作品の調書をとる[地味だけど基礎中の基礎]
学芸員の仕事として、地味だけど重要なこと、それが作品の調査をして調書を作成すること、です!
コツコツと収蔵品の調査を進めることで、
作品の状態を把握できる(早期発見して状態の悪化を未然に防ぐことができる)。
手を動かして調書をとることで作品の情報が頭に刻まれる。
展覧会のアイデアがひらめく。
収蔵品のデータベース作りにつながる。
調書によって情報が共有できる。
といったメリットがあります。
逆にきちんと調書をとっていないと
状態確認のために何度も作品を引っ張り出さなくてはいけなくなる。
自分の美術館の収蔵品なのに、どんな作品なのか頭に入らない。
いつまでたっても不正確な収蔵品データベースのままとなる。
という困ったことになってしまいます。
作品調書のポイント
では、調査の時にどんな点に注意しながら、どんな調書を取っているのか、具体的に説明しましょう。

調書のフォーマットに決まりはありません。私はこんな感じで、自由筆記できるスペースが大きいのが好みです。図も描きますし。
美術館によっては、かなりきっちり記入する項目を細分化してその枠を設け、作品の種類によって何通りもの調書を用意しているところもあります。
どんな作品の調書でも共通するポイント
簡易図をつける(図版コピーも可)。
付属物や収納箱の有無を記録する。
他の者が見ても理解できるようにする(記入した文字が判読できるのは当然のこととして、主観的な感想や評価は控える)。
調書を取ると同時に記録写真も撮影する。
調査者の名前と調査日を記入する。
その他気づいたことや留意点をメモする。取り扱い時に破損の恐れがある場合などは、その旨をわかりやすく書いておく。
判断に迷う時は無理に断定せず「か?」などと書く。
絵画(額装)の調書のポイント
表面だけでなく裏面の情報も記録する。
絵の部分だけでなく額の状態も記録する。
寸法は、額を含む総寸と絵の部分だけの本紙寸法の両方を記録する。額の厚みも記録しておく。
*表面
支持体(キャンバス、板など)の素材、技法(油彩、水彩など)を記録。
額にガラスやアクリルがはまっているかどうかを記録。
画家のサインの有無
制作年を特定できる情報がないか確認。
カビ、シミ、絵具のヒビ割れ、浮き上がりがあれば、その位置なども含めて記録する。
*裏面
裏蓋の有無や掛け金具の形状などを記録する。
ラベルやシールの有無。
支持体の裏面や木枠の状態を記録する。
画家の書き込みなどがないか確認。
絵画(軸装)の場合
支持体の素材(絹か紙か)、技法を記録。
風袋の有無、一文字や天地もわかるように図を書く。
表具の状態も記録する。
収納箱に箱書きがあればそれも記録する。
寸法は軸を入れた寸法も記録。余裕があれば表具の各部の寸法も。
画家の落款印章の有無(判読できたらそれも記入)
制作年を特定できる情報がないか確認。
カビ、シミ、絵具のヒビ割れ、浮き上がり、紙の横折れなどがあれば、その位置なども含めて記録する。
工芸品や立体作品の場合
素材、技法を記録。
幅、奥行き、高さを記録(幅〇〇cmなどと書いて、数字の混同を防ぐ)。
カビ、シミ、割れ、反り、変形などがあれば、その位置なども含めて記録する。
作者の銘などの有無。
以上が、調書を取る際の注意点です。
業務に追われてなかなか時間が取れないのですが、学芸員は時々収蔵庫にこもって、一点一点作品の調書をこうやって取っているのです。
そしてその調書は自分のものではなく、作品に付属する資料として館全体で共有されるのです。
余談ですが、私は就職当初そこらへんの認識がなく、調書に自分なりの作品評とか書き込んで悦に入っていました。上司に「そーゆーのいらないから」と叱られたおもひで。
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