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海外エンジニアを受け入れるときに、法務・総務がやるべき3つの準備ステップ


来日までに「想像以上に多い」準備を整理する

近年、優秀な海外エンジニア人材の採用は多くの企業で進んでいます。一般的には、人材紹介サービスを利用することで、ビザ手続きや来日後のサポートまで一括して依頼できるケースも多く、初めての受け入れでは特に心強い選択肢となります。
しかし、人材紹介サービスには費用面での負担が大きい、自社に受け入れノウハウが蓄積されない、といった課題もあります。 特に、今後継続的に海外人材を受け入れていく予定がある企業にとっては、初回から自社で受け入れプロセスを構築し、ノウハウを組織資産として蓄積していくことが重要です。

本記事では、人材紹介サービスを利用せず、採用から受け入れまで自社で担当したGAOGAOの実体験をもとに、GAOGAO経営企画責任者の国分に詳しく話を伺いました。2025年夏にインドネシアから2名の女性エンジニアを受け入れた際の、3つの準備ステップと各フェーズで直面した課題・解決策を体系的にまとめています。

GAOGAOグループ経営企画責任者 国分俊裕
東京大学経済学部卒。ソニーで約8年経営企画管理に従事。その後、タイ・ミャンマーでの医療事業の立ち上げ、大手企業新規事業のDXコンサルなどを経て現職。今回の海外エンジニア受け入れでは、ビザ手続きから住居手配、来日後のサポート体制構築まで、バックオフィス担当者として全体を統括。

入社前の流れを掴む:来日準備の全体像

海外エンジニアの受け入れプロセスは、以下のフェーズで構成されます。特に法務・総務などのバックオフィス担当者が注力すべきは、入社(勤務開始)前の準備です。

GAOGAOの実例では、
5月下旬に作業開始→6月初旬にCOE申請完了→8月初旬にCOE取得→8月中旬にビザ取得→8月末に来日という、約3ヶ月のスケジュールでした。


ステップ①:在留資格(在留資格認定証明書・ビザ)手続き

海外人材の受け入れにおける最初の、そして最も重要なステップが、在留資格認定証明書(COE)とビザ(査証)の手続きです。

在留資格認定証明書(COE)とは「日本に住んでいい」という日本での在留活動を認める証明書です。一方、ビザ(査証)は「入国していい」という在外公館の入国許可です。
重要なのは、まず在留資格認定証明書(COE)を取得しなければビザの申請ができないという点です。 つまり、在留資格認定証明書(COE)取得→ビザ取得という順序で進める必要があり、この2点が揃って初めて来日が可能となります。

1. 在留資格認定証明書(COE)の申請

バックオフィス担当者または行政書士が、地方出入国在留管理局(以下、入管)に必要書類を提出します。行政書士の方の経験上では一般的に在留資格認定証明書(COE)は2〜3ヶ月程度で承認されることが多いとのことですが、実際の審査期間は読めないため、余裕を持ったスケジュールを組むことを推奨します。

<GAOGAOの実例>
当初は「3ヶ月程かかるかも」と行政書士から言われていました。入管は混雑状況に地域差があり、東京入管は特に混んでいるとのこと。今回申請した神戸入管はそこまで混んでいなかったので、想定より早く約2ヶ月で承認が下りました。ただし、『急に下りた』という印象だったので、やはりスケジュールには余裕を持つべきです。

2. 在留資格認定証明書(COE)申請の専門家(行政書士)への依頼

在留資格認定証明書(COE)申請は、専門家である行政書士への依頼を推奨します。
必要書類の準備、入国管理局への提出、その後のフォローアップと複雑なプロセスが続くため、初めての受け入れでは、特に専門家に依頼することで手続きの抜け漏れを防ぎ、スムーズに進めることができます。
相場は1人あたり10万円程度で、事務所の規模による価格差はほとんどありません。

<GAOGAOの実例>
今回は普段からお世話になっている知人の行政書士にお願いしました。
決め手となったのは「英語での直接コミュニケーション」です。 行政書士によっては、GAOGAO側が仲介役となり、候補者とのやり取りを翻訳・中継する必要があるケースもあります。
しかし今回依頼した行政書士の方は、Slack(ビジネスチャットツール)のチャンネルに直接参加し、受け入れメンバーと英語のテキストで直接コミュニケーションを取ってくださいました。細かいQ&Aも直接やり取りしてくださったため、GAOGAO側の負担が大幅に軽減され、候補者の安心感も高まりました。

3. 必要書類の整理

パスポート、履歴書、卒業証明書など、何が必要か、依頼した行政書士と連携して整理します。
健康診断は今回のケース(技術・人文知識・国際業務ビザ)では不要でしたが、技能実習生などビザの種類や国によって異なるため確認が必要です。

