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テーマパークで学ぶ医療統計 第2章

博士「太郎くん、そういえばファストパス買ったかい?」

太郎くん「あ、忘れてた!」

博士「あらら。では待ち時間に医療統計についてどんどん学んでいこう。」


1️⃣ファストパスから学ぶ オッズ比

博士「次の攻略すべき相手は、オッズ比だ。
医学論文ではORと書かれているやつだよ。」

太郎くんオッズって競馬とか競艇のイメージなんですけど。」

博士「それが混同する理由だね。
競馬で使われるオッズは配当の数字なんだ。
それに関しては一度忘れた方がいいね。」

太郎くん「分かりました。忘れます!
改めてオッズ比について教えてください。」

博士「じゃあ早速質問だよ。
ファストパスを持っている人と、持っていない人を比べた時、1時間以内にそのアトラクションに乗れる【可能性】はどれくらい変わるだろうか。」

太郎くん「それはファストパスを持ってるんだから、可能性は何倍も高くなるんじゃないですか。」

博士「そうだね。でも、『何倍高い』と言っても、『かなり高い』『少し高い』では曖昧だよね。数字で表したいよね。」

太郎くん「そこで使うのがオッズ比ってことですか?」

博士「その通りだよ。オッズ比はオッズの比のことだ。じゃあオッズが何かをまず説明しよう。

来園している200人に質問。
ファストパスあり100人、ファストパスなし100人の内訳が以下のようなものだったとする。

博士「オッズとは【成功した人】÷【成功しなかった人】で表される数字なんだ。成功した人は、成功しなかったよりどれだけ多いの?という指標だよ。」

太郎くん「なるほど。つまり、

ファストパスありの人のオッズは
80
20🟰4

ファストパスなしの人のオッズは
20
80🟰0.25

博士「その通り。そしてオッズ比は文字通り、両者のオッズの比だ。」

太郎くん「4➗0.25🟰16
つまりオッズ比は16!

博士「つまり、ファストパスを持っている人は、持っていない人に比べて、
1時間以内に乗れるオッズが 16倍ということなんだ。

オッズ比🟰その事象の起こりやすさ

と認識して貰えばいいと思うよ。」

太郎くん「つまり、ファストパスを持っている人は、持っていない人に比べて、1時間以内に乗れるという事象16倍起こりやすいことを示しているんだね!」

博士「その理解でいいよ。ファストパスはすごい効果だね。」

太郎くん「じゃあ、これって有意差があるってことだよね?」

博士「いい質問だね。実は、オッズ比が16だからといって、必ず有意差があるとは限らないんだ。

太郎くん「えっ!?16倍も違うのに?」

博士「だからこそ、前回勉強したp値が必要なんだよ。
p値で『本当に差があるのか』を確認して、
オッズ比で『どれくらい差があるのか』を見る。
この2つはセットで考えることが大切なんだ。」

太郎くん「そっか、p値の存在を忘れていました。この表もランド派・シー派の男女比と同じように、p値を出さないといけないんですね。

『1時間以内に乗れた』『1時間以内に乗れなかった』の二択だから、カテゴリー変数ですね。じゃあ、カイ二乗検定を使うんですね!」

博士「その通り!今回のようにカテゴリー変数を比べるときは、まずカイ二乗検定(場合によってはFisherの正確確率検定)でp値を求める。
そして同じデータからオッズ比も計算することができるんだ。」

太郎くん「なるほど!同じ表から、p値とオッズ比の両方が求められるんですね!」

博士「そう。だから、医学論文では、

  • p値:本当に差があるのか

  • オッズ比:どれくらい差があるのか

  • 95%信頼区間:そのオッズ比がどれくらい信頼できるのか

これらが同時に示されるんだ。」

太郎くん「これって医療統計でも同じようにに考えられますか?」

博士「もちろんだよ。
例えば、製薬会社がある病気の治療薬Aを作ったとする。その薬で治った人もいれば、残念ながら治らない人もいるはずだよね。

新規の治療薬Aと従来の治療薬Bを比較したとすると、

ファストパスあり⇨治療薬A、ファストパスなし⇨治療薬B

1時間以内に乗れた⇨治った、乗れなかった⇨治らなかった

に置き換えて考えよう。

こんな表ができるよね。」

太郎くん「さっきの計算と同じとするとオッズ比は16倍。治療薬Aは治療薬Bと比較して、病気が治るという事象が16倍起きやすいことを示しているんだね。」

博士「その通り!その考え方で合ってるよ」

太郎くん「これってp値や95%信頼区間はどうなりますか?」

博士「おそらく医学論文だとこういう表になるはずだ。」

太郎くん「p値が<0.001だから有意差ありってことですね!95%信頼区間は8から31.9で幅がありますね。」

博士「95%信頼区間は、信頼区間全体が1を大きく上回っていること、これが大切だ。この研究では最低でも、オッズ比は控えめに見積もっても8倍ということ。
つまり効果があると考えていいんだよ。」

