんだ」
「善くんの妹になりたいわあ」
龍次が眉をあげ、声の抑揚もなく指摘する。
「それを言うなら、歳のはなれた姉では?」
「言葉の綾です」
(つづく)

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