4. 労働条件等の英訳・説明

契約書、就業規則等は英語で提示します。特に給与の額面、税金、手取りについては、仕送りを意識している海外メンバーも少なくないため、丁寧な説明が必須です。

<GAOGAOの実例>
契約書や就業規則の英訳には、ChatGPTを活用しました。専門的な法務文書も、AIを使うことで迅速かつ正確に英訳でき、コストも大幅に削減できます。ただし、AIによる英訳は必ず人の目でチェックし、特に給与体系や福利厚生などの重要な部分は、候補者が誤解しないよう丁寧に確認しました。

5. 査証(ビザ)の手続き

在留資格認定証明書(COE)が下りた後、現地の日本大使館・領事館でビザを申請・取得します。通常10日程度で取得が可能です。
在留資格認定証明書(COE)取得からビザ取得、そして渡航準備まではあっという間に進み、約1ヶ月程度のスピード感でした。

💡ポイント: 行政書士の選び方とコミュニケーション

  • 英語対応の有無がカギ: 行政書士が英語でのテキストコミュニケーション(Slack等)に対応可能だと、会社を介さずに本人と直接やり取りできるため、コミュニケーションの手間が大幅に削減され、候補者の安心感にもつながります。

  • 相場はほぼ一律: 行政書士への依頼費用は、規模の大きな事務所でも個人事務所でも10万円/人程度でほとんど変わらない印象です。むしろサービス範囲やコミュニケーションスタイルが選定のポイントになります。


ステップ②:住居と生活基盤の準備

在留資格認定証明書(COE)のめどが立ったら、来日後の生活基盤を準備します。特に住居の確保と入国直後の生活サポートは定着率に直結します。

1. 住居(社宅 / 法人契約 / 性別的 / 文化的配慮)の確保

来日前にできること(法人契約)と来日後に必要なこと(契約書類の最終確認、家具の配置)を整理。宗教や性別への配慮(特に寮やシェアハウスの場合)が必要です。

<GAOGAOの実例>
今回は尼崎に新しくオープンしたシェアハウス型オフィス(7部屋構成)へ入居しました。当初は小さめの部屋(リビングと同じフロア)を想定していましたが、女性という点を考慮し部屋割りを変更しました。

具体的には:
・上階のやや大きめの部屋に変更(家賃は若干上がるが、プライバシーを優先)
・女性と男性でフロアを分離
・部屋の前に衝立を設置し、「女性エリア」として明確に区分
・シャワールームやトイレが共用スペースにならないよう配慮

この部屋割り変更は、GAOGAOバックオフィスの女性メンバーからの細かいアドバイスがあったからこそ実現しました。 「女性ならではの必要なもの」「文化的背景を考慮した配置」など、男性だけでは気づかない視点が非常に重要でした。

尼崎オフィスについて詳細はこちら

2. 生活必需品の仕分け

本人に持ってきてもらう荷物、こちらで用意する荷物(家電、最低限の生活用品)を伝達します。

<GAOGAOの実例>
大きな家具・家電は会社側で事前に準備し、来日翌日に尼崎オフィスの日本人メンバーが同行して家電量販店へ買い出しに行きました。
「これは持ってきて」「これは現地調達」「これは最終的にコンビニで買える」と細かく仕分けを行いました。

3. 銀行口座開設サポート

在留カード(入国時に空港で交付される写真付き身分証明書)がないと口座開設ができないため、来日直後(在留カード交付後)のサポートも必須です。店舗での手続きは印鑑が必要な場合があるため、オンラインで完結できる銀行を選定します。

<GAOGAOの実例>
オンライン完結型のネット銀行と、実店舗もある大手都市銀行を比較検討し、最終的に大手都市銀行を選択しました。
理由は「英語サポートがあること」「オンラインで手続き完結できること」「万が一の際に店舗でサポートを受けられること」など、英語対応と利便性のバランスが取れていたためです。

4. 携帯電話・SIMカード契約

携帯電話番号がないと銀行のオンライン申し込みができないなど、行政手続きで「鶏と卵」問題が発生しがちです。SIMカード契約も複雑なため、日本人メンバーの付き添いが必須です。

<GAOGAOの実例>
ahamo、LINEMO、楽天モバイルなど、英語サポートがある格安プランをいくつか候補として提示し、本人たちにそれぞれの好みで選んでもらいました。
最大の難関は、銀行口座開設には携帯番号が必要だが、SIMカード契約には銀行口座が必要という「鶏と卵」問題でした。この問題への対応は金融機関や窓口によって異なる場合があるため、事前に複数の方法を確認しておくことをおすすめします。GAOGAOのケースでは、先に銀行口座を開設してからSIM契約に進むという順序で対応できました。
しかし、SIMカード申請で新たな壁が立ちはだかります。オンラインの申請フォームで、在留カードの名前が長すぎて入力欄に収まらず、何度も拒否される事態が発生しました。エラーメッセージは日本語のみで、海外メンバー一人では解決が困難なトラップです。

