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わからないニュースをカフェで話します 4 ─失言と読み違え─

【SF小説】新・木漏れ日荘のアオイさん
から飛び出した3人がカフェで話します。


今回は、「総理官邸のオフレコ」


登場人物
アオイ:木漏れ日荘のヒューマノイド
シンイチ:ガラの悪い正論オヤジ
白石:ボケ&ツッコミ担当

クリスマスが近いカフェこもれび。
雪は降らないけど風は冷たい。

冬枯れの景色の中、
薪ストーブの薪が爆ぜる音が暖かい
カフェこもれびのテーブル席の3人。


官邸のオフレコ発言の真相に迫ります。


シンイチ:どうもわからん。
白石:どうしたん兄い。
アオイ:白石さん、これです。

アオイがコーヒーの横に置いた
タブレットのニュースを指さす。

白石:おお、これかいな。ふうん?

意味ありげにシンイチを見る。

シンイチ:なんじゃ白石。言いたい
事があるんやったらさっさと言え。

白石:ワシ兄いの言いそうなこと
わかるけえ。フフン。この官邸の
やつが脇が甘いって思うて、機嫌悪いん
じゃろ?

シンイチ:それはない。

白石、アオイと顔を見合わせる。

白石:そうなん?
いくらオフレコいうても、考え甘い!
とか言いそうやん。

シンイチ:無論じゃ。だがどうも
腑に落ちん。

白石:まぁたまた。あんまりややこしい
こと考えよったらハゲるで?

シンイチ:ワシの家系はハゲん!

シンイチはコーヒーを啜り腕組みする。

アオイ:さっきからこの調子なんですよ。
白石:いつもと違うのう。調子狂うわ。

2人のひそひそ声にも反応しない。

シンイチ:アオイ、オフレコって
記事にはせん、という約束じゃろう?

アオイ:一応今回はそう受け取れます。

シンイチ:一応今回は、とは
どういう訳じゃ?

アオイ:オフレコって言っても、かなり
グレーゾーンはあるんです。

白石:記事にせんのではないんかい?

アオイ:まず法的拘束力はありません。
また、情報源をぼかして内容は報道する
ものから、一切報道しないものまで
あります。

白石:もちっと具体的に頼んます。

アオイ:はい。まずオフレコというのは
いわば情報源と報道側の信頼関係の
約束ごとだということです。会社員の
守秘義務のような拘束力はないんです。

それと、白石さんも時々、こういう
言い方聞きませんか?政府筋によれば
とか、首相周辺、あるいは関係者とか。

白石:ああ、よう見るのう。

アオイ:あれが情報源をぼかした報道。
あれもオフレコなんです。

白石:なんと。そうやったんか!

アオイ:はい。もう一つは情報を
教えてはもらうけど、報道しないという
ものです。これは報道されないから
私達知らないです。

シンイチ:つまり、オフレコにも
色々あるっちゅう訳か。ただ、それを
差引いても、違和感があるんじゃ。

白石:お?それを教えてつかあさい。

白石は片手で拝む真似をする。
話が込み入ってきそうなので、
アオイはコーヒーを3人分追加した。

シンイチ:核武装すべきと個人的
意見を言う。ただし非核三原則を
首相は変える気ないし、NPT条約もある、
国論を二分するのも、わかり切っとる。
とうてい無理、ということじゃな。

まず、個人的意見を言うのは無防備すぎる。
首相周辺にそんなことをする人間がおるとは思えん。

アオイ:確かに。

シンイチ:次にオフレコにも色々ある、
とは言うものの、よ。どうも報道しない
約束での話だったような書き方じゃろう?

白石は、最初の報道をタブレットで読み返す。

白石:確かにのう。報道せんつもりが
事が大きいので報道に踏み切ったと
わざわざ書いとるのう。

アオイ:違和感というのは?

シンイチ:やり方が中途半端じゃないか?
報道しない約束を一方的に破ってまで
やるからには、こんな事は許されん、
そう思ってのことじゃな。

白石:そりゃ核武装となりゃあのう。

シンイチ:白石よ、お前日本が核武装
できると思うか?

白石:そらあ…やろうと思えばできるじゃろう?なにせ技術大国なんじゃけえ。プル…なんとかだって、あると聞いたで?

シンイチ:ほうか?

シンイチはそういうと、ある記事を
示した。

白石は、難しい話は頭が痛うなる…と
いいながら読み終わった。

シンイチ:どうじゃ。

白石:兄い、あかん。こら絶対無理じゃ。

シンイチ:そんなこと、政府の安全保障の
要人が、わかっとらんと思うか?

白石:そらわかっとるじゃろ。

シンイチ:それとな、この御仁の発言が
けしからんから報道する、もしそう
いうことなら、なんで実名ださんのか?

白石:そら報道せんつもりじゃけえ。

シンイチ:そがいなこと通用するか。
報道せんと約束して聞いた事を、約束
破って報道するんで?

アオイ:そこから先取材は無理ですね。

シンイチ:それよ。こんなことしたら
次から取材お断り、あるいは
もう誰に何を聞いても表向きの話しか
でてきやあせんだろうが。

お前、嘘つきに重要なこと喋るか?

