第152回 画像生成AIを申請書に使うべきである―「伝わる申請書」を作るための新しい選択肢―
生成AIというと、多くの人はChatGPTのような文章生成AIを思い浮かべるでしょう。
しかし近年は、画像生成AIも急速に進歩しています。
「申請書にAIで作ったイラストを入れるのはどうなのか」
「審査員に悪い印象を与えないか」
このような不安を持つ研究者も少なくありません。
私は、画像生成AIは積極的に申請書へ活用すべきだと考えています。
もちろん、研究データを改変したり、存在しない実験結果を画像化したりすることは論外です。
しかし、研究の概念図や研究フロー、将来像を説明するためのイラストであれば、画像生成AIは非常に有効なツールになります。
本稿では、その理由について考えてみます。
審査員は短時間で大量の申請書を読む
科研費をはじめ、多くの競争的研究費では、審査員は限られた時間で多数の申請書を読みます。
そのような状況では、
「文章だけで理解できる」
ことも重要ですが、
「一目で内容が伝わる」
ことはさらに重要です。
例えば、
実験の流れ
研究対象間のつながり
社会実装までのプロセス
これらを文章だけで説明すると、どうしても理解に時間がかかります。
一方、概念図が一枚あるだけで、数百文字分の情報を一瞬で伝えられることもあります。
イラストが苦手な研究者は多い
研究者は研究の専門家です。
一方で、
デザイン
イラスト制作
図解作成
の専門家ではありません。
PowerPointで図形を組み合わせても、
「何となく見づらい」
「古いデザインになる」
という経験は誰もがあるでしょう。
画像生成AIを使えば、例えば
「創薬プロセス」
「AI・IoT・ドローン・GPSが連携するスマート農業」
「細胞内での各種イベント」
「研究成果が社会実装される流れ」
なども短時間で視覚化できます。
従来なら数時間かかっていた図の作成が、数分で終わることも珍しくありません。画像生成AIは、研究者がデザインの専門知識を持たなくても、伝わりやすいビジュアルを作成する助けになります。
この点、文章生成AIは、研究計画書ではまだ不自然な表現が見られることが多々あります。一方、画像生成AIは、適切に活用すれば、短時間で完成度の高いイラストを作成できる点が大きな強みです。
「伝わること」が最も重要
申請書は芸術作品ではありません。
目的は採択されることです。
そのためには、
「読みやすい」
「理解しやすい」
「印象に残る」
ことが重要になります。
研究内容が優れていても、
理解されなければ評価されません。
一方で、概念図やイラストが適切に配置されていれば、
審査員は研究全体を短時間で把握できます。
これは決して見た目だけを良くするという話ではありません。
情報伝達を効率化するための工夫です。
AIが描いたことは問題なのか
「AIが作った画像を使うのは手抜きではないか」
という意見もあるかもしれません。
しかし、それは少し違うように思います。
重要なのは、
誰が描いたかではなく、その図が研究内容を正確に表現しているかです。
AIが生成した画像をそのまま使うのではなく、
研究者自身が内容を確認し、必要に応じて修正する。この姿勢が大切だと思います。
ただし注意点もある
もちろん、画像生成AIにも課題があります。
例えば、
内容が研究内容と一致しているか
科学的に誤った表現になっていないか
不自然な人物や機器が描かれていないか
著作権や利用規約を確認しているか
などは必ず確認する必要があります。
生成された画像は、あくまでも「下書き」や「素材」と考え、最終的な責任は研究者自身が負うべきです。また、生成AIでは指示の与え方によって品質が大きく変わるため、出力結果を十分に確認・修正することが重要とされています。
私自身は、申請書本文を文章生成AIに任せることには慎重な立場です(第99回 AIが作る申請書には、ある共通した違和感がある|橋口 拓勇)。一方で、研究者自身が考えた内容を視覚的に伝えるための画像生成AIは、積極的に活用すべきだと考えています。
おわりに
生成AIは文章だけの時代ではなくなりました。
今後は、
「文章を書くAI」
だけでなく、
「図を作るAI」
も研究活動の標準的なツールになっていくでしょう。
申請書は、自分の研究の価値を限られた時間で伝えるためのプレゼンテーションでもあります。
その目的を達成するために画像生成AIを活用することは、決して不誠実な行為ではありません。
むしろ、研究内容をより正確に、より分かりやすく伝えるための工夫と言えるでしょう。
これからの研究者には、「AIを使うかどうか」を議論するのではなく、「AIをどう使えば研究の価値を正しく伝えられるか」という視点が求められる時代になっているのではないでしょうか。
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