太郎くん「つまり、この結果は正確と考えていいってことですね!」

博士「そういうこと!」

2️⃣ロジスティック回帰分析と調整オッズ比を理解しよう

太郎くん「ファストパスは最強ってことが分かりましたね。統計って面白い!」

博士「楽しくなってきたようだね。
私も嬉しいよ。ではここから少し、より統計を深めていこう。」

太郎くん「なんですか?怖いです。」

博士「肩の力を抜いて
太郎くん。本当にこの結果でファストパスは最強と言っていいのかな?」

太郎くん「なんてこというんですか。さっき博士と確かめたじゃないですか。ファストパスは16倍の効果があるんですよ!」

博士「じゃあ、仮に、ファストパスを持っていた人に共通点があったらどうなるだろう。

・朝7時から並んでいる人が多い
・テーマパークに慣れている人が多い
・平日に来院している人が多い」

太郎くん「確かに、そういう人達はファストパスを積極的に取りそうですね。」

博士「そうだね。そして、これらの人はファストパスを取りやすいだけじゃなく、ファストパスがなくても1時間以内に乗りやすいかもしれない。」

太郎くん「なるほど!朝早く来れば待ち時間は短いし、慣れている人なら効率よく回れそうです。」

博士「その通り。つまり、これらの共通点は【ファストパスを持っているかどうか】にも、【1時間以内に乗れるかどうか】にも影響しているんだ。」

このように、比較したい要因(ファストパスの有無)と結果(1時間以内に乗れたかどうか)の両方に影響する因子を【交絡因子】というんだよ。」

太郎くん「なるほど!じゃあ、このままオッズ比16倍って言ってしまうと、本当のファストパスの効果じゃないかもしれないってことですね。」

博士「その通り。もしかすると、朝早く来たことや、ディズニーに慣れていることの影響も含まれているかもしれない。」

交絡因子の影響を統計学的に調整して、

【もし来園時間や曜日などの条件が同じだったら、ファストパスの効果はどれくらいか】

を検討することが大切なんだ。」

太郎くん「つまり、交絡因子の影響を取り除いて、本当のファストパスの効果を調べるんですね!」

博士「そういうこと。
その解析の名前は【ロジスティック回帰分析】
そして、その結果として得られるオッズ比を
調整オッズ比】というんだ。」

太郎くん「ロジスティック回帰分析!このことだったんですね!
医学論文でも調整オッズ比って書いてあるのを見たことあります!」

博士「実際の医学研究でも、年齢や性別、病気の重症度などの交絡因子を調整して、本当に治療が効いているのかを評価しているんだよ。」

太郎くん「今回の、ファストパスについて、ロジスティック解析の方法と結果を教えてください。」

博士「もちろんだよ。200人に次の4つの項目を聞いたとしよう。」

・ファストパスを持っていたか
・朝7時から並んでいたか
・テーマパークに慣れているか
・平日に来園したか

そして、最終的な結果として、
【アトラクションに1時間以内に乗れたかどうか】を調べるんだ。」

太郎くん「1時間以内に乗れたかどうかが、今回の結果ですね。」

博士「統計学では、今回のように最終的に調べたい結果を【目的変数】という。

一方で、結果に影響すると考えられる要因を【説明変数】という。
今回は、ファストパスの有無に加えて、

朝7時から並んだか
テーマパークに慣れているか
平日に来園したか

【説明変数】として、すべて同時に解析した。」

太郎くん「ファストパスだけじゃなくて、交絡因子も一緒に解析へ入れるんですね!」

博士「そういうことだね。ファストパスの有無、朝7時から並んだか、テーマパークに慣れているか、平日に来園したかを同時に解析するとこうなる。」

【多変量ロジスティック解析】

太郎くん「ファストパスのオッズ比が、16倍から6.2倍に小さくなりました!」

博士「そこが重要なポイントだね。単純に比較したときのオッズ比16倍には、朝早く来たことや、平日に来たことなどの影響も含まれていたんだ。」

太郎くん「つまり、ファストパスを持っている人が早く乗れた理由のすべてが、ファストパスのおかげではなかったということですね。」