白石:……そらあ……無理。

シンイチはずい、とコーヒーを飲む。

アオイ:取材できなくなれば、報道は
大変なリスクです。

事前の約束はこうでした。でもどうしても、報道するしかないと判断しました。

そう言って、洗いざらい出さないと
世論に自分達が正しいと訴えられません。

シンイチ:現にマスコミの態度に不満で
これならオフレコは今後なし、という
意見も政治家から出とる。

アオイ:そうですね。

タブレットをスクロールして確認。

シンイチ:これ長い目で見りゃあ
マスコミの大チョンボよ。

こっから先、取材できんまま、本当に
良からぬ検討したって国民には知る由もないわけじゃのう。

白石:そらそうかも知れん。
まあワシはそんなトラップに引っかからん
けどのう。

シンイチ:じゃけえ、おかしい。
…そうじゃ、最初の報道、日テレじゃろ?

アオイ:はい。最初が日テレ。その後
各社が追随してます。

白石:それがどうかしたん?

シンイチ:そういやアメリカが、
日本はNPT条約の核兵器非保有国として
頑張れみたいな報道が、直後に出たのう?

アオイ:そうですね。アメリカは日本の
核武装なんか絶対反対ですから。

シンイチ:これ多分【観測気球】じゃな。
マスコミも1枚噛んどる。

白石:兄いの話今日は一段とわからん。

シンイチ:ようきけ。これははじめから
報道される前提のオフレコよ。

だから、中途半端に出して、政府が
追い込まれすぎんように名前は出さない。
一方、取材拒否にもならん。

いっぺん、公式ではないルートで
核武装って言い出したら、どの程度反応
あるか、確かめてみたかった。

アオイ:メリットが少ないような…

シンイチ:政府は責任を負わずに反対
が多そうな意見を出せる。

マスコミは、高市政権に批判的、平和
推進という「役割」をリスクなく演じる。
この御仁も守ってもらえるから大丈夫。

アオイ:うまく説明つきますね。

白石:そがいなうまくいくかえ。

シンイチ:最初に報道したのはどこじゃい。

白石:え?

シンイチ:日テレじゃろがい。政府と
バチクソいう局でなかろうがい。
政府とべったり、いう悪いイメージも
これでちっと挽回できろうが。

白石:そらそうやけど。

シンイチ:あらかじめ、アメリカにも
匂わせてあったんじゃねえか?
反応が、えらい早かったのう?

白石:ここまでする狙いはなんじゃい?

アオイ:それは私も気になります。
世論の反応を見る。マスコミの約束破り
という信頼引き下げができる、
それはわかります。

でも官邸にこういう脇が甘い人がいて、
核武装論が検討されていると思われる
これは、とてつもないリスクです。

本当に、ちょろい人がうっかり喋って
今官邸頭抱えているんじゃありませんか?

シンイチはすっかり冷めたコーヒーを
飲み干した。

シンイチ:無論その可能性もある。
計算づくではなく、つい言っちゃった
それで、これ幸いと成り行き見ながら
核武装に向けての議論が進みゃあ
損はないということかも知れないのう。

白石:兄いは核武装反対じゃったろ?
構わんのかい?

シンイチ:構わんよ。議論はな。
なんのメリットもない、それが確認
できるだけじゃ。

白石:そんなもんかのう。もう一つ
納得いかんような…

アオイ:白石さん、なんか思いついたんですか?

白石:いや、記事にせん約束はしとった。
で、聞いてるうちにえらいこと言い出した。

ええと、ほんで…

マスコミは賭けに出た。オフレコ破りで
核武装すべき、と言うたと見出しで煽る。

シンイチ:ほう。ほれで?

白石:マスコミは一気に反高市政権の
世論が起こると読んだ。そうなりゃ
約束破った事はチャラじゃ。この人物
の名前やら肩書も次は報道する気よ。

シンイチが身を乗り出す。ほお。

白石:ところが、世論は違った。
この人物の脇の甘さを指摘する声、
それはあったけど、一緒ぐらい
約束破ったマスコミが悪いと言う
世論も出た。

シンイチ:そうじゃの。

白石:おまけに、ちゃんと議論すべきじゃ、核武装する、せん、できる、できん、
いろんな意見がではじめた。

気がつきゃ、国民は議論したいと分かった。
少なくとも、マスコミが期待したような
反高市政権と言う大きい世論は全くでん。

官邸も冷や汗かいたが、マスコミは
信用なくした上、世論を理解できてないと
突きつけられて、うやむやにしたいんじゃ。

アオイ:白石さんすごいです。

シンイチ:ううむ。今回は一本取られたわい。やるでないか?ん?

アオイ:官邸もチョンボ。でもマスコミが
もっと大チョンボ。世論は感情的な
嫌悪ではなく議論を求めていた。

シンイチ:もっと言えば、核武装も
やむなしと思う国民がおるほど、
近隣諸国への反感がつのっとるのか、
いろいろうまくいかん憂さ晴らしか。

まあ、計算づくの観測気球か、お互いミス
をした挙句国民の本音が見えだした
そのどっちかじゃ。四分六で白石じゃろうな。

白石:ワシもバカではないんじゃ。
ヘッヘッヘ。

シンイチ:そういやアオイ、この記事
有料にならんのか?ワシ今月、小遣い
厳しいんじゃけどのう?

アオイ:マスコミより誰よりお父さん
あなたが悪質です!この話でお金儲け
する気だったんですか!

白石:道理で、ようけ喋る思うたら。
兄い、それは悪いのと違うか?

シンイチ:ほんなこと言うたって
所詮この世は銭がすべてじゃろうがい。

アオイ:この銭ゲバ。せっかく
ちょっと読みが鋭いと思ったのに。
あんみつはなしでいいですね。

シンイチ:待てまて!そりゃ殺生じゃい。

アオイ:この記事は有料化しません。

白石:兄い…これは、しゃあないど。


官邸のうっかりの犠牲者がまた一人。


最後までお読みくださりありがとうございました。






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