立山黒部アルペンルートの旅のはじまり|膝の上を降りた日、移動時間に余白が生まれた(2014年8月)
大宮駅の新幹線ホームに上がった瞬間、
さっきまでの空気がふっと切り替わった気がしました。
駅構内の通路で押し合っていた人の流れが、
少しだけほどけて、足音の響き方も変わる。
そのまま流れるように乗り込んだ、長野新幹線の車内で、
3つ並んだ席に、家族でそのまま座りました。
この記事では、子どもの指定席を初めて確保した新幹線移動で、
移動時間の質がどう変わったのか、そのときの感覚をたどっています。
<この旅の準備の記事はこちら▼>
子どもの座席は必要?|未就学児でも「あえて席を取るか」迷った列車移動の実体験|げじげじくん|旅好きのアラフィフ
🚅窓に顔を近づける、その距離の変化
3列シートのいちばん窓側に、子どもが座りました。
それまでは、膝の上か、
少し無理のある姿勢での移動が当たり前だったのに、その日は違いました。
自分の席に、きちんと収まっている。
発車してしばらくすると、子どもは前のめりになって、
窓に顔を近づけていました。
ほとんど額が触れそうな距離で、外の景色をじっと見ています。
話しかけても、返事は短くて、すぐにまた外へ視線が戻る。
その姿を横から見ながら、ああ、と思いました。
抱えていなくてもいいんだ、と。
🚅「後で食べる」と言った朝
用意していた朝食を渡そうとすると、
「あとでいい」と言われました。
いつもなら、
タイミングを見て食べさせることを考えていたのに、
その日は、少し手を引きました。
そのまま、景色を見続けている。
しばらくして、背もたれに体を預けるようになって、
そのまま眠りました。
窓のほうに少し傾いたまま、静かに。
座席で眠る、ということ自体が、
これまであまりなかった気がします。
🚅膝が軽くなった分だけ、考えなくてよくなる
子どもを膝に乗せていないというだけで、
身体が少し軽くなりました。
でも、それ以上に変わったのは、
気にしていることの量だったと思います。
落ち着いているか、周りに迷惑をかけていないか、
姿勢は苦しくないか。
そういう確認が、ひとつずつ減っていく。
気づくと、自分も背もたれに体を預けていました。
ほんの短い時間だったはずですが、眠っていたと思います。
🚅到着前の、静かな車内で目が覚める
長野に着く少し前、自然に目が覚めました。
車内は静かで、誰かが話している声も、
どこか遠くにある感じがします。
子どもはまだ眠っていて、妻は窓の外を見ていました。
何も起きていない時間が、そのまま流れている。
移動しているはずなのに、どこか止まっているような感覚でした。
🚅席をひとつ増やしただけで、変わったもの
あらかじめ、子どもの席を確保するかどうかは少し迷いました。
金額としては、少なくはない出費でした。
ただ、その一席で変わったのは、
単に座れるかどうかだけではなかった気がします。
・抱えなくていい身体の余白
・気にし続けなくていい時間の余白
・周りに対して少しだけ静かでいられる安心感
そういうものが、ひとつずつ増えていきました。
移動時間は、何かに対応し続ける時間にもできるし、
何も起きないまま過ぎていく時間にもできる。
その切り替えが、
事前の選択で少しだけ変わることがあるのかもしれません。
バスに乗り換えて扇沢へ向かう頃には、
さっきの車内の静けさが、まだどこかに残っていました。
それが、あとから効いてくるような感じで、
その日の移動は、思っていたよりも長く感じませんでした。

(つづく)
<次の記事はこちら▼>
立山黒部アルペンルートの旅|黒部ダムで、子どもが「怖い」と「見たい」を同時に持っていた日(2014年8月)|げじげじくん|旅好きのアラフィフ
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