博士「その通り。

来園時間、テーマパークへの慣れ、曜日の違いの影響を取り除いて比べると、

ファストパスを持っている人は、持っていない人よりも、
1時間以内に乗れるオッズが6.2倍だったという解釈になる。これが調整オッズ比だよ。」

太郎くん「なるほど!」

博士「ここから医学論文の話に戻るよ。
次の表を見て、太郎くんの分析を聞かせてくれるかい?」

3️⃣医学論文の表をみて、分析していこう

博士「治療薬Aと治療薬Bを受けた患者がそれぞれ100人ずついたとしよう。
それぞれの患者背景の表はこうだ。」

【患者背景】

太郎くん「治療薬Aの治療成功は60%、治療薬Bの治療成功は65%、p値は0.46なので
治療薬Aと治療薬Bの治療効果に有意差はありません!」

博士「確かに、この表の一番下だけを見ればそういう結論になるね。
でも、さっき話したことを思い出してごらん。」

太郎くん「あっ、交絡因子ですね!」

博士「その通り。患者さんの背景も、治療成功に影響している可能性がある。」

太郎くん「確かによく見ると、治療薬Aのほうが、高齢者や重症例、腎機能が低下している患者さんが多いですね。

これでは、薬そのものの効果を公平に比較しているとは言えない気がします。」

博士「まさにそこがポイントだ。医師は重症の患者さんに治療薬Aを選ぶことが多かったのかもしれない。
もしそうなら、治療薬Aが不利な条件で勝負していることになる。」

太郎くん「だから、単純に成功率だけを比べても、本当の薬の効果は分からないんですね。」

博士「そういうことだ。
そこで、年齢、重症度、腎機能などの交絡因子を一緒に解析して、薬そのものの効果を評価する。

そのために使うのがロジスティック回帰分析なんだ。」

太郎くん「つまり、
【もし患者さんの条件が同じだったら、治療薬Aと治療薬Bで結果はどう違うのか】
これを統計学的に比較するんですね!」

博士「その通り。そして、その結果がこれだよ。」

【多変量ロジスティック解析】

太郎くん「治療薬Aの調整オッズ比は1.85、95%信頼区間は1.01〜3.40、p値は0.046…。
つまり、治療薬Aのほうが有意に治療成功しやすいという結果になっています!」

博士「その通り。
治療薬Aは、もともと高齢者や重症患者など、条件の悪い患者さんに多く使われていた。

それらの影響を調整して比較すると、治療薬Aのほうが治療成功のオッズが1.85倍高かったということだ。」

太郎くん「なるほど!
単純に成功率だけを見ると治療薬Aは不利に見えたけれど、
それは患者背景の違いが原因だったんですね。」

博士「そういうことだ。このように、交絡因子の影響で、本当の治療効果が見えなくなることがある。
だからロジスティック回帰分析で調整することが重要なんだ。」

太郎くん「ところで、治療薬以外の項目はどう見ればいいんですか?」

博士「例えば重症例の調整オッズ比は0.40、p値は0.009だね。
これは、他の条件が同じでも、重症患者は軽症患者に比べて治療成功のオッズが約60%低いことを示している。」

太郎くん「つまり重症の人は、治りにくかったってことですね。」

博士「その通り。
一方で、年齢や腎機能低下、併用治療は、この解析では有意な関連は認められなかった、ということだね。」

太郎くん「それに、治療薬も重症度も、95%信頼区間が1をまたいでいません。つまり、統計学的に有意な関連があるということですよね!」

博士「素晴らしい!よく理解できているね!


今回はファストパスを題材に
オッズ比とロジスティック回帰分析について学びました。

ここまでは、結果(イベント)を比較する解析です。

次回は時間を含めて結果(イベント)を比較する解析について紹介します。

ついに、「ハザード比」と「カプランマイヤー曲線」の登場です。

「美女と野獣」と「ベイマックス」どっちが早く乗れる?

などを題材に、時間を含めて結果(イベント)を比較する解析について学んでいきましょう。


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