トラック運転手の年収485万は、長い労働時間の対価だった
給料の額面は、悪くない。でも今月も、家にはほとんどいなかった。
トラック運転手の給料は、金額で決まっているようで、本当は「拘束された時間の長さ」で買っている。額面の裏に、それだけの時間が貼りついている。
「トラックは稼げる」と、よく言われる。実際、大型トラック運転手の平均年収は485万円(厚労省・令和5年)。全産業の平均と、だいたい同じだ。
でも、隣に労働時間を置くと、見え方が変わる。
規制前の大型ドライバーは、年2,544時間(令和3年度)。全産業平均は2,136時間。年に400時間、月にすると30時間以上、長く働いていた。
毎日に直せば、1時間。家族と過ごせたはずの1時間を、毎日、ハンドルとその周りに渡していた。
そして2024年問題で、その「長く働く」に上限がかかった。時間で年収を保つやり方が、封じられた。
なぜ物流だけ、「時間を伸ばす」しかなかったのか
ITの仕事は、道具を使えば、同じ時間で稼ぎを増やせる。最近はその道具が賢くなって、生産性がどんどん上がっている。
でも、運転はそうはいかない。
トラックは、道路を200kmでは走れない。宅配だって、一人が人の10倍配ることはできない。
生産性が、「人の物理的なスピード」に縛られている。
だからこの業界は、稼ぎを増やす道が「時間を伸ばす」しかなかった。
その唯一の手段に、2024年問題で上限がついた。自動運転は、まだ先の話だ。
運転は速くできない。なら、運転以外の時間を削る
ここで一つ、見落とされがちなことがある。
ドライバーの拘束時間は、ぜんぶが「運転」じゃない。
点呼。点検の記録。日報。伝票。荷待ち。戻ってからの経費の整理。
——どれも要る。でも、どれも「運転」じゃない。
そして運転と違って、こっちは短くできる。人の物理スピードに縛られていないから。
年収485万を生んでいる「拘束時間」のうち、運転以外の部分を剥がせれば、同じ手取りのまま、拘束時間そのものが短くなる。
時給で見れば、上がる。家に帰れる時間が、増える。
月曜からできる、最初の一歩
まず、ドライバーの1日を、「運転」と「運転以外」に分けて書き出す。
点呼、日報、伝票、経費、資材の発注——「これは運転じゃない」に線を引く。
線の向こうを、2つに振り分ける。
ひとつは、今いる内勤やパートに渡せるもの。月末のレシート整理を、深夜に運転して帰ってきた人間がやる必要は、たぶんない。
もうひとつは、残すけど簡単にできるもの。手書きの日報を、音声でメモするだけにする、とか。
大げさなシステムは要らない。順番は、人の振り直しが先。道具は最後でいい。
物流のプライム上場企業で、現場の業務改革に携わってきた。
そこで何度も見たのは、運転以外の事務が、ドライバーの時間を静かに削っていく光景だった。
運転の時間は、もう増やせない。上限がついた。
だから次にやれることは、運転以外の時間を、どれだけ運転に——そして家に——戻せるか。
それしかない。だから、書いている。