解決方法:
尼崎オフィスの日本人メンバーがサポートし、携帯会社のFAQ(日本語)を確認。「氏名が入力欄に入りきらない場合」という項目を見つけ、そこに記載された手順(ミドルネームの省略方法など)に従って再申請したところ、無事に承認されました。
日本語のサポートページを読み解き、的確にフォローできたからこそ解決できた事例です。

💡ポイント: 銀行口座・SIMカードの「鶏と卵」問題

  • 付き添い必須の行政手続き: 海外メンバーが日本語で日本のアプリや手続きを進めるのは、実質的に不可能に近い障壁があります。役所、銀行、通信契約は必ず日本人メンバーが付き添うようにしましょう。

  • アプリの「英語対応」は形だけのことも: 説明文は英語になっていても、住所入力は日本語のみ、エラーメッセージは日本語のみ、という「実質的なハードル」が非常に高いケースがあります。

  • 在留カードが全ての身分証明: 在留カードとは、入国時に空港で交付される写真付き身分証明書です。免許証の代わりにこれ1点で各種手続きが可能ですが、名前の長さなど予期せぬトラブルに注意が必要です。


ステップ③:来日前後の受け入れ体制の整備

最後のステップは、入国直後(いわゆる水際)でのサポートと、初期定着に向けた体制構築です。

1. 航空券・渡航準備のサポート

本人に希望の日程を出してもらい、会社側で精算する形がスムーズです。査証取得から渡航までは案外あっという間で、およそ1か月程度です。

<GAOGAOの実例>
会社側で航空券を手配することも可能でしたが、荷物の量や重量制限などの細かい要件は本人が一番把握しているため、本人たちに希望の便を選んでもらい、後から費用を精算する形にしました。
この方が荷物の追加オプションなども含めて柔軟に対応でき、スムーズでした。

2. 入国後の行政手続き

入国日から2週間以内に、住民票の届け出(区役所・市役所)が必要です。

<GAOGAOの実例>
来日翌週の月曜日、尼崎オフィスの日本人メンバーが同行し出張所へ行きました。

3. 保険証・社会保険手続き

住民票をもとに、会社側で健康保険・年金の手続きを進めます。

<GAOGAOの実例>
住民票取得後、社労士経由で健康保険組合に情報連携し、社会保険・年金の手続きを実施しました。

4. 来日後のサポート体制

入国から勤務開始までは最低1か月の余裕を持たせます。受け入れ担当者が現地に付き添い、「わからない」をすぐサポートできる体制が重要です。

<GAOGAOの実例>
尼崎オフィス専用のSlackチャンネルを開設。日々の困りごと、手続きの進捗、Q&Aなどをリアルタイムで共有しています。
今回来日した2名の海外メンバーは、ほぼ日本語がわからない状態からのスタートだったため、日本語でのアプリ操作や手続きは実質的に不可能に近い状況でした。そのため、尼崎オフィスの日本人メンバーが総出でサポート。 銀行、SIM、買い出し、役所手続き、あらゆる場面で「外国人一人では乗り越えづらい壁」を一緒に乗り越えてくれました。

5. 文化・生活習慣の配慮

食文化(ハラール等)や生活習慣の配慮は、定着に直結します。受け入れメンバーを含め、マネジメント層から歓迎とサポートのメッセージを伝えることが大切です。


まとめ: 想定外のトラップに備える「現場サポート体制」の重要性

海外メンバーの受け入れは、確かに手間と時間がかかります。
しかし、「漏れのない準備」と「生活面の安心感」を提供することで、優秀な人材の定着につながります。

GAOGAOの受け入れから学んだ最大のポイントは、「想定外のトラップは必ず起こる」ということ。
たとえばSIMカードの名前問題や銀行と携帯の“鶏と卵”問題など、事前にどれだけ準備しても現場では新たな課題が次々と出てきます。だからこそ、現地で親身にサポートできるメンバーがいることが何よりも重要です。GAOGAOでは、尼崎オフィスの日本人メンバーが毎日付き添い、一つひとつの壁を一緒に乗り越えてくれました。

今回ご紹介した3つのステップと実務ポイントを参考に、ぜひ貴社の受け入れ体制構築にお役立てください。
GAOGAOでは、こうした受け入れノウハウを蓄積しながら、グローバルなエンジニアチームを構築しています。

海外エンジニアの受け入れを検討されている企業様やグローバルチーム構築に興味のある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

また、GAOGAOでは国籍を問わず、グローバルな環境で挑戦したいエンジニアを積極的に募集しています。
多様なバックグラウンドを持つメンバーと共に成長できる環境に興味がある方、海外メンバーと協働しながら技術力を高めたい方のご応募をお待ちしています